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2017年1月20日更新

責任と勇気を持って臨む|追悼 建築家・国場幸房氏<下>

昨年末に亡くなった、(株)国建の名誉会長で建築家の国場幸房氏をしのぶ企画。今回は、同氏と共に県公文書館、美ら海水族館などを手掛けた国建の安谷健建築設計部部長、仕事や趣味などで交流を深めた東設計工房の山城東雄代表、環設計ファクトリーの与儀清春代表に思い出などを語ってもらった。


国場氏による美ら海水族館のスケッチ


実際の外観


(株)国建 建築設計部部長 安谷健氏(52)

照れ屋で口下手だけど、すごく熱い思いを持って「沖縄の建築のあり方」を考え続けてきた幸房名誉会長。初めて一緒に仕事をしたのは県公文書館で、その迫力あるスケッチと模型にみんな圧倒されました。
会長は常々、「満足しちゃダメだ。満足した時点で思考が止まる」と言っていました。だから、現場を進めながら施工図に何度も手が加わる。会長との仕事は実施設計(契約に必要な詳細を決める設計)を数回行う気持ちで臨む必要がありました。自身で積算(工事費の見積り)を手掛けるなどコスト意識も高く、「設計者自ら、責任と勇気を持って臨むことが大切」と身をもって教えてくれました。
美ら海水族館では実施設計から参加した。基本的な考え方を踏襲しつつも、支柱のない大型アクリルパネルでの大水槽の見せ方やエントランスのパーゴラなど大胆で特徴的な形を提案した。「公共建築はみんなのための建物だから、使う人のために考えるべき」というのが会長の考え。常識にとらわれず、泳ぐ魚、訪れる子どもたちの目線で考え抜いた水族館は、世界に誇る沖縄の建築となりました。

若い社員らと作品集
ユーモアがあり、後輩や部下にも分け隔てなく接し、エールを送る優しい人柄。若い世代が集う会長室はアトリエのようでした。がんの転移が見つかり、余命2、3カ月の告知を受けた翌日、会長は若手社員を集め、自身の作品集を作ることを告げました。本人手書きのラフをもとに20日間で作り上げたのが「光と風の建築」で、告別式で配布できたことは感慨深いです。

若いスタッフとともに臨んだ設計コンペ(1996年当時)。中央が国場氏(資料写真は、国建提供)


大胆な壁面緑化を施した那覇市新庁舎は、国場氏最後のコンペ作品


(株)東設計工房代表取締役 山城東雄氏(72)

人柄も建物もおおらか
房さんとは、お互いに好きな囲碁を週1、2回お相手していただく間柄。氏の強さは県内でも指折りで、碁を打ちながら建築やいろいろな話をしました。沖縄を代表する建築を数々設計。ムーンビーチのころからとても緑にこだわり、私たちに素晴らしい手本を示してくれました。2000年に氏が新宿で個展を開いたのは沖縄の建築家として画期的で、多くの著名な建築家が訪れていたことに感動したものです。
日本建築家協会(JIA)沖縄支部では、3代目支部長を引き受けていただきました。人柄も建築も飾らず、おおらか。決して偉ぶらず、人を批判しない。そんな房さんを慕う若い建築家が多く入会し、会も活気づきました。氏の功績と実績が認められ、昨年7月の沖縄タイムス賞に続き、10月には沖縄初のJIA名誉会員として表彰されたことは本当に喜ばしいことでした。人として建築家として、多くを学ばせてもらった。いずれ若い人たちの中から、氏を超える建築家が誕生することが恩返しになると思っています。


 環設計ファクトリー代表 与儀清春氏(72) 

ガジュマルのような人
幸房さんのイメージは、ガジュマルのように大きく懐が深く、包み込むような存在。国建に勤めていた同級生を通して交流を持つようになり、琉球藷の会などプライベートを中心にいろいろと誘っていただきました。私が沖縄建築士会青年部会に所属していたときには講演を引き受けていただき、とてもうれしかったことを覚えています。
沖縄に根差した幸房さんの建築は、構造がしっかりしていて安定感がある。自然に建物の内部へと引き込まれてしまう造りには、しっかりとしたプランニングを感じます。ムーンビーチや那覇市新庁舎などは年月を重ねて緑に覆われ、存在感を放つ建物になっている。自分が肥やしとなって、沖縄の建築界の土作りをしてきた幸房さん。常に周りを気に掛け、懐深く受け止める。そんな生き方が建築にも現れていて、ほかの誰にもできない建築だと思います。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1620号・2017年1月20日紙面から掲載

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