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2021年12月3日更新

【プロがつくる庭】頂向く石の気勢 植栽で柔らかく

本部半島にある会社の庭(本島北部)

高低差で奥行きとメリハリ

会社の敷地に三つの石庭

本部石灰岩をふんだんに使った石組みにより、武骨で力強い印象。そこにバランス良く配置された植栽が自然の柔らかさを醸し出す。

そんな風景が広がるのは本部半島にある会社の敷地内。入り口正面と事務所横、道路に面した部分の3カ所に庭があり、いずれも地場産の本部石灰岩が使われている。

メインとなるのは道路側の庭。傾斜を生かした造りで、ガジュマルが植えられた頂上を中心に裾野が広がる扇形をしている。起伏のある石組みや、高木と低木を織り交ぜた植栽、随所に設けられた竹垣などで奥行きやメリハリを演出。さらに、石が立ったり木が枝を伸ばしたりしながら、頂上を指し示しているような「気勢」も感じる。

裾野部分にはつくばいがあり、頂上から庭を巡ってきた水が竹の懸樋を通って、背の低い金閣寺垣で囲まれた海に流れていく様子も表現されている。

一方、事務所横の庭には50㌧を超える巨大な岩。その隣ではリュウキュウマツが伸びやかに腕を伸ばす。また、入り口正面の庭は、敷地の奥まで見通せるよう石組みは低くなっている。


道路側の庭。起伏がつくように石を配置するなどしてメリハリをつけた。一角には、Kさんが「適当に組んだら亀のような形になった」という部分もある(下写真)



道路側の庭の頂上。中央のガジュマルと、その右手前にどっしりと置かれた石が、庭全体の印象を引き締めている


道路側の庭にある通路。地元でとれた本部石灰岩の石段が頂上まで続く。庭全体を回遊できるようにもなっている

地場産材で石組みを自作

遠近感出す「くずし」の竹垣3年ほど前、庭好きのKさんは、趣味の一つとして会社の一角に庭を造ることにした。自分で重機を操縦し、「自然の山の風景をイメージ」しながら地元でとれる本部石灰岩を配置。木も植えようとしたが、造園業者の少ない北部では気に入った木が見つからず、庭には草が生えるばかりだった。

そこで、昔からの知り合いでもある、金武町にあるナカムラ造園土木の仲村弘喜さんに相談した。

仲村さんはまず、道路側の庭にある石の気勢を調整。「気勢とは、石を傾けて据えたり、木の傾きや枝の流れなど、各素材が持つ方向性などの印象や、その印象を生かした技法のこと。主木や主石といったポイントとなる部分を向くようにすることで庭全体の流れが整い安定する。Kさんの石組みは上手だがおとなしい印象だったので、頂上に向かって気勢が出るように石を組み直した」。

手前に金閣寺垣、中腹には竹を縦横に組んだシンプルな四つ目垣も配置。左から右へと少しずつ高さが変わる四つ目垣もあり、仲村さんは「遠近感を出すための『くずしの四つ目垣』」と説明する。実際、高い部分は手前に、低い部分は奥にあるように見える。

そこに、さまざまな種類の木々を、気勢を調整しながら加えることで自然の山の風景を造っていった。Kさんは「花が咲くなど楽しみができたが、今はまだ庭の原型が整ったばかり。5年後、10年後と、植物が大きくなったら、さらに良い庭になるはず。その時が楽しみ」と話した。



正面から見た道路側の庭。手前が金閣寺垣、奥の二つが四ツ目垣。左の四ツ目垣は正面を向いているが、左右の高さを変えることでより奥行きを感じるよう演出している

事務所横の庭。中央の巨石は50トンを超えるもので、見えているのはほんの一部。半分以上は地面に埋まっている

道路側の庭の気勢を整えるため、右奥の頂上に向けて斜めに立たせた石


巨石の前には、縁起が良いとされるオガタマの木が植栽されている

入り口正面の庭。敷地の奥まで見通せるよう、石も植物も低めのものが使われている


設計・施工/㈲ナカムラ造園土木
☎098・964・5670


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1874号・2021年12月3日紙面から掲載

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スタッフ
出嶋佳祐

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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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