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2021年1月29日更新

【ひと】宮古島の景観をつくる|長崎大作さん 長崎設計研究所 一級建築士

40歳以下の建築士らによる設計コンペ「ティーダフラッグス2020」(主催・沖縄県)で、金賞を受賞した長崎大作さん(39)。生まれ育った宮古島に事務所を構え、「宮古島に根差した建築と活動で、良い景観をつくりたい」と話す。

地域に根差す土着的な建築


長崎 大作さん
長崎設計研究所 一級建築士


-建築士を志すきっかけは?
小学生のとき、テレビで「落水荘」「葉山の御用邸」「伊根の舟屋」など、海や水とつながる建築を見たこと。「家から釣りができたり、ボートを出せるのは楽しそう」と憧れ、自分も造ってみたいと思うようになりました。

今では生まれ育った宮古島を中心に、住宅からこども園、ホテル、キャンプ場まで、幅広く設計を手掛けています。

-心掛けていることは?
地域に根差すこと。建物を造ると、その地域の人や環境、景観などに必ず影響します。一方で、環境に配慮した建築はどんな時代でも色あせない。そのため、地面から湧き出てきたような、土着的な建築を心がけています。

今思うと、島尻という小さな集落で、パーントゥをはじめ、御嶽(うたき)や自然への畏敬の念を感じて育ったのも、考えの背景にあるかもしれません。

現在は、その島尻で廃校になった小学校を、デイサービスや宿泊施設などとして再利用するプロジェクトに参加。共同売店の運営に関わって土産品を開発したり食堂をオープンするなど、地域活性化にも取り組んでいます。

また、謙虚で誠実、前向きに、建築に関わる全ての人が幸せになれるよう意識。工事費が高い宮古島でもコストを抑えられないか、施工会社を交じえながら建物の構造についても検討を進めています。

-今後の目標は?
宮古島の美しい景観づくりに寄与したい。そのためには島外の仕事などで、外からの視点を養うことも大切です。ティーダフラッグス=下参照=への応募もその一つ。最終的に、自分の携わった建築で、地域に良い影響を与えられるといいですね。
 


サンゴをモデルに金賞
ティーダフラッグス2020


昨年12月、40歳以下の建築士を対象とした設計競技「ティーダフラッグス2020」で、長崎さんと松田裕介さん(松田設計事務所)による「MOTOBU Coral Roof」=写真=が金賞を受賞した。

今回の課題は「本部港の屋根付き利便施設」。それに対して2人は、テーブルサンゴをモチーフにした、コンクリート造のシンプルな大屋根を提案した。外周部に柱がないため、コンテナを置いたり、イベントを開いたりと多用途に使えるのが特徴だ。

長崎さんは「コンクリートの原料となる本部産の石灰岩も、太古の昔はサンゴだった。それが今の技術で再びサンゴの形によみがえる。そのことを地域の子どもたちに伝えながら、建物にも関心を持ってもらえたらうれしい」と話した。


長崎さんと松田さんによる「MOTOBU Coral Roof」のパース


ながさき・だいさく/1981年、宮古島市出身。県外で建築を学んだ後、沖縄に戻り、県内2カ所の設計事務所で経験を積む。2015年、宮古島市で長崎設計研究所を開設。一級建築士。生まれ育った同市島尻集落の地域活性化にも取り組む。
◆長崎設計研究所 宮古島市平良東仲宗根633-3  
 電話0980・79・0615

取材/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1830号・2021年1月29日紙面から掲載

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「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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