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2016年7月1日更新

沖縄の建築士の事務所を拝見「有限会社 空間計画 アーティザン」|建築士の日

快適な住環境を生み出すプロである建築士。それぞれの事務所や自ら設計した自邸には、建築で大事にしていること、家づくりや空間使いのヒントが詰まっている。事務所の工夫とアイデアの源を紹介する。

室内の心地よさ 答えは「外」に

津波光教さん/(有)空間計画 アーティザン

びっしり書類が詰まった棚と棚の間、床から高さ120センチの所に横長の窓が延びる。空間計画「アーティザン」(読谷村)の建築士・津波光教さん(47)の設計事務所の一角だ。「デスクワークをしながら、隣の広場の緑が見える高さなんです」と語る。



これより低いと広場を仕切るフェンスが見えてしまい味気ない。高いと座った位置から外が見えなくなる。

絶妙な計算の上で設置された窓。ここに津波さんの設計の考え方が詰まっている。

「当たり前ですが、設計において一番大切なのは室内の居心地。外から中を見たときではなく、中から外を見たときに一番良い状態にもっていく」と窓の外に目をやる。

効率良く光や風を室内に取り込みつつ、外の風景をどう切り取るか。設計時に最も頭を悩ませるところだ。



手が動かなくなったら「すぐ現場に行く」。建設予定地に立ち、どう光が差すのか、どう風が流れるのか、周りの環境を五感で感じて最善の配置を導いていく。

「机に座りっきりだと、頭でっかちの図面になってしまう。一般的に開口部は南に設けるのが良いと言われるが、東から良い風が吹く場所なら東に開けばいい」。現場が発想を和らげてくれる。

「行き詰まったら現場へ」。刑事のようだと話すと、照れ笑いを浮かべる。「現場の写真はたくさん撮るのですが、画像からはどうもイメージが湧きにくくて」と苦笑する。

現場に出てなお、プランがまとまらないときは自宅の庭に出る。草むしりをして「一度、頭を空っぽにしてから取り掛かる」。

「居心地の良い室内」のヒントは、外にあることが多いようだ。
務所の屋上は、自宅の庭になっている。この不思議な造りも居心地の良さを追求した結果だ。




奇想天外「子に刺激受け」

事務所は屋上の緑化が断熱につながり、自宅は盛り上がった庭が道路からの視線や音をしっかり遮ってくれる(写真)。

起伏のある庭は、小学校3年生になる息子の格好の遊び場だ。夏場は芝に水をかけてウォータースライダーにして楽しむ。「子どもって思いもよらぬ行動をする。それが僕の刺激にもなっている」。



庭の一番高くなっているところには最近、塀を設けた。安全面を考えてのことだが、「息子はこの塀に登って遊ぶんですよ。より危なくなったけど、危険を取り除くだけではダメなんだなって。遊びと安全性のすり合わせが大事なんですね」との父親目線も、設計に生かすようにしている。

自身が幼いころを過ごした家は、「正方形の箱のような家」。軒がほとんどなく、雨が降ったらあわてて家中の窓を閉めてまわった。「雨天時は、家に閉じ込められている感じが嫌だった。今、アマハジ(深い軒)や土間など半戸外空間を積極的に取り入れているのは、反動なのかな」。

現在の自宅にも、居間に面する形でアマハジと土間を設けた。深い軒が強い日差しを遮り、雨の浸入を防ぐ。「家の中は晴雨、昼夜問わず居心地良くあってほしいですから」。

幼い日の経験と、奇想天外な息子の行動も、津波さんの図面に生きている。



<写真キャプション>
・津波さんの設計事務所の設計室。左側に見える窓は、座った状態で外の緑が一番美しく見える位置を綿密に計算して設けた。「設計室では座っていることが多い。この姿勢でいかに気持ちよく仕事できるかを重視した」/写真
・設計室の天井は220センチと、通常の住宅の天井より20センチほど低い。津波さんいわく、「いろいろな考えがあると思いますが、僕は天井が低い方が守られている感じがして落ち着く。天井を低くした分、照明は横に設置して圧迫感を軽減しました」/写真
・津波さんの自邸。居間に面する形で深い軒と土間が設けられている。右側のこんもりした芝の下には事務所がある(2012年撮影)
・事務所の外観。屋上部分が自宅の庭になっている。左側の竹垣に覆われている部分が設計室で、右側の掃き出し窓がある部屋は打ち合わせ室/写真
・現在は、庭の一番南側に塀を設けた。よく庭で遊ぶ息子の安全面を考えて設置したが「息子はこの塀にすら上って遊ぶ」と話す/写真

編 集/東江菜穂
『週刊タイムス住宅新聞』建築士の日 第1591号・2016年7月1日掲載

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東江菜穂

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週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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