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2017年6月2日更新
六角形の背もたれ特徴|フランク・ロイド・ライトの家具[02]
アメリカの建築家、フランク・ロイド・ライトは、建物だけでなく、室内空間の調和も重要と考え、自らの建築にふさわしい家具を自分の手でデザインしていました。今回は旧帝国ホテルにあった「ピーコックチェア」を紹介します。
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ピーコックチェア(旧帝国ホテル)
建物全体をデザイン
大正時代の東京日比谷に建設された旧帝国ホテルは、新時代を迎える日本のための国際的なホテルという要望に応えるべく、フランク・ロイド・ライトが自らの威信を掛けて設計した渾身の作でした。
ライトは日本建築から学んだ神社仏閣の空間構成を取り入れながら、独自の精緻な意匠をちりばめて、世界中のどんな建物にも見られない芸術品のようなホテルを作り上げたのです。
ライトの設計には建物の床、壁、天井だけではなく、照明器具や椅子や机といった家具も全て含まれていて、建物全体が統一されたデザインによって完璧に調和していました。
脚や裏側まで精巧に
今回紹介するのは、その旧帝国ホテルにあった「ピーコックチェア」と呼ばれる椅子です(写真)。
天井に幾何学模様の孔雀が描かれた宴会場「孔雀の間」(ピーコックルーム)に置かれていたことがその名称の由来です。
床から、特徴のある六角形の背もたれの頂部まで96センチ、座面の高さは42センチで、比較的小ぶりな椅子ですが、背面や脚にも細やかなデザインが施されています。
ほかにも赤やオレンジの革張りのものや、背もたれと脚に籐が張られているものも存在します。
貴重な建物の保存を訴えた多くの人々の運動にもかかわらず、1967年にホテルの取り壊しが始まると、当時の建築家たちはこぞって解体現場に足を運んで、その一部だけでも残しておきたいと崩れた壁のテラコッタタイルや椅子などを持ち出しました。
このピーコックチェアは、以前に某鑑定番組に出品され、200万円の値が付いて話題となったこともあります。時代を超越したデザインは現代においても輝きを失わず、私たちを魅了し続けているのです。
ピーコックチェアの脚。背もたれと同様に幾何学模様のデザインが施されている
[執筆]遠藤現(建築家)
えんどう・げん/1966年、東京生まれ。インテリアセンタースクールを卒業後、木村俊介建築設計事務所で実務経験を積み独立。2002年に遠藤現建築創作所を開設し現在に至る。
『週刊タイムス住宅新聞』フランク・ロイド・ライトの家具<02>
第1639号 2017年6月2日掲載
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