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2024年12月6日更新

[お住まい拝見]野里雅樹さん宅|開放的に景色楽しむ|(株)スリールデザイン

[3階リビングで職住一体]「住宅地でも海を望む景色を楽しみたい」と最上階にリビングを設けた、3階建ての自宅兼事務所を建てた野里雅樹さん(47)。建築士ならではの発想で将来まで見据え、コスト削減も試みた。

白を基調に、壁や床のタイル使いでモダンな印象の3階LDK。家電は隠してスッキリ。西面は遠くに望む海を楽しめるよう両サイドをガラス張りにし、開放感を高めた(矢嶋健吾撮影)


仕事も子育ても充実

野里雅樹さん宅
 RC造/自由設計/家族4人 

野里さん宅が建つのは、大通りに面していながら、遠くに西海岸が見える土地。1階に玄関と駐車場、2階に事務所とプライベート空間、3階にLDKがある3階建て。施主で建築士の野里雅樹さんは「以前住んでいたのが海まで徒歩1分の場所。景色としてでも海を取り込みたくて、視界が抜ける3階にリビングを設けました」と話す。

海を望む西面をガラス張りにしたLDKは、白が基調のモダンな空間。リビング南側のテラスまでオープンにつながり、パノラマビューが楽しめる。「夕景がすごくきれい。日の入りの角度で季節の変化を感じます。床をタイル張りにしたので掃除も楽です」。

夫婦ともに建築士。設計の中心を担った美幸さんは「家事と生活の快適さを考え、回遊できる間取りにしました」と話す。3階東側にまとめた水回りは、キッチンからもリビングからも行き来しやすく、中庭の緑に癒やされる。2階は、子ども室から書斎、寝室、ファミリークローゼットまでぐるりと回れ、家族の気配を感じながら過ごせる。


LDKとオープンにつながる3階テラス。大パノラマで美しい夕景を堪能できる(写真は建築士提供)


3階のキッチンからリビング、テラスを見る。セラミック天板のキッチンは、ダイニングテーブルと一体化させたフルオーダーキッチン。壁面収納を生かして冷蔵庫も目隠し。その背後にある洗面や浴室にキッチンからぐるりと回れる


将来は二世帯も視野
子どもの小学校入学を前に、住んでいた読谷村内で土地探しを始めた。美幸さんの両親が祖父母の家に移り住んだのを機に、築50年の実家を建て替えることに。「学校が目の前なので、子どもたちは毎日のように友達を連れてきて楽しそう」と美幸さん。

2階の一角に設けた事務所スペースは将来、二世帯住宅としての活用を見据え、自宅玄関と出入り口を分けた。3階のキッチンは、天板とテーブルを一体化したフルオーダー。「いずれはキッチンでパン作りやおもてなし教室をしている施主さんを講師に、ワークショップも開けたら」と美幸さん。建材の使い勝手や暮らしの楽しみ方を伝え、交流できる場を目指す。


3階の浴室。吹き抜けの中庭から入る光と風のおかげで、明るく開放的。グリーンと空に癒やされる
 

ここがポイント
目隠し壁を多機能に


2階の子ども室。現在はワンルームとして使っているが、将来2部屋に仕切って使えるように窓やエアコン、照明を配置している。引き戸を閉めれば個室になる


野里さん宅は、東側を交通量の多い大通りに、南側を側道に接する角地に建つ。大通りを挟んだ向かいには小学校があり、道路からの視線や騒音、ホコリへの備えが重要だった。そのため、東側と南側に目隠しと緩衝材を兼ねた壁を設け、中庭や吹き抜けから風と光を取り込む造りを採用。「外壁と窓との間を1.2メートルと広く取ることで圧迫感を緩和。この空間を活用して、1階駐車場から、2階の事務所出入り口へ向かう外階段や、植栽スペースを設けました」と雅樹さん。公私の分離にも重要なスペースになっている。

眺望を重視した3階西側のLDKは、遮るものなく景色を楽しみ、家族で会話が楽しめるように工夫した。ポイントは床の高さ。リビングの床面が隣家の屋上とフラットになるよう廊下や水回りと2段階で段差をつけた。キッチンの床はリビングより10センチほど低い。これにより「キッチンに立っていても、ダイニングチェアやソファに腰掛けている家族と視線が合いやすくなり、会話がしやすい」と美幸さん。

建築費が高騰する中、コスト圧縮も意識。壁はコンクリート打ち放しを基本にし、LDKのみタイルで上質感をプラス。プライベート空間である2階の床は、タイル調のビニール床を土間に直貼りした。「思いのほか見た目も足触りもいい。予算のかけどころを決め、分離発注を活用することでコストダウンできる」と提案する。


2階の寝室。壁付けのコンセント付きヘッドボードで、ホテルライクな雰囲気


2階の書斎。子ども室と寝室の間にあり、コンパクトながら機能的


大容量のウオークインクローゼット。寝室、子ども室へ抜けられる


吹き抜けになった1階の玄関。玄関ドア(写真右側)の脇に設けたベンチは、靴の脱ぎ履きや荷物の一時置きに重宝。階段下も見せる収納として活用する


東側からの外観(建築士提供)


[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
敷地面積:177.80平方メートル(約53.78坪)
1階床面積:17.39平方メートル(約5.26坪)
2階床面積:104.42平方メートル(約31.59坪) 
3階床面積:77.79平方メートル(約23.53坪)
建ぺい率:142.24%(許容80%)
容積率:355.60%(許容200%)
用途地域:近隣商業地域
躯体構造:鉄筋コンクリート造ラーメン構造
設  計:(株)スリールデザイン
     野里雅樹、野里美幸
構  造:与儀建築工房
施  工:(株)エムズ
電  気:一光エンジニア
水  道:(有)エコ電水
キッチン:(株)クチーナ沖縄
植  栽:(株)プランタドール
その他7社による分離発注

問い合わせ
(株)スリールデザイン
電話=098・975・8924
https://www.souriredesign.net


撮影/矢嶋健吾 文/比嘉千賀子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2031号・2024年12月6日紙面から掲載

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週刊タイムス住宅新聞編集部

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