お住まい拝見
2023年3月24日更新
間口は最小4メートル! 3方を道路に囲まれた変形地でも開放的に暮らせる家|スリースターズ(株)[お住まい拝見]
[20帖のLDK+屋上も活用]
40代のAさん宅は2本の道路に挟まれた細長い敷地に立つ。約20帖の開放的なLDKを中心に、屋上も活用することで、家族が集って楽しめる造りになっている。
3方道路も視線感じず
Aさん宅
RC造/自由設計/家族4人
2本の道路に挟まれた、幅4メートルほどの壁。一見すると何か分からないが、横から見ると全貌が明らかになる。細長い敷地に沿った形状のAさん宅だ。1階は貸店舗、2階が住居となっている。
夫人が「一番好きな空間なんです」という玄関は2階の西側。高窓からの光を感じつつ1歩中に入ると、東端にある主寝室まで一直線に視線が抜け、途中にある約20帖のLDKにも奥行きを感じる。Aさんは「幅の狭い敷地だということを忘れるくらい開放的。住居が2階で窓も上の方にあるので、外からの視線も全く気になりません」と話す。
また「個室を小さめにしたことで、自然とリビングに家族が集まります」とAさん。中でも決まって集まるのが、一家が「ムービーデー」としている金曜日の夜。夫人は「コーラとお菓子を解禁して、リビングのソファに4人並んで映画鑑賞。テレビの上の間接照明だけをつけると雰囲気が一層よくなるんです」と家族だんらんを楽しんでいる。
玄関ホールから見たLDK。奥の主寝室まで見通せる。左側には個室や水回り、ウオークインクローゼットなどがあり、LDKから直接行き来できるようになっている
北側から見た外観。2階右手の室外機置き場は、バルコニーのようにすることで、道路から見たときの印象をスタイリッシュにした
玄関。高窓からの光の線が印象的。夫人は「居室や収納に周りを囲まれているけれど、高窓のおかげで一番明るい」とお気に入りだ
屋上で受験勉強
10年以上、家造りのための土地を探していた夫妻。見学会を巡る中で出会った建築会社の担当者に、土地を見つけては相談していた。夫妻は「知識が豊富で人柄もよかった。建てるならこの人に依頼すると決めていました」。
その後「変形地で土地の価格も手頃だった」という今回の土地に遭遇。相談していた担当者が独立したため、そこを訪れ、家造りを依頼した。
大通りに面していたことから、1階は貸店舗にし、賃料をローンの返済に充てることにした。そのため庭はないが、代わりに屋上を有効活用。次女が友達と遊んだり、長女が夜にランニング、「気分を変えるために」と受験勉強をすることもあったという。
Aさんは「車など危険もないので安心。いろいろな場所の花火も見えるし、寝転んで星空観察をすることもあります」。夏にはバーベキューやキャンプも予定している。夫人は「小さな土地なので、こんなに楽しめるおうちになると思わなかった」と満足そうに笑顔を見せた。
リビング・ダイニング。テレビの配線は壁の中を通しているためスッキリした印象。天井の照明はスピーカーにもなっており「音が降ってくるようで臨場感がある」と夫人
浴室から見た脱衣室とウオークインクローゼット。夫人は「洗濯から乾燥、片付けまでの動線が短くてラク」。Aさんは「脱衣室が独立しているので、娘たちがお風呂に入っていても気兼ねなくウオークインクローゼットや洗面台を使える」と話す
キッチン。夫人は「広いので娘たちと3人並んで作業してもお互いに邪魔にならない。手伝ってくれるようになったし、料理も教えられるのでうれしい」と笑顔を見せる
主寝室。外の物干し場の塀は約1・6メートルと高いため、外からの視線が入りにくい。「窓を開け放していても気にならない」と夫人
広々した屋上。中央にある窓は玄関のハイサイドライト
ここがポイント
建ぺい率緩和で部屋広く
Aさん宅の敷地は東西に長細い変形地。夫妻は「土地を最大限に生かした広さにしてほしい」と要望した。そこで、何度も相談を受けていたスリースターズ代表取締役の中江源太さんと、設計を手掛けた宮里歩さんは「法律の制限がある中、いろいろな緩和制度を利用して建築面積を広げた」と話す。
まず、敷地に対してどれくらいの面積を建物に使えるかを示す許容建ぺい率を確認。すると60%までだったが、今回の敷地が角地にあるなど条件を満たしていたため、建ぺい率を10%緩和できることが判明。その上で「部屋の広さをセンチ単位で調整するなど何度も計算を繰り返し、許容建ぺい率が70%のところ69・88%とギリギリまで大きくした」と宮里さん。道路斜線の緩和も利用し、高さも気にせず建てられたという。
室内では、どの部屋もLDKから直接行き来できるようにすることで、「できるだけ廊下を省き、その分LDKを広くした」。動線も玄関から寝室までの一直線のみというシンプルな造りとなり、風の通り道にもなっている。
3方を囲む道路からの視線を遮るため、住居は2階に。随所に高窓を利用することで、外からの視線を遮りつつ光を取り入れられるようにした。
また、浴室の型板ガラスを除く全ての窓に熱線吸収ガラスを採用。中江さんは「赤外線を約60%吸収するため、室内への熱の侵入を抑えられる」と説明する。屋上や外壁には、反射率が高い白の遮熱塗料も塗り、暑さ対策を施した。
そのほか道路に挟まれていることを利用し、駐車場はどこからでも出入り可能に。将来、上下で世帯を分けることを見据え、貸店舗としている1階にも、生活するための配管などが準備されている。
[DATA]
家族構成: 夫婦、子ども2人
敷地面積:151.63平方メートル(約45.86坪)
1階床面積:47.76平方メートル(約14.44坪)
2階床面積:93.50平方メートル(約28.28坪)
建ぺい率:69.88%(許容70%)
容積率:117.70%(許容200%)
用途地域:第一種住居地域
躯体構造:鉄筋コンクリート造ラーメン構造
設計:スリースターズ(株) 宮里歩
構造、施工、電気、水道:スリースターズ(株)
◆問い合わせ
スリースターズ(株)
電話=098・988・4258
https://three-stars.co.jp/
撮影/座喜味正一郎(ポイント・ブランク) 文・出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1942号・2023年3月24日紙面から掲載
この記事のキュレーター
- スタッフ
- 出嶋佳祐
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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。