お住まい拝見
2021年10月8日更新
[沖縄・お住まい拝見]LDK広く個室は一つ|(株)福地組一級建築設計事務所
[8人家族 ロフトが子ども室]
6人きょうだいと夫婦がにぎやかに暮らす糸数昌宗さん(37)宅。「LDKをとことん広く」が希望で、和室まで一体となり天井高は4・1メートルある。一方で個室は一つだけ。ロフトが子ども室代わりだ。
家族も来客も楽しく
糸数さん宅
RC造/自由設計/家族8人
16歳から0歳まで女の子5人、男の子1人のきょうだいと夫婦が住む糸数邸。車や人通りの多い道路沿いに建つため、2階に住空間がまとまる。
住居の8割をスタイリッシュなLDKが占める。天井高は4・1メートルもある上、和室やロフトまで一体となる。等間隔に並ぶ高さ2・9メートルの大窓が、さらに広さを感じさせる。
残り2割が浴室、トイレ、収納庫。そして1室だけある個室。そこは家族全員の寝室だ。「皆が集まる空間をとにかく広く。個室はあまり必要性を感じなかった」と糸数さん。
子どもたちはダイニングで宿題をし、ロフトで遊び、ソファや和室でゴロゴロ。「そうしているうち、巣立ちの日はすぐ来るんじゃないかな」
実家兼、親が営む店があった土地を譲り受けた。あちこちの建築会社に相談する中で、「空間を広々と楽しく使う提案をしてくれた」会社に依頼した。
「にぎやかに過ごすのが好き」な一家。団地に住んでいるころから来客は多かった。人が来れば、小上がりの和室やロフトに上がる階段も腰掛けになる。
モノトーンでまとまったモダンなLDK。家具やソファもコーディネーターと一緒に選んだというだけあり、洗練された印象。そこに仲良し糸数家の笑い声があふれる
夫人が「とことん好みの色にした」というウオークインクローゼット。写真左側の寝室からクローゼットを通り、洗面脱衣所に行く
小上がりの和室。下部は収納になっている。あえてふすまは設けずにロールスクリーンで閉じる。そのスクリーンを糸数家ではユニークに使う。なんと「ゲームを投影して『糸数杯ゲーム大会』をしています=下写真」
収納はカラフルに
LDK以外はコンパクトなため、家事動線も短い。
特に洗濯動線は「無駄が一切無い」と夫人。家族全員の服をしまうウオークインクローゼットと脱衣所が隣り合う。その脱衣所には洗濯・乾燥機があり、室内干し場があり、洗濯物をたたむ作業台もある。
家事効率の良さも奏功し、すっきりと暮らしている。「物はパントリーやクローゼットにしまって、表に出さないようにしています」
それら収納庫を「ワクワクする空間」にしているのもミソ。カラフルなクロスを用いた空間は、ショップのような雰囲気。夫人は「家に来た友人には『あなた好みの色だね!』って言われます」と笑う。
表も裏も楽しく演出。笑顔の絶えない糸数家らしい住まいだった。
スタイリッシュな外観。車や人通りの多い国道58号沿いにあるため、下は店舗として貸し、上に住居を設けた。糸数邸の入り口は右端(写真提供/福地組・2021年1月撮影)
外観写真右端の入り口から入ると、重厚な雰囲気のアプローチと玄関がある
1階にあるのは広々とした玄関のみ
洗面脱衣所には物干し棒や、洗濯物をたたむ作業スペースが設けられている
パントリー(上)やトイレ(下)などは派手な柄のクロスを用いて、夫人好みのポップな印象にした
2階に入ると、高さ2・9メートルの窓の連なりが目に飛び込んでくる。外への抜けと、縦ラインで縦横への広がりを感じさせる
ここがポイント
大空間をより広く「抜け」と「縦ライン」
LDK+和室は約54平方メートルと広々とした空間だが、さらに「人がたくさん集まっても広々と感じられるように考慮した」と設計した福地組一級建築設計事務所の仲宗根大雄さんは話す。
階段を上がりLDKに入ると、目前に縦長の窓が飛び込んでくる。これが外への広がりや、高さを感じさせる。その窓には縦型のブラインドを設置。「大きな1枚壁のように見せて広さを強調している」と福地組・コーディネーターの又吉桃柰さん。ブラインドの縦ラインも4・1メートルある天井高を印象づける。
さらに「和室、LDK、ロフトが一続きになっている上、ロフトの奥へ視線が抜けるため、床面積以上の広がりが感じられる」と仲宗根さん。
一方、窓が多い大空間は、外の熱が室内に侵入しやすい。それを解消するため「和室横のベランダからロフトへ向かって空気の流れをつくり、上部にたまる熱気を外に押し出す。シーリングファンで空気を循環させることでも上部と下部の温度差を緩和し、エアコンの効率が上がるよう配慮した」。
また、エアコンは室外機と距離が近い方が効率が上がる。「極力離れないよう外構計画をし、効率アップに努めた」
内装にも夫妻のこだわりを色濃く反映。夫はスタイリッシュ、夫人はポップが好みだったことから「ホテルのようなスタイリッシュさは外観やLDKに、色味が強いポップな雰囲気はプライベート空間に落とし込んだ。家族も来客も楽しめる家になるよう、設計でも内装でも配慮した」と又吉さんは話した。
[DATA]
家族構成:夫婦、子ども6人
敷地面積:138.41平方メートル(約41.87坪)
1階床面積:12.48平方メートル(約3.76坪)※住居部のみ
2階床面積:100.48平方メートル(約30.40坪)
ロフト床面積:18.87平方メートル(約5.71坪)
建ぺい率:73.88%(許容80%)
容積率:144.60%(許容200%)
用途地域:近隣商業地域
躯体構造:鉄筋コンクリート造 ラーメン構造
設計:(株)福地組一級建築設計事務所 仲宗根大雄
コーディネーター:(株)福地組・又吉桃奈
構造:田中秀知建築設計所
施工:(株)福地組
電気:(株)ミシマ・プラン
水道:(株)ふくエンジニアG
◆問い合わせ
(株)福地組
電話098・979・7300
https://www.fukuchigumi.co.jp/
撮影/泉公(ララフィルム) 取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1866号・2021年10月8日紙面から掲載
この記事のキュレーター
- スタッフ
- 東江菜穂
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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。