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2017年1月13日更新

集い育む「光と風の建築」|追悼 建築家・国場幸房氏<上>

(株)国建の名誉会長で建築家の国場幸房氏が、昨年暮れに77歳で亡くなった。沖縄美ら海水族館や県公文書館などを手掛け、県内の建築界をけん引。2016年には「沖縄の建築文化の発展に貢献した」として建築・設計分野で初めてを受賞した。その功績をしのび、今週と次週の2回にわたって追悼企画を掲載する。

国場氏は早稲田大学建築学科を卒業後、大高建築事務所を経て1967年に国建に入社。戦後の沖縄を代表する多くの建築に携わってきた。2015年7月の本紙の取材で、「建物の形はその空間から生まれてくるもの。風土に合ったものをつくりたいと考えている」と語った国場氏は、自身の建築を「光と風の建築」と呼ぶ。その代表作4点を紹介する。


故・国場幸房氏

 ホテルムーンビーチ(1975年) 
吹き抜け・ピロティ大胆に

沖縄海洋博覧会直前に開業したホテルムーンビーチ(恩納村)。最も印象的なのが、北棟の吹き抜け(写真、2015年7月8日撮影)と1階のピロティだ。高さ約10メートルの吹き抜けは、最上階からつるを垂らす植物が両端の客室に心地よい緑陰をもたらす。同氏が学生時代に八重山で見たガジュマルの木陰を建築で再現したという半屋外のピロティは、「地域と海のつながりを建物で損なわずに済む」と考えたアイデアだ。JIA25年賞受賞(2002年)


 沖縄県公文書館(1995年) 
高倉モチーフ 湿気、風通しに配慮

古来、沖縄の人々が穀物を収穫してきた高倉をモチーフに、収蔵庫を地上に設け、湿気や雨水への対策を図っているのが特徴の一つ。深いひさしが風の流れを生む。素材使いにたけていたという同氏が初めて赤瓦を用いた建物。瓦を美しく見せ、水はけも良くなるよう、屋根は30度の急勾配になっている。日事連建設大臣賞(1995年)、BCS賞(1996年)受賞


 沖縄美ら海水族館(2002年) 
世界に一つのオリジナル

沖縄の強い日差しや雨を遮り、風通し、眺望がよい半戸外のパーゴラ(日除け棚)大空間は、「人が集う場に」とエントランス広場上部に設けられた。ジンベエザメやマンタが泳ぐ世界最大級の水槽は、支柱のない大型アクリルパネルを用いて臨場感を演出。海底からの観察が可能なアクアルームをはじめ、水槽上部にトップライトと電動ブラインドを設けた自然光を取り入れる造りなど、同氏が泳ぐ魚と訪れる人に思いを巡らせて生まれた独自のアイデアが随所に施されている。日事連優秀賞(2004年)、公共建築賞・特別賞(2006年)受賞


 那覇市本庁舎(2012年) 
花と緑あふれるシンボルに

亜熱帯庭園都市・那覇のシンボルとなるよう計画された庁舎は、ひな段状の屋上庭園を設け、緑化ルーバーを建物外周部に施した。深い庇とルーバーで採光と通風を確保。屋内から見える緑陰により、利用するすべての人が安らげる庁舎を目指した。同氏は、自宅の屋上で植物を育ててワイヤメッシュにはわせる実験をし、緑化ルーバーを提案したという。
第1回沖縄建築賞 審査員特別賞受賞(2015年)
写真提供/(株)国建
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1619号・2017年1月13日紙面から掲載

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