家づくり
2021年8月20日更新
【沖縄】屋外の段差解消で外出促す|介護を支える 住まいの工夫 ⑤
介護が必要な人も、介護をする人も、安心して安全に暮らせる住まいの整え方を紹介するコーナー。今回は介護支援専門員の新城和三さんが「屋外の段差解消」についてアドバイスします。
屋外の段差解消で外出促す
社会とつながる道に
ほんの少しの段差や数段の階段でも、高齢者や要介護者にとっては転倒の原因になったり、車いすでの通行が難しくなる。「心身の不安や負担から外に出かけるのがおっくうになり、引きこもりがちになることも少なくない」と介護支援専門員の新城和三さん。
屋内だけでなく屋外も段差をなくして平らにしたり、スロープや手すりを設置するなど、移動しやすい住環境を整えることは、「安全面だけでなく、精神的に与えるプラスの影響も大きい」と話す。
体が不自由になると生活の範囲が狭まって、人や社会との交流も減りやすい。刺激がなくなることで、認知機能の低下につながることもあるとし、「社会とのつながりをなくさないためにも屋外の段差解消は大事。家族以外の人との交流は適度な緊張があり、気持ちに張りが出て、生活への意欲や生きがいにつながることもある」と話す。
段差解消の改修工事は、条件を満たせば介護保険制度の給付対象になる。また、賃貸住宅でも大家の許可があれば、給付対象になる。「退去時の原状回復という責任はあるが、賃貸だからできないと最初からあきらめている人が多い」と指摘する新城さん。住環境に不安を感じたら、一人で抱えず、まずは相談してほしいと呼び掛ける。
駐車場から玄関まで車いすで移動できるよう、スロープと手すりを設置。スロープの勾配が緩やかだと、要介護者が車いすを自操して移動するときや、介助者が車いすを押すときも楽にできる
(撮影協力:コープおきなわコープハウジング、モデルルームこくば)
方法はさまざま
屋外の段差を解消する一つの方法として、スロープの設置や導入があるが、新城さんは「本当にスロープでよいのか確認することが大事。本人の状態や住環境によっては、段差が低ければそのまま残すか、踏み台で昇降を小さくして手すりを設置したり、介助する人が車いすの操作を工夫し対応する方がいい場合もある」と注意を促す。
車いすを利用する要介護者、介護者にとって、スロープは勾配が緩やかであるほど、自操や介助が楽になるが、その分、長さが必要になり、面積によっては設置できない状況もある。Aさんのケース=左囲み=のように、取り外しが可能で、使用しないときは折り畳んで置いておけるタイプのものや、電動で床が上下する段差解消機など、さまざまな種類、方法があり、福祉用具でレンタルできる場合もある。
新城さんは「介護リフォームは、住環境を整えるより良い方法や制度を熟知したケアマネジャー、地域包括支援センターをはじめ、経験豊富な業者へ相談すること、やり過ぎた改修にならないよう、バランスよく行うことが大事」とアドバイスした。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
Aさん:レンタルスロープ活用
脳梗塞で半身まひになり、車いす生活を送っている要介護3の女性。玄関の上がりかまちが高く、スロープを設置しようとしたが、勾配に配慮すると3mの長さが必要となり、固定設置は断念。そこで、必要なときだけ設置し、使用時以外は畳んで置いておける福祉用具のスロープをレンタルして活用することにした。
Bさん:飛び石取り除き段差解消
要介護1の男性。すり足で歩行が困難。門から玄関までのアプローチに敷設された飛び石でつまずきやすく、歩きにくさから外出に消極的になり生活の意欲も低下。ケアマネジャーに相談して、飛び石を取り除き、コンクリート舗装して平らにする段差解消の工事を行った。すり足でもなんとか歩けるようになり、デイサービスにも積極的に通うようになった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
あらしろ・かずみ/(一社)沖縄県介護支援専門員協会副会長、大名居宅介護支援事業所管理者、主任介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1859号・2021年8月20日紙面から掲載