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2024年5月10日更新

風も会話も心地よく|アトリエハコ[お住まい拝見]

[高低差生かした風抜ける平屋]
室内の暑さで困った過去の経験から、「風通しのいい平屋」を希望した大城伸悟さん(48)。ゆったりとしたリビングは風が抜け、集う家族との会話も弾む。

杉板で模様づけした打ち放しの壁がアクセントのリビング・ダイニング。窓や個室の扉を開け放つと風が通り、エアコン要らず。手前左手に見えるのは、ピアノ室


伝統×モダン

大城伸悟さん宅
 RC造/自由設計/家族4人 

細い路地が走る昔ながらの集落。「家を建てるなら沖縄の伝統を感じる、赤瓦か花ブロックを使いたかった」と夫人。玄関を目隠しする白い花ブロックの壁と杉板模様の打ち放し壁が、モダンなたたずまいを印象付ける。

家づくりで重視したのは風通しだ。家の中心にあるリビングダイニングは、家具を最小限にして広々。掃き出し窓の先には軒の深いウッドデッキがあり、アタイグヮー(畑)も見える。「空間に余裕があると気持ちもゆったり。夏でもほとんどエアコンを使わないくらい涼しい」と喜ぶ。ピアニストである大城さんは、気兼ねなくピアノが弾ける部屋を希望。防音を施したピアノ室は地域の子どもたちがレッスンに通いやすいよう「玄関とは別に、出入り口を設けてもらってすごくよかった」。

特徴的なのは、夫人が「私のお城」と思い入れるキッチン。ダイニングの脇に独立して設けられ、プライベート感がありつつ水回りとも一直線に行き来でき、子ども室にも目が届く。夫人は「キッチンで洗い物をしながら、ダイニングの家事台で洗濯物を畳む夫と話すのも楽しい。生活動線がすごく便利」と話す。



ダイニングからキッチンを見る。右奥にキッチンが独立。手前のカウンターは、夫妻のワークスペースと家事台を兼ねている。LDで遊び勉強する子どもたちも見守りやすい
 

キッチンからダイニングを見る。ダイニングにある造作カウンターの奥に見える扉を開くと、水回りがある


花ブロックにほれ

「静かな環境で子育てがしたい」と選んだ、うるま市平安座。一戸建てを借りて住んでいたが、環境が気に入って集落内で土地探し。売り地が見つかり購入した。新聞などで目にし夫妻ともに気に入った、花ブロックを取り入れた住宅を手がける建築士に設計を依頼。「お話もいろいろ伺って、『これだ!』と思って、すぐにプランをお願いしました」

鳥の声に癒やされ、近所との交流で子育ても安心の日々。敷地内にあった古井戸を残してもらい、洗車や水やりに活用する。夫人は「子どもたちと野菜を収穫するのも楽しい。アタイグヮーを充実させて、食料自給率1%くらいは栽培できれば」とほほ笑んだ。
 

子ども室はリビングに隣接。将来は2部屋に仕切ることができる
 


落ち着いたたたずまいの和室。写真中央の空間に、将来、仏壇を置く予定
 

2階アマハジを目隠しする花ブロック壁が、さわやかな印象をもたらす外観。杉板模様の打ち放し壁との組み合わせがモダンな雰囲気を高める。写真中央にある階段の脇、地面に置かれた丸い石ぶたの下に古井戸がある

 

防音・吸音に配慮した壁材や窓ガラスを導入したピアノ室。音もれを気にせず思いっきりピアノが弾ける。レッスンを受ける子どもたちが気兼ねなく出入りできるよう、ピアノ室専用の出入り口も設けた(正面)。たくさんの資料を収める棚も造作してもらった


玄関。花ブロックの目隠し壁、ポーチに設けられた天窓から陽光と風が届き、明るい
 

トイレ。洗面・脱衣室の奥にあり浴室と隣り合わせ。水回りがひと区画にまとまっている




ここがポイント
敷地の特性最大限に

敷地の前面にあたる南西側と、後方にあたる北西側が道路に接する立地。道路幅はいずれも狭く、後方道路は前面道路より約1メートル高い位置にある。敷地西側には古井戸もあり、それを残して活用することが夫妻の希望だった。

建築士の西門太一さんは、敷地の高低差と限られた面積を有効活用し、風の流れとスムーズな生活動線づくりに力を注いだ。まず、東風、南風を取り込めるよう、敷地南東側に駐車場と畑を配置。「駐車場は前後の高低差をそのまま生かし段差をつけて設けることで=下写真、造成費を抑えました」と西門さん。



建物は後方道路と同じ高さに配置。家の中央に細長いLDを据え、その両脇に玄関や各居室をまとめた。LDは南東に掃き出し窓と軒の深いウッドデッキ、北西にスリット窓があるため、風が抜ける。

キッチンは、LDとつながりながらも独立した造り。「来客時にキッチンを見られる心配もなく、LDの使い方も多様性が増します」。キッチン脇のダイニングには家事兼ワークスペースとなるカウンター。その奥に水回りがあり、家事動線もスムーズだ。

外観も機能性とデザイン性を追求。前面道路に面して設けた、花ブロックの目隠し壁が印象的だ。「玄関やピアノ室の出入り口への視線を遮りながら、深いアマハジ空間に光と風を届けます」。杉板模様の打ち放し壁も、室内外のアクセントとして活用する。



[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
敷地面積:229.75平方メートル(約69.49坪)
1階床面積:90.76平方メートル(約27.45坪)
建ぺい率:46.50%(許容60%)
容積率:39.50%(許容200%)
用途地域:第一種中高層住居専用地域
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設  計:アトリエハコ 西門太一 
構  造:建築設計庵 
施  工:知花工務店
電  気:Can電気 
水  道:株式会社 Hys企画

問い合わせ
アトリエハコ

電話=098-894-6574
https://haco-at.jimdofree.com/


撮影/泉公・ララフィルム 文/比嘉千賀子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2001号・2024年05月10日紙面から掲載

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週刊タイムス住宅新聞編集部

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