庭・garden
2018年7月6日更新
【プロがつくる庭】太陽が似合うワイルドな庭
vol.01 このコーナーでは、和洋問わずプロが手掛けた多彩な庭を紹介します。
Yさん宅(南城市)
傾斜地に乾燥を好む植物を配置。一番上に鎮座するのがシンボルツリー「ダシリリオンロンギシマム」。本部石灰岩をところどころに置き、砂漠の中のオアシスのような雰囲気に
水はけ良い傾斜地生かして
南米の植物もイキイキ
空へ向かって葉が吹き上げ、緑のシャワーのよう。シンボルツリー、メキシコ原産の「ダシリリオンロンギシマム」だ。
太陽をいっぱいに浴び、「ソテツ」や「リュウゼツラン」などの沖縄の植物も、南米の植物もたくましく育つのは、そこが傾斜地だから。
Yさんは4年前、南城市の高台に家を購入するのと同時にプランタドールの新城圭吾さんに庭造りを依頼。門から住宅へと下っていく傾斜地の活用法を相談された新城さんはピンときた。「存在感のある植物を入れてほしいとの希望もあった。南米の植物はインパクト大で、乾燥を好む。沖縄でも水はけの良い傾斜地ならよく育つはず」と踏んだ。それは見事的中。植物たちはワイルドに葉を広げる。
特に「アガベ」の吉祥冠という品種(下記参照)は「県内で、こんなに大きく育つのは珍しい。植物園クラス」と新城さんは話す。
擁壁前の幅わずか50センチの細長いスペースは、ヤシなどを植えて「南国テイスト」にしている
主庭は借景との一体感を重視
小さな庭あちこちに
一方で、リビングやテラスに面した主庭は、Yさんがほれ込んだ景色を邪魔しないよう、「剪定に強い植物を植え、大きな植物は庭のサイドに植えた」と話す。海に面していることから、「オリーブ」や「ブーゲンビレア」など塩害に強いものを「ナチュラルに見えるよう配置」し、周囲の自然との一体感を演出した。
先の斜面の庭は「男っぽく、力強く」。主庭は「柔らかく、女性らしく」とのコントラストが、互いの個性を引き立て合っている。
緑が好きなYさん。ほかにも駐車場へ向かう場所にある幅わずか50㌢の細長いスペースや、玄関前のちょっとした隙間でも植物を楽しみたいと依頼した。
新城さんは、細長いスペースにはヤシ科の「フェニックス・ロベレニー」や「プロメリア」「ヘリコニア」などを植えて南国テイストに。背の高いヤシが、背後にそびえる擁壁の圧迫感を和らげる。
玄関前は多肉ゾーンにした。かわいらしい姿の「ヘラサンゴ」や「オンコクラータ」などのぷっくりとした葉は、どことなく手を振って家族を送り出しているようにも見える。
Yさんは「私は出張が多い。帰ってくるたびに植物が大きくなっているのを見ると、たまらなくうれしくなる」。家で待つ緑が、忙しい日々の癒やしとなっている。
主庭は景色を邪魔しないよう、大きな植物はサイドに寄せ、周囲の自然との一体感を演出するためナチュラルな雰囲気にまとめた
玄関前では、さまざまな多肉植物が身を寄せ合う。多肉植物はさほど土を必要とせず、寄せ植えにも適していることからここに配した
自慢の植物はコレ!
「アガベ」の吉祥冠という品種。直径50センチほどあり、「こんなに大きいものはなかなかない」と新城さん。日当たりや水はけの良さが成長の源となっている/写真左
擁壁の前に鎮座する「コペルニシア アルバ」(奥)。南米原産で、成長とともに葉が茂って丸くなっていくそう。「県内では、ほかにないと思います」と新城さん/写真右
設計・施工/プランタドール
098-917-2834
http://www.plantador-okinawa.com
編集/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1696号・2018年7月6日紙面から掲載
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- 東江菜穂
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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。