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2020年4月17日更新

全部が子ども部屋|陽設計

[お住まい拝見|「スキップフロアで平屋感覚]建築士・玉城(たましろ)飛雄馬(ひゅうま)さん(42)は、半階ずつ部屋を設けたスキップフロアで、平屋のような住まいと自身の設計事務所を構えた。家族6人に2LDKでも柔軟に使えるつくりにした。


玉城さん宅2階のダイニングキッチン。4人の子どもたちの勉強部屋でもある。キッチンは「手元や雑多な物が隠れるように」という夫人の希望で、高めのカウンターと扉付きの収納でスッキリした印象に。デッキテラスに最近取り付けたハンモックは、子どもたちの格好の遊び場になっている 

 

余白残し柔軟な住まい

玉城さん宅
 RC造/自由設計/家族6人 


デッキテラスからダイニングを見る。子どもたち4人の学校用具が入れられた棚の後ろにパントリーがある。写真右手の扉が家族の玄関



糸満市潮崎の整然とした住宅地にある玉城さん宅の敷地は約55坪。「平屋が一番生活しやすいつくり」と考えていた玉城さんは、そう広くない敷地でも階段の踊り場に部屋を設けたようなスキップフロアのつくりで、平屋感覚の住まいへ近づけた。「4階建てだと思っていたのに」と残念がる長男(小6)と次女(小1)が、楽しげに上下階から声を掛け合う。
1階は玉城さんの設計事務所。家族の玄関は西側の外階段を上った2階にあり、その先には高さ約3・7メートルの伸びやかなダイニングキッチンが広がる=平面図黄部。半階上がった先にリビングと子どもたちの寝室=平面図緑部、半階下がった先に浴室やドライエリア(洗濯室)、夫婦の主寝室がある=平面図青部。半階ずつの上がり下がりだから楽に動けるし、リビングとダイニングは天井が一続き。階段も蹴上げ板がなくて視線が抜けるから、空間が分断された感じもない。「キッチンから部屋全体が見渡せて、誰がどこにいるか分かって安心」と夫人(41)も満足そう。
 


パントリー側からキッチンをみる。正面の窓は光を取り込み、「いつも明るい」と夫人。造り付けの収納棚は扉が上下に開くタイプで、夫人は「ものが取り出しやすい」とお気に入りの様子

 

カーテンがない大窓
絵を描くのが好きという長女(中2)がダイニングでスケッチブックを広げると、長男、次男(小3)はリビングでゲームを楽しむ。ダイニングの一角には子どもたちの学校用具を入れる棚があり、「みんなダイニングで宿題するから、私も目が配りやすい。ここはいつもにぎやか」と夫人。リビングは少し落ち着いた雰囲気でゲームや映画、読書を楽しむ場になっているという。1室しかない子どもたちの寝室は、寝るためだけと言わんばかりに二つの2段ベッド以外の家具がない。「個室が最低限な分、部屋全部を子どもたちが使うことを中心にしたから、オープンな暮らしができている」と玉城さんは話す。
家族が集まるダイニングやリビングの窓を見ると、カーテンがないことに気付く。「窓の前に外壁があって、外からの視線を遮ってくれる。思っていたより、光も風も入ってきて気持ちいい。カーテンがないから、外へもさっと出られる」と夫人。ダイニングの掃き出し窓の先にあるデッキテラスは「住んでみて気付いたけれど、コの字形の壁が風を集めているようで、部屋の中に心地よく吹き込んでくる」と、玉城さんは驚きながらも満足げにほほ笑んだ。



ここがポイント
デメリットも工夫で解消

学校に近く、生活にも便利な場所で土地を探していたという玉城さん夫婦が見つけたのは、潮崎内の売り宅地で一番小さな敷地。建物の配置や高さなどの制限がある中、間取りや窓などを工夫し、デメリットを感じさせないつくりになっている。
敷地は2面が道路に接しているが、地区計画で建物を道路から1メートル後退しなければならなかった。「家をつくる時は事務所を一緒に構えることが前提にあった。広くない敷地だからスキップフロアにして、階層で部屋の用途や職住を分けた」と玉城さん。住居部分はコンパクトに空間がまとまり、家族が集まる2階ダイニングからは半上下階に目が行き届くメリットがある。ダイニングの真下にあって「地下にもぐるようなイメージ」の1階事務所は、住居部分からの視線も分断され、別玄関が設けられたことで、完全に職住が分離されている。
また、高い塀が設けられないという条件もあった。ダイニングの大きな掃き出し窓は、デッキテラスを挟んで外壁の内側に設け、「塀がなくても道を通る人や車からの視線を遮り、せっかくある大きな窓をカーテンで閉め切るもったいなさもない」。建物の4隅ある窓は、「風が室内を対角に抜け、光も取り込める」。
住居部分は、男女4人の子どもに対して部屋が1室の2LDKだが、「部屋数が少ない分、子どもが成長しても、使われなくなる部屋がない」という。「長女が個室を必要とした時や男女で分ける時には、夫婦の寝室を子ども部屋にしたらいい。僕らはリビングを寝室として使おうと話している」。ゲームや映画を楽しむリビングは、将来のための予備室としても考えられているようだ。


キッチン側からは住居全体にほぼ目が行き届く。蹴上げ板がない階段や透かし格子で人の動きが見えやすい。階段を上がって左がリビング。テレビ後ろは寝室があるゾーンになっていて、上は子どもたち、下は夫婦に分かれている。トイレは上下階にあって、「家族が多くても混雑しない」と玉城さん



ダイニングから半階上がったリビング。写真右手の。窓は外壁で囲われているが、風が下から上へ抜けるようになっている



1階事務所。写真左手の窓からは家族の玄関につながる階段が見え、「子どもたちが帰ってくるのが分かって安心」と玉城さん。仕事時は写真右手の階段前の引き戸を閉める



事務所出入り口側から見た外観。外壁で掃き出し窓を目隠しして、塀は設けていない。建物の角を切り取って設けた窓は、光と風を室内に取り込む(写真提供:陽設計)


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[DATA]
家族構成:夫婦+子ども4人
敷地面積:180平方メートル(約54.5坪)
1階床面積:78.02平方メートル(約23.6坪)
2階床面積:74.79平方メートル(約22.62坪)
建ぺい率:49.94%(許容60%)
容積率:84.9% (許容100%)
用途地域:第二種低層住居専用
躯体構造:鉄筋コンクリート造ラーメン構造
設計:陽設計 玉城飛雄馬
構造:(株)濱川構造設計
施工:(有)大繁建設
電気:神谷電設
水道:(株)剛設備社


[問い合わせ先]
陽設計
098-914-1212
www.hyuma.info


撮影/矢嶋健吾 取材/川本莉菜子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1789号・2020年4月17日紙面から掲載

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