お住まい拝見
2021年12月24日更新
[沖縄・お住まい拝見]4層つなぐスキップフロア|建築設計工房paraya
[開放的&こもれる空間]
本部町瀬底島にある出水慶さん(37)宅は、スキップフロアで4層がつながる家。階段室から上下に視線が抜けるだけでなく、どの部屋からも海が見えて開放的。一方、床下にはこもれる空間もある。
「ものすごい」海の眺望
出水さん宅
RC造/自由設計/家族1人
本部港や瀬底大橋を望むコンクリート打ち放しの家。玄関に入ってすぐの階段が、趣味室、LDK、子ども室、寝室の4フロアを半階ずつつないでいく。出水さん宅は4層のスキップフロアで構成されているのだ。
メインとなるのはLDKフロア。壁や天井にもフローリング材が使われ、木のぬくもりを感じる空間だ。吹き抜けや海水の水槽などもあるが、それ以上に目を引くのが、大きな窓から見える海や対岸の本部半島。出水さんは「どこからでもこの景色が見えて、開放感がものすごいんです」
そんな出水さんが「1日の8割を過ごす」というのが趣味室。愛車を眺めて楽器演奏や筋トレもするが、今は東京のウェブ制作会社「idiom」の代表として、パソコン画面に向かって仕事しているのがほとんどだという。
そのため「ほっとできる空間」としてお気に入りなのが、海を眺められる浴室と、LDKの床下収納。「開放的な家なので、全てを遮断したい時には窓のない床下収納にこもる。読書やレコードを聴くのにぴったり」と話す。オンとオフを上手に切り替えられるようだ。
家は沖縄 会社は東京
観光で来て以来、沖縄に住みたいと思い続けていた出水さん。加速するオンライン化の波に乗り、自社の機能は東京に置いたまま、自宅兼沖縄オフィスを造ることに。
土地を購入した不動産業者に建築士を紹介してもらい、音楽、バイク、レトロ、アメリカンなど、多趣味な出水さんを寛容に受け入れる住まいが完成した。
家族や愛猫の移住はまだかなっていないが、子どもの学校が長期休暇の時にはここでみんなで過ごす。「恵まれた環境だし、空間が少しずつつながっているので家族の気配も伝わる。早く一緒に暮らしたいですね」と出水さん。サンタクロースとともに、家族もやってくるクリスマスを楽しみにしている。
LDK。瀬底大橋が奥に見える大きな窓は開閉できないフィックス窓なので、窓枠が景色を邪魔することがなく、室内外も一体的に感じる
床下収納の一角に設けられたこもれる空間。仕上げ材も貼られており、居心地も良い。「レトロ」をテーマにしたものがたくさん置かれている
外観。打ち放したコンクリートが青空によく映える
ここがポイント
積層で私的空間に 視線は抜けやすく
北から南へと下る、緩やかな坂道に面している出水さん宅。敷地はその坂道の南側と同じ高さだったため、敷地の北側は前面道路より少し低くなっていた。また、出水さんからは「広々した床下収納がほしい」との要望もあった。そこで建築設計工房parayaの島袋勝也さんは「北側の庭を高くして道路との高低差を解消するとともに、建物も北側を半階上げたスキップフロアにすることで床下収納も設けた」と話す。
その床下には、収納だけではなく、メンテナンススペースとしての役割も持たせた。「太陽光発電の蓄電池や配管など設備類を床下にまとめることで、普段過ごす部分はスッキリする」と説明する。
趣味室からLDK、子ども室、寝室まで、交互に重ねていくことでそれぞれにプライベート感は出しつつも、視線は抜けるように配慮。中央に設けた階段は踏み板だけにしているほか、LDKの吹き抜けに面した最上階の手すりは透明のガラスなので一番下の趣味室まで見えるようになっている。
階段室は通風を促す機能もあるる。最上部には窓が設けられており、開ければ、煙突のように暖まった空気が抜けていく。
部屋は「生活の中に、自然な感じで景色を取り込めるように」と、どれも海に向いて配置。「あまり窓を開閉しない」という出水さんのライフスタイルに合わせて、LDKや寝室はフィックス窓に。島袋さんは「窓枠によって邪魔されることなく、視界が広がる」。さらに台風対策として窓には全て強化ガラスを使用している。
車庫に隣接した趣味室。バンドに所属する出水さんの楽器や、トレーニング器材などのほか、仕事用のパソコンも置かれている
2階通路。リビングの吹き抜けに面して、子どもたちが勉強するための共用スペースがある
キッチン。引き出し部分にもフローリング材が使われ統一感がある。左奥のダイニングに面した部分には扉と窓を設け、料理中に猫が入らないようにしている
浴室。浴槽から海を眺められる。「お客さんが来たら一番見せたい場所」と出水さん
玄関。床にも壁にも、地元で取れた本部石灰岩が貼られている
屋上。夏にはプールを広げ、左奥の壁にスクリーンをかけてプロジェクターで映像を流すなどして、子どもたちとナイトプールごっこを楽しんだ
[DATA]
家族構成:本人
敷地面積:347平方メートル(約105坪)
1階床面積:101.25平方メートル(約30.6坪)
2階床面積:92.11平方メートル(約27.9坪)
PH階床面積:2.43平方メートル(約0.7坪)
建ぺい率:36.42%(許容60%)
容積率:48.02%(許容200%)
用途地域:未指定
躯体構造:鉄筋コンクリート造壁式構造
設計:建築設計工房paraya
島袋勝也、仲宗根篤
構造:(有)建築設計 庵 荷川取秀則
施工:具志頭工務店 古堅博幸
電気・水道:宮里電水 宮里裕一
◆問い合わせ
建築設計工房paraya
電話0980・56・2955
http://www.paraya-architect.com/
撮影/矢嶋健吾 取材/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1877号・2021年12月24日紙面から掲載
この記事のキュレーター
- スタッフ
- 出嶋佳祐
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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。