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2017年4月28日更新

発電所増へ 新電力をサポート|気になるコト調べます!⑲

電力の小売り自由化が始まり1年がたった。しかし県内では、沖縄電力から切り替えた一般家庭はほぼ無い。新電力と言われる新規参入会社はいくつかあるが、売り物(電力)の確保に苦心しており、一般家庭向けに販売できていないのが現状だ。一方で明るい兆しもある。下水汚泥・消化ガスや廃食油を使った新たな発電所ができ、新電力の貴重な電源となっている。沖縄タイムス「オフィスの窓から」で県内のエネルギー事情について執筆する玉栄章宏さんは「電力自由化は沖縄振興のカギ。行政は、新電力をサポートすべきだ」と指摘する。

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電力の小売り自由化から1年 県内の状況は?

いまだ一般家庭の切り替え無し 一方で明るい兆しも
 

太陽光発電以外の電源を

沖縄は送電線が本州と接続しておらず、他県から電力を供給することができない。そのため、県内で電力を作らなければならない。

玉栄さんは「自由化から1年たったが、県内の新電力はいまだ『安定電源』の確保に苦心している」と語る。

「安定電源」とは、天候や昼夜、季節を問わず電力を供給できる発電システムのこと。県内で多く見られる太陽光発電は、これに当たらない。安定電源が十分な量確保できていないため、新電力は少ない電力で利益を確保すべく、ホテルやスーパーなど、法人向けの販売のみにとどまっている。

沖縄CO2削減推進協議会は、2016年6月から家庭向けの売電を始めるとしていたが、まだスタートしていない。同協議会はその理由を「国とのやりとりがうまくいっておらず、小売電気事業者の登録が難航している」と説明する。仕切り直しの最中で、具体的にいつ登録できるかのめどはたっていない。「できれば本年度中に登録を済ませ、家庭向けの販売を始めたいと思っている」と語る。


新電力 自社発電所の建設も

沖縄市で廃食油を使った発電をしている(有)大幸産業の沖縄バイオマス発電所(写真)は昨年12月から新電力への売電を始めている。同所の大城章実所長は「自由化で選択肢が増えることは、県民のためになる。弊社も電力量を増やして、新電力をサポートしたい」と意欲を語る。


廃食油を使って発電する沖縄バイオマス発電所の工場。油は給食センターや飲食店などから回収している


県内に進出している新電力の一つ、洸陽電機はある程度の安定電源が確保できたことから、法人向けの販売を昨年12月から始めた。同社沖縄営業所の上地正規所長は「法人向けの販売で企業としての基盤を整えながら、さらなる安定電源の確保にも取り組んでいる」と語る。食物残渣・木質資源による発電所をつくる計画も進めており「電源を少しずつ増やしているところ。なるべく早く家庭向けの売電を始めたい」と意気込む。

沖縄ガスとイーレックス(東京都)が昨年4月に立ち上げた新電力、沖縄ガスニューパワーも企業向けの販売にとどまっているが、イーレックスを主体に、バイオマス発電所を新設する計画を進めているという。沖縄ガスニューパワーの担当者は「発電所が軌道に乗れば、家庭向けの販売もしたい」と話す。

新電力は発電所を新設しながら、家庭向けの販売へ向けて準備を進めている。

玉栄さんは「電力小売事業への参入者が増えることで競争が活性化し、さまざまな料金メニュー・サービスが登場する」とし、「企業のコスト削減と企業誘致拡大、県民にはQOL(生活の質)の向上につながる可能性がある」と説明する。

今後5年間の電力自由化への対応としては、「①沖縄版電力卸市場の創設②バイオマス発電事業など安定電源拡大③固定価格買取制度のバイオマス発電単価増要請―などの施策展開が必要だ。新電力会社による10万キロワット程度の安定電源が確保できれば、沖縄でも電力自由化の進展が期待できる」と語った。
 

大手電力会社から新電力への切り替え件数
全国 3427.9件(約5%)
北海道電力管内 164.6件(約6%)
東北電力管内 121.8件(約2%)
北陸電力管内 20.6件(約2%)
東京電力PG管内 1813.8件(約8%)
中部電力管内 295.1件(約4%)
関西電力管内 721.5件(約7%)
四国電力管内 32.9件(約2%)
中国電力管内 40.3件(約1%)
九州電力管内 217.3件(約3%)
沖縄電力管内 0.0件(0%)
電力広域的運営推進機関(2017年4月7日発表)
※()は管内切り替え率(単位:千件)



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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1634号・2017年4月28日紙面から掲載

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スタッフ
東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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