企業・ひとの取り組み
2023年2月3日更新
【人物紹介】漆喰でカビ問題を解決へ|(株)COOOL 代表取締役の濱口光一郎さん[ひと]
冷却人工芝「クールターフ」や天然素材の「しっくいペイント®︎」を販売する(株)COOOL(クール)。濱口光一郎代表取締役(46)は、「環境にも人にも優しいものづくりで、子どもたちに誇れる未来を渡したい」と熱く語る。
石灰岩の効果を研究
(株)COOOL 代表取締役
濱口光一郎さん
〈プロフィル〉はまぐち・こういちろう/1976年、長崎県出身。国立有明工業高等専門学校を卒業後、清水建設(株)に入社。2019年、息子が人工芝でやけどをしたのをきっかけに退職し、冷却人工芝を研究開発。福岡で(株)COOOLを創業。21年、沖縄オフィス開設。防カビ、抗菌、消臭効果の高い「しっくいペイント®︎」も販売。
◆(株)COOOL沖縄オフィス
糸満市西崎町5-12-9
電話098・851・9832
-商品開発や起業の経緯は?
43歳の初夏、長男が人工芝で足の裏をやけどをしたのがきっかけです。芝の表面温度が70度以上に達していました。そのような芝環境で子どもたちを遊ばせることに、大人の一人として疑問を持ちました。
そして、気化熱による冷却効果が期待される石灰岩の活用が、人工芝の表面温度を抑えるためのカギになるのではないかと考えるように。退職して福岡で会社を立ち上げて、石灰岩の研究と冷却人工芝の開発に取り組むことにしました。
石灰石を砕き、ココナツ繊維製チップを混ぜた「寒土」を人工芝の中に充填し、雨水や夜露の揮発効果で表面温度を下げる冷却人工芝「クールターフ」の開発に成功しました。現在、特許出願中です。
-しっくいペイント®︎を販売するきっかけは?
「クールターフ」の施工を手掛ける中で沖縄は高温多湿でカビに困っている人が多いことを知りました。そこで石灰岩から作られる漆喰(しっくい)に着目。漆喰には、消臭、調湿、抗菌、防カビ効果があることが実証済みで、その上、冷却効果も検証されています。その性能を活用し、カビ問題を解決したいと新たに「しっくいペイント®︎」を販売することにしました。
-新塗料で期待することは?
小さな子や病弱な方、高齢者がいる家庭に安心して使ってほしい。塗りやすく、DIYでも簡単に扱えるので、施工時は施主のご家族に参加してもらったりもします。楽しい思い出になり、家への愛着も増します。
私自身が沖縄で使っている部屋の壁にもしっくいペイント®︎を塗りました。空気がサラッとしていて想像以上に心地よく、冷房の設定温度は真夏に28度でも十分涼しい。地球温暖化をこれ以上進めないための行動の一つになると思っています。会社だからこそ、こうした新しい資材や技術、デザインを柔軟に取り入れていきたいと考えています。
-今後の目標は?
環境にも人にも優しい当社商品を広め、環境保全に貢献していきたい。
沖縄には、自然と上手に付き合いながら暮らしてきた住文化がありました。漆喰は、昔のおじい、おばあの家のようにエアコンが無くても快適な生活空間作りの役に立つ。その先人の知恵を生かした“クールハウス”を展開していく予定です。そして私自身がやりがいを持ち、仕事を楽しむ姿を見せることで、子どもたちに「大人って楽しい、仕事って楽しい」と伝えていきたいです。
壁塗りを楽しむ施主の子どもたち。しっくいペイント®︎は天然素材で作られているので安心して使用できる
漆喰で暮らし快適に
DIYでも扱いやすく
既存住宅の天井と壁全てにしっくいペイント®︎を使ったクールハウス第1号の家。梅雨の時期でもさらっとしていて、真夏でもエアコン1台で快適に過ごせると好評だという
(株)COOOLの「しっくいペイント®︎」は、消臭、調湿、抗菌、不燃、防カビの効果があり、夏は涼しく、冬は温かい。
カラーバリエーションも豊富で、ペンキのようにローラーで塗ったり、吹き付けたりすることができ、木やコンクリート製の壁、一般的なビニールクロスなら上から塗ることができる。ただし、和紙クロスや布クロスなど適さないものもあり、濱口さんは「壁紙の材質、汚れやはがれなど下処理が必要な場合もあるので、問い合わせてほしい」と呼び掛ける。
取材/赤嶺初美(ライター)
週刊タイムス住宅新聞
第1935号・2023年2月3日紙面から掲載