南国の風と緑間近に|濵元宏建築設計事務所|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

お住まい拝見

お住まい拝見

2016年7月22日更新

南国の風と緑間近に|濵元宏建築設計事務所

沖縄県本島南部、糸満市の区画整理地内にある五角形の角地に、3階建ての2世帯住宅を建てたHさん(52)。建物の周囲は植物に囲まれ、室内からも緑が間近。各階とも開口部から南風が吹き込む。

五角形の角地に2世帯住宅

Hさん宅 RC造/自由設計/家族6人
   

南東側から見た外観。道路や隣家(左手)との間に植栽スペースを設け、周囲ともつながる


孫との時間が楽しい!

伸びやかに育つ南国の植物が織り成す生垣に囲まれたHさん宅。3階建ての住宅は地形そのままの五角形で、特徴的な形が目を引く。

娘一家4人が暮らす1階は、白を基調にした爽やかな内装。広々としたリビングの掃き出し窓の外にはハイビスカスが揺れ、心地良い風が吹き込む。 対面式キッチンの裏には子ども室があり、腰高の仕切り戸を開け放てば、キッチンから子どもたちの様子が分かる。長女(30)は、「リビングと両方に目が届くから、どこで遊んでいても安心です」と喜ぶ。

2、3階はHさん夫妻の住まい。「孫ができてから、人が集まる機会が増えました」と夫人(52)。2階には集いを意識した約20畳のダイニングキッチン、3階には寝室と水回りがあり、どちらもゆったり広々。

ダイニングキッチンは、コンクリート打ち放しの壁に石調の床タイルを合わせて「石」の質感を楽しむ。室内の色や素材使いは夫人が決めた。
「タイル張りの床にあこがれて、家を建てるならこれと決めていました。掃除もしやすいです」
南と東、2面の大開口を開けるとテラスまで一体に。2歳の孫は、車のおもちゃに乗ってグルグル駆け回る。夜はテラスで一杯飲みながら食事をするのがHさんの楽しみ。
「孫たちも『外で食べるゴハンはおいしいね~』と喜んでくれる」と、目尻が下がりっぱなしだ。


植物でつながる

長年、団地住まいだったが、孫の誕生を機に、近くのアパートで暮らしていた長女一家との二世帯住宅を建てることに。
住み慣れた団地や、Hさんの職場に近い区画整理地内に土地を購入し、家づくりを進めた。

道路や隣地との間に塀は設けず、植栽で緩やかに仕切る。「窓の外に緑が間近で気持ちいい。近所に孫と同世代の子も多いので、生垣越しに声を掛けることも多いんですよ」。

住み始めて1年余り。孫娘(1)も加わり一層にぎやかに。植物が好きな夫人は、トケイソウやリュウキュウアサガオで緑のカーテンづくりに精を出す。「5年、10年とたって、植物が家になじんでいくのが楽しみ」と目を細めた。


石の部屋」と名付けた2階のダイニングキッチン。東(正面)と南(右側)の大開口を開け放つとテラスまで一体的に使える。高さを変えた木張りの天井は、梁を隠しながら遊び心を持たせた工夫だ


2階のトイレ脇にあるギャラリー。壁にはHさんが趣味で楽しむギターや三線を飾って収納。正面の棚には2ミリ厚のステンレス板を活用し、本やレコードを並べる


リゾートのスイートルームをイメージした3階の寝室。奥のベッドスペースは床高を上げ、天井も低くして眠気を誘いやすい環境を作った。内装は出窓の網戸の枠まで木製にし、統一感を持たせた


1階のLDK。白を基調に、テレビの裏壁だけエコカラットを貼ってアクセントに。緑も間近


1階の子ども室。中央の仕切り戸の奥はキッチンで、のぞけばすぐに様子が分かる


壁のモザイクタイルが華やかな印象を与える2階のトイレ。写真では分からないが、実は天井は鏡張りになっている。配管の関係で天井を低くせざるを得なかったことから、高さを演出するために鏡を利用した

 

ここがポイント
空間をムダなく活用

Hさん宅は、北と東が道路に接する角地にある。隅切り(直交する道路の曲がり角部分を円弧または直線で切り取ること)がされた47坪の変形地。地区協定で1メートルのセットバックが必要など制約も多かった。2世帯で暮らすという希望を踏まえ、建築士の濱元宏さんは敷地の形に沿った五角形の3階建てを提案した。「隅切りのある角地だったため、階高を抑えることで、道路斜線による高さ制限の範囲内で3階建てを実現できました」と濱元さん。

設計で重視したのは、いかに光と風を取り込みながら空間をムダなく活用し、狭さを感じさせないようにするかということ。

まずは外回り。道路、隣地との境界は駐車場の一角を除いて塀を設けていない。その分、建物を協定より多い1・3メートル後退させ、生まれたスペースに庭を作った。「塀の圧迫感がない分、各世帯から外を眺めても圧迫感がなく、室内が広く感じられます。庭を通じて隣家や地域とも交流が生まれやすい」と濱元さん。

室内は、家族のつながりを意識した造りに。子世帯が暮らす1階は、どこにいても家族の気配が分かるよう間仕切りは最小限にとどめた。床や窓の高さは幼い子どもの目線を基準に決め、庭の緑がより間近に感じられるように配慮した。
Hさん世帯は2、3階で公私の空間を分離。各階ともスペースをゆったり使ってリラックス感を演出した。デットスペースになる三角形の空間は、食品庫やクロゼット、吹き抜け、パイプスペースとして活用した。



[DATA]
家族構成:夫婦(親世帯)
夫婦、子ども2人(子世帯)
敷地面積:157.76㎡(約47坪)
1階床面積:69.2㎡(約21.14坪)
2階床面積:43.11㎡(約13.04坪)
3階床面積:51.71㎡(約15.64坪)
建ぺい率:45.67%(許容50%)
容積率:100%(許容100%)
用途地域:第一種低層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリート壁式構造(一部鉄骨)
設 計:濱元宏建築設計事務所
濱元宏
構 造:KKSエンジニア
施 工:㈱GAB
電 気:美光電設
設 備:ライフ工業

[設計・問い合わせ先]
濱元宏建築設計事務所
098・987・7331
http://gab-okinawa.com
写真/比嘉秀明撮影
編集/比嘉千賀子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1594号・2016年7月22日紙面から掲載
 

お住まい拝見

タグから記事を探す

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

これまでに書いた記事:2128

沖縄の住宅、建築、住まいのことを発信します。

TOPへ戻る