巻頭特集・企画
2016年9月30日更新
[特別企画]移民関係者を取り巻く相続問題 起こり得るケースと対応
移民関係者が絡む相続問題にはどんなケースがあり、「沖縄系移民関連相続問題連絡会」としてはどんな対応をするのか。同連絡会の発起人代表で、相続専門コンサルタントの亀島淳一氏が問題の例を挙げて解説。連絡先が定かでない、言葉が通じなくても、「専門家のネットワークを使って調査したり、必要書類を現地の言葉に訳して対応します」と説明する。
消息不明でも打つ手あり
ケース①
財産分割したいが連絡先も言葉も分からない。
亡くなったAさんは沖縄在住のウチナーンチュ。妻はすでに他界している。相続人は長男と次男Bさんの2人。次男Bさんは沖縄で暮らしているため、親せきなどからもBさんが相続手続きや財産の管理をするように言われている。
もう1人の相続人の長男はブラジルに移民。すでに他界しているので相続権はその子どもに引き継がれる。だが、長男の息子も他界しており孫にあたるCさんが相続権を引き継いだ。
BさんはCさんの合意を得て相続財産を分割したいと思っているが、Cさんと連絡を取ったことがない。手続きをしようにも、どうしたらいいのか分からない。
主な問題点
・Cさんの連絡先が定かでない。
・CさんもCさんの母も日本語が分からず、日本の相続についての知識がない。
・次男BさんはCさんに何をどうお願いすべきか分からない。
相続までの流れ
1.戸籍調査をし相続人を確定する
2.Cさんの所在の調査
3.相続税の計算と分け方を検討
4.Cさんへ次男Bさんの意思を伝達する
(必要事項、書類をポルトガル語へ翻訳して送る)
5.Cさんに、ブラジルで遺産分割協議書へサインしてもらい、
サイン証明を取得してもらう(印鑑証明の代わり)
6.Cさんへ相続する(不動産の売却や海外送金が必要になる場合もある)
連絡会の対応
1は海外在住者がらみの相続案件に強い司法書士に依頼。
2は現地の大使館・領事館や県人会、専門家ネットワークや日系メディア等を駆使して調査する。
3は相続に強い税理士と財産分析に強い相続専門コンサルタントが対応する。
4.5、6も司法書士、税理士、相続専門コンサルタントなどの専門家がチームで取り組んでいく方がスムーズ。
現地の言葉で意思伝達
ケース②
相続権はないが土地の管理をしている。この負担を子どもたちへは背負わせたくない!
メキシコに移民したXさんが相続した不動産は沖縄にある。Xさんはメキシコに住んでいるため、管理は沖縄にいる親戚のZさんにお願いしている。
Xさんが亡くなり、この不動産はメキシコで生まれた娘のYさんが相続した。この先はYさんの子どもたちに引き継がれていくことになる。
Zさんは会ったこともない遠い親戚の財産を管理し続けてきたが、この難儀を子や孫にまでさせたくないと考えてる。
この先、この財産をどうすべきなのかメキシコ側でも沖縄でも頭を抱えているところ。
主な問題点
・Yさんは日本語が分からない。
・Yさんは自分が相続した不動産のことや、沖縄で管理するZさんのことをよく知らない。
・Zさんはよく知らない親戚の土地を管理する立場を、子や孫にまで引き継ぎたくない。
・この財産をどうしていくべきか、関わる人皆が決めかねている。
相続までの流れ
1.戸籍調査をし相続人を確定する
2.Yさんの所在を調査
3.相続税の計算と不動産の処理方法の検討
4.Yさんへ、Zさんの意思を伝達する
(必要事項、書類をスペイン語へ翻訳して送る)
5.Yさんにメキシコで遺産分割協議書へのサインとサイン証明を取得してもらう(印鑑証明の代わり)
6.Yさんへ相続するメキシコ
連絡会の対応
1~6は、4ページのケース①とほぼ同様。
※Zさんは管理を手放したがっているので、一度Yさんに土地を相続してもらった上で売却して現金化する。最終的にYさんには現金を手にしてもらうというのがスムーズ。Zさんが有償でなら管理を続けても良いという場合は民事信託などの方法もある。
「相続人の消息が不明、存在が判明しない」
ケースでも対応可能。ケースに応じて、日本の家庭裁判所へ相続人に代わって手続きを進めることができる「不在者財産管理人選任(※)」の申し立てをする相続問題の解決へ動き出しても、戸籍の不備などから相続人の存在が判明しない場合や、一部は判明しているが全員を把握できない場合、存在は判明しているが消息がつかめない場合などの事案も多い。相続に向けて動きたくても、動けない。素人にはお手上げ状態に見えるが、専門家はまだ手はあると話す。
司法書士の上原修さんは、「事案に応じて日本の家庭裁判所へ『不在者財産管理人選任』の申し立てをして、財産管理人が相続人に代わって相続の手続きを進めることもある」と説明する(表参照)。
放置すればするほど、連絡が取りづらくなり、解決が難しくなる。一筋縄ではいかないからこそ、プロに相談するのが得策だ。
※相続人がいるかどうか判明しない場合や、相続人全員が相続放棄をしたときには、家庭裁判所に不在者財産管理人の申し立をてを行うこともある。
「世界のウチナーンチュ大会」機に移民関連の相続問題を相談しよう!
沖縄系移民関連相続問題連絡会では、世界のウチナーンチュ大会に合わせて相続問題の解決をサポートするさまざまな活動を予定している。大会を機に来沖している家族や親族と一緒に相談してみてはいかがだろう。無料相続相談ブースat沖縄セルラーパーク
(世界のウチナーンチュ大会メーン会場)
日 時
10月27日(木)正午~午後9時、
28日(金)~30日(日)午前10時~午後9時
場 所
沖縄セルラーパーク那覇内(沖縄県那覇市奥武山町42の1)
内 容
大会期間中、メーン会場である沖縄セルラーパーク那覇内に相談ブースを設置する。相談は無料、予約も不要。
一般(家族)会議 専門家派遣
日 時
世界のウチナーンチュ大会の期間中、またはその前後1週間程度
場 所
依頼先に伺う
内 容
大会で来沖している海外の家族・親族と一緒に、相続について話し合っておこう。その話し合いの場に専門家を派遣してアドバイスをする。
※要事前予約
沖縄系移民関連相続問題連絡会 第1回国際カンファレンス
日 時10月29日(土)午前10時~正午
懇親会は正午~午後2時
場 所
レンタルスペース・シナジールーム(沖縄県中城村南上原1021)
内 容
県内在住者側から考える相続問題の基調講演、沖縄側・海外側からの事例紹介、実態の把握と今後に向けた意見交換。
※要事前予約。参加費は無料。懇親会参加者は1500円。
<関連記事>
県系人絡む相続 プロが解決支援
<問い合わせ、申し込み先>
沖縄系移民関連相続問題連絡会((株)シナジープラス内)
電話=098-963-9266
平日午前9時~午後5時
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1604号・2016年9月30日紙面から掲載
※10月1日発行の「シニアウェーブ」でも、適切な相続計画について亀島淳一氏が解説します。