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2017年3月24日更新

良質住宅 評価と価格に反映|気になるコト調べます!⑯

適切に維持管理された中古住宅の良質性を適正に評価し、中古住宅の流通に向けた金融一体的な仕組みづくりに取り組んでいる県不動産鑑定士協会とコザ信用金庫、OKINAWA型中古住宅流通研究会、県中部宅地建物取引業者会の4者は、今月までに商品開発のベースとなる「住宅ファイル」のパイロット版を作成した。不動産鑑定士協会の竹内優志業務委員長は、「パイロット版では、必要に応じた修繕をした建物は従来よりも高い担保評価になった。メンテナンス意識を向上させることが資産価値を高め、良質な中古物件を増やすカギ」と説明する。OKINAWA型中古住宅流通研究会会長で建築士の下地鉄郎さんは、「鉄筋コンクリート造が多い沖縄の住宅に応じた費用対効果の高い住宅診断と、診断の専門家・インスペクターを増やすことが課題」と話す。

中古流通 住宅評価~融資まで一貫の仕組みづくり

適正評価のパイロット版を作成。その成果と見えてきた課題は?
 

住宅診断基に「住宅ファイル」

同事業は、住宅診断(インスペクション)を基に、適切に維持管理された中古住宅の良質性を担保評価や価格に適正に反映させることで、良質な中古物件の普及と流通を促すのが狙い。

ことし1月から沖縄市やうるま市、大宜味村で売却を希望する8軒の鉄筋コンクリート(RC)造住宅を現地調査し、住宅ファイルのパイロット版を作成した。その内容は、①住宅診断②瑕疵保険付保のための検査③簡易耐震診断④長期修繕計画⑤不動産鑑定士による担保評価のための価格査定。ことし2月に行われた、築20年になる2階建て住宅の調査に同行した。

調査当日は、建築士のインスペクターと不動産鑑定士が建物の基礎や床、屋根、壁、設備配管など、内外部の部位ごとに劣化などを確認した(写真参照)。下地さんは、「日本の住宅診断はまだ始まったばかりで、木造がベースになっている。RC造の特性を踏まえた効率的な診断方法の確立が必要。インスペクターを増やすことも課題」と説明する。住宅診断の結果を踏まえて作られる④では、現時点から50年後まで、10年単位で必要になる修繕とその費用が示され、メンテナンスの見通しを立てることができる。

不動産鑑定士は現地調査に加え、①~③の診断の結果と④を踏まえて建物の担保評価額を算出する。竹内さんは「パイロット版を通して、必要に応じた修繕が施された建物は高い担保評価になった。物件の担保価値を第三者的な目線で判断し、金融機関を介した流通の橋渡しをするのが私たちの役目」と話す。

売買物件の調査を依頼した不動産会社は、「住宅ファイルがあれば、お客さまも安心して取引ができるし、私たちも自信を持って売り出すことができる。今後に期待したい」と話した。住宅ファイルは中古物件を取り扱う不動産会社に報告書として手渡され、実際の売買に活用される。


メンテナンスの重要性を周知

パイロット版の作成の調査を通して竹内さんと下地さんは、「RC造の建物は、定期的な外壁の塗り替えや屋上防水など、適切にメンテナンスすることで長く活用でき、資産価値も保ち得ることが分かってきた。住宅所有者に将来にわたる維持管理の大切さを知ってもらうことが、良質な中古住宅流通につながる」と実感する。そのためにも、長期修繕計画と、それに基づく修繕費用の確保は重要だ。コザ信金ではパイロット版を基に、住宅ローンや修繕用の定期積金などの商品化に向けて具体的な検討に入っている。

事業は2017年度も継続。建物の診断履歴のデータベース化や、塗装による構造体の保護効果の調査に取り組む予定だ。竹内さんは「一般の方や行政に取り組みを理解してもらえるよう、広報活動も充実していきたい」と話した。

 

インスペクターによる住宅診断の様子

住宅診断では、建物の基礎や床、屋根、壁、設備・配管など内外部を、建築のプロの目で建物の劣化や雨漏りの状態などを主に目視で確認する。売買時に住宅の状態(品質)を的確に把握しておくことで、安心して購入でき、その後の維持・管理にかかる費用の目算もつきやすい。


外壁のひびは、スケールをあてて幅と長さを調べる。買い手に安心してもらうため、構造上問題ではないひび割れの幅や長さも確認。チェックした部分は写真におさめ、報告書にも記録する。



窓枠のコーキング部分に見られる劣化。瑕疵保険付保の際、コーキング部分の状態が審査に通るか否かのポイントの一つだという。



壁は打診棒でたたきながら音を聞き、コンクリート内部の鉄筋膨張などの有無を確認する。



塀は地盤が悪いと傾くことがあるため、必要に応じて角度も確認する。



室内では天井口や床下も開けて、天井裏や床下基礎の状態を確認。


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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1629号・2017年3月24日紙面から掲載

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比嘉千賀子

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住まいと暮らしの情報紙「タイムス住宅新聞」元担当記者。猫好き、ロック好きな1児の母。「住まいから笑顔とHAPPYを広げたい!」主婦&母親としての視点を大切にしながら、沖縄での快適な住まいづくり、楽しい暮らしをサポートする情報を取材・発信しています。

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