庭・garden
2021年12月31日更新
【プロがつくる庭】<年末年始特別編>|ナカムラ造園土木
プロがつくった庭を取り上げるシリーズの年末年始特別編。今回は、二つの和風庭園を紹介する。
枯れ山水の海に
天然のつくばい
石と砂利で異なる趣
長い年月をくぼみで表現
最奥の山頂から緩やかに裾野を広げる、本部石灰岩の石組み。本部半島にある会社の庭は、通路の起伏や、随所に植栽された木々によって、自然の山の中を散策しているような気持ちにさせる。
山の手前には砂利が敷かれた部分があり、背の低い「金閣寺垣」で囲まれている。ナカムラ造園土木の仲村弘喜さんは「荒々しい石組みが山であるのに対し、砂利は穏やかな海を表現している」と説明する。
そうなると、金閣寺垣の間から山へと続く飛び石が、砂利の海に浮かぶ島に思えてくる。
その島を伝って海を渡っていると、石組みの間から腕を伸ばす竹の懸樋が現れる。その下にはくぼみのある石もある。「この石はつくばい。懸樋から流れ落ちる水を受け、長い時間をかけてできたくぼみのように見せたかった」と仲村さん。そのため、くぼんだ部分をあえて上に向けて配置したという。
石組みの山頂から湧き出た水が、川となって山中を巡り、懸樋からつくばい、そして砂利の海へと流れ出る。実際に水が流れているわけではなく、石や砂利で水の流れを表した枯れ山水のようだ。上と下で趣の異なる庭が、天然のつくばいによってつながっている。
砂利の海。右手の入り口から飛び石をわたり、奥にある石組みの山へと向かう。その途中につくばいがある=中央
くぼんだ石を使ったつくばい(写真中央)。懸樋の下に置くことで水がたまっているように見える
高さ70センチほどの金閣寺垣。庭としての境界を示している
庭の全景。地元産の本部石灰岩がふんだんに使われている。最奥から手前への水の流れを表した枯れ山水のイメージ
設計・施工/㈲ナカムラ造園土木
☎098・964・5670
https://www.mapion.co.jp/
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1878号・2021年12月31日紙面から掲載
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この記事のキュレーター
- スタッフ
- 出嶋佳祐
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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。