家づくり
2025年1月17日更新
健康寿命を延ばそう!|買い物がフレイル予防に[介護を支える 住まいの工夫㊶]
昨年12月、沖縄県の健康寿命が全国と比べ大幅に後退したことを示す厚生労働省の調査が公表された。「健康寿命を延ばすにはフレイル予防が大切」とその取り組みに力を注ぐ、作業療法士の川満尚彦さんに話を聞いた。

健康寿命を延ばそう!
買い物がフレイル予防に
沖縄の健康寿命が後退
早急な対策が必要
厚生労働省が2024年12月に公表した健康寿命に関する調査結果によると、沖縄県の健康寿命は男女共に全国順位を大きく下落=下表。健康寿命の短縮は、高齢者のQOLの低下や医療・介護費用の増大につながるため、早急な対策が求められている。
健康寿命に関する都道府県別順位の推移(沖縄県)
(厚生労働省「健康寿命の令和4年値について」)
「健康寿命を縮める主要な要因の一つにフレイルがある」と指摘する(株)リハグリット代表取締役の川満尚彦さん。作業療法士として西原町のフレイルサポーター養成講座や那覇市の訪問型サービスC事業にも携わり、フレイル予防に力を注ぐ。
フレイルとは、健康な状態と要介護状態の中間の段階を指し、放置すると要介護状態に移行するリスクが高まる。フレイルは、身体的、精神・心理的、社会的の3種に分かれ、栄養、身体活動、社会参加が予防の柱となる。
川満さんは「日常生活の中で運動と役割を結びつけることがフレイル予防のカギ。買い物はおすすめ」と話し、宜野湾市で営む事業所でも「買い物リハビリ」を提供している。「広い店内を歩けば自然に運動量が増え、商品選びや会計、店員とのコミュニケーションは脳の機能維持に有効」と説明する。また、買い物には「家族や自分のために必要なものを用意する」という具体的な役割があり、継続しやすい特徴もあるとした。
広い店内なら3000歩も!自然に楽しく運動量アップ
川満さんはフレイル予防の一貫として「買い物リハビリ」を提供している。広い店内を歩くことで自然に歩行量を増やすことができ、中には2000~3000歩歩く人もいる。商品を棚から取る際にかがんだり、手を上に伸ばしたりする動作は筋力や関節の柔軟性を維持するうえで効果的だ。商品を選び、金銭のやり取りをし、周囲の人や物にぶつからないよう配慮して歩くなど、フレイル予防の要素が多く含まれている。
生活そのものを「健康づくりの場」に
川満さんは「日常生活の工夫で、特別なトレーニングなしでも健康づくりができる」と語る。買い物での徒歩や自転車、洗濯物干し、庭の手入れなど、生活動作や趣味で体を動かす機会を増やすことがポイントだ。
ある高齢女性のリハビリを担当した川満さんは、女性が元気を失ったのは、趣味のサーターアンダギー作りができなくなったからだと気付いた。「県外の孫へ送るサーターアンダギー作りが女性の生きがいだったんです」。川満さんは再びサーターアンダギー作りができるように支援。材料買い出しのためにスーパーを往復できるようにし、買い物から調理、郵送まで、活動を段階的に取り戻していった。「サーターアンダギー作りで外出が増え、人の役に立つと思えることで自己効力感も得られる。女性にとって、これはスクワットよりずっといい運動になるんです」と笑顔で語る。
川満さんは日常を健康運動に変える視点の大切さを説き、「楽しく心と体の健康を守り、フレイル予防を生活の中で継続していきましょう」と呼び掛ける。
かわみつ・なおひこ/
(株)リハグリット代表取締役。作業療法士。宜野湾市で生活リハビリ特化型デイサービスを運営
取材/赤嶺初美(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2037号・2025年01月17日紙面から掲載