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2021年7月16日更新

[沖縄]生前整理の必要性|暮らしが変わるホームステージング[9]

死への準備として、残される人を思いながら行う生前整理。遺品整理の現場から見える生前整理の必要性を紹介する。スムーズな整理のためには、良好な親子関係を築いておくことも欠かせない。
文/杉之原冨士子 (一般社団法人日本ホームステージング協会 代表理事)

残される人を思って整理

散乱した状況に後悔

私が訪れたある現場は、両親が亡くなって、その息子さんが相続した家。足の踏み場がないほど散乱し、台所にはネズミが死んでいて、寝室は不要な家具が積み上げられて「どこで寝ていたんだろう」と思うほどでした。

息子さんは「もう少し早く来ていればよかった」と、疎遠になってしまった実家の状況に後悔していました。

実は、散乱状況の違いはあるものの、荷物が多く片付けには相当の苦労を要する現場がたくさんあります。

片付け方をメモに残す

そんな中、忘れられない遺品整理の現場がありました。

そこは前述の現場とは全く逆の状況。つまり、部屋は整理されており、何の問題もなく片付けが終了したのです。

もともとご夫婦でお住まいになっていたのですが、数年前に奥さまが他界。その後、ご主人がお亡くなりになりました。ご夫婦にお子さんはいらっしゃらなかったようで、めいの方が立ち会いをしてくれました。

ご主人は自分の余命が長くないことをご存じだったようで、部屋の処分についてめいの方と話をしていました。

賃貸だったこともあり、部屋に残しておかなければいけない設備や取扱説明書などはメモに残し、誰でも分かるようにもしてありました。

先に他界した奥さまの遺品はご主人が整理したようで、奥さまが本当に大事にしていた着物が少し残されていただけでした。一方で、ご主人の衣類は、スーツとシャツ全てがハンガーにつるされ、胸ポケットには防虫剤が入っていました。

私の経験では、男性のスーツのポケットには、ハンカチやティッシュ、小銭などがよく入っています。女性はバッグの中にお金が入ったお財布やハンカチなどがそのまま残っていることがあります。遺品整理の現場では、忘れ去られたバッグや棚、タンス、ベッド周りなどプライベートな場所からお金が出てくることが多いようです。

しかし、このご主人の家では、お金どころか小銭も全く出てきませんでした。生前整理をご自分ですっかり終えられた部屋だったのです。

この方は、めいの方が最後に立ち会うことが分かっていたからこそ、誰もが迷わずできる方法を考え、整理したのだと思います。

 一般的な遺品整理の現場 

衣類や本、電化製品など、種類に関係なくいろいろな物が積まれている。
これが崩れることで、一気に足の踏み場がなくなるほど部屋が散乱してしまう。


  遺品整理後の部屋  

何もない状態にすることで、新たな活用方法につながる。
特に賃貸では、早く部屋を空けるためにスピード感が大切になる。


親子関係を良好に

死を起点に考える生前整理は、後に残される人を思いながら整理していく作業です。

メモを残すなど整理しやすくしておくと、亡くなった後の部屋を活用しやすくなります。賃貸であれば、より早急な作業が求められるでしょう。

また、その前段階として、自宅で安心して住み続けることを目的に行う「未来への整理」があります。そのため、まずは床上のものを無くし、手元にいつも使う物がある、という状態を目指しましょう。

整理する際、子に手伝ってもらう人もいると思いますが、もめてしまうことも。これは片付ける人と所有者が異なることから起きるものです。そうならないよう、普段から親と子が良い関係であることが重要になってきます。 

  生前整理と未来への整理  

厚生労働省の調査によると、40歳以上の7割以上が「年を取ってからも自宅で生活したい」と答えている。そのためには、老後も自宅で長く安心して暮らすために片付ける「未来への整理」が必要。そしてその先に、財産・デジタル遺産の整理、遺言書、エンディングノートの記入など残された人を思う整理、つまり死への準備のための片付け「生前整理」がある。

  生前整理(未来への整理)でまず取り組むこと  

◆床の上に置かれているものを片付ける。あくまでも親が残すかどうかを判断する。必要なら移動する。
◆よく使う物が上の棚に置いてある場合は、台に乗らなくても取れる場所に移動する。
◆手に届く場所にあるのは、いつも使っているものだけにする。


  もめない片付けともめる片付け  


①は片付ける人も所有者も親。自分で片付ければもめることはない。
②も同様にどちらも子なのでもめない。しかし、③は片付ける人と
所有者が異なるため、争いが起きやすい。


デジタル遺産に注意

最近は、高齢者もパソコンやスマートフォンを使うようになり、デジタル遺産といわれるインターネット上の個人情報や財産も増えてきました。しかし、パスワードが分からず、パソコンが開けないという例もあります。

子から親に「パスワードを教えて」とは聞きずらいと思いますので、親から子にパスワードや加入しているインターネットサービスなどについてお話しするのが一番いいと思います。

親からその話が出ない場合は、家族写真を見て昔話に花が咲いた時などに、「パソコンの中にも写真を取り込んでいるの?」という形でパソコンやインターネットの話をして、パスワードを教えてもらえるように促すとスムーズに話が進むのではないでしょうか。

いずれにせよ、良好な親子の関係性が必須となります。

遺品整理の現場では、相続したお子さん同士が対立したり、ゴミ屋敷のようになった実家で途方に暮れていたりすることも少なくありません。

ご自分が亡くなった後にこのようになる事は、本意ではないはずです。ぜひ、今から生前整理を少しずつ始めてみてはいかがでしょうか?

執筆者


すぎのはら・ふじこ/(一社)日本ホームステージング協会代表理事。運送会社に就職し、事務から営業、現場での梱包開梱まで担当。2011年に独立し、お片づけ・梱包会社「㈱サマンサネット」を設立。多くの現場経験からホームステージングの必要性を感じ、2013年、同協会を設立。


◆ホームステージングとは
片付けや掃除、インテリアなどの専門知識・技術を活用しながら、家を整えることで、暮らしの質や家の価値を高めること。(一社)日本ホームステージング協会では、ホームステージングの普及とその担い手であるホームステージャーの育成に力を入れている。詳しくは同協会ホームページ(https://www.homestaging.or.jp/

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1854号・2021年7月15日紙面から掲載

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