インテリア
2021年1月15日更新
三つの整理で仲良く片付け|暮らしが変わるホームステージング[3]
定年前後、今後の暮らしに備えて、家の中の棚卸しが必要になる。生前整理をする「シニアホームステージング」だ。親の思いを尊重した三つの整理で、親子が仲良く片付けられるようになる。
文/野口幸恵(一般社団法人日本ホームステージング協会理事)
親子で争わない生前整理
ケンカになることも
例年、お正月やお盆休み明けは、「床にも、階段にも物があふれ、つまずいて転んだら大変。台所も物だらけで火災にでもなったらどうしよう」といった、実家の片付けの相談が増える時期になります。
久しぶりに帰省したら、きれい好きだった母が全く整理できず、家の中が大変なことになっているのを見て、お子さんとして心配になるのはもっともなことです。
親子で一緒に片付けようとしても、親自身が気に入って買ったもの、思い出がつまったものを捨てるのは簡単ではありません。結局、「もう口出ししないで! 帰ってこないで!」のケンカになってしまうこともよくあります。
片付けのプロでもこの生前整理は難敵。片付けたいと思っていない人の物を片付けさせようとしているのですから。
そしてもう一つ注意を払いたいのが認知症です。認知症の人が片付けをした場合、明らかに散らかっているのに本人はきちんと片付けているつもりで、散らかっていることに気が付かないケースもあります。実家が最近片付いていないと思ったら、認知症や軽度認知障害の可能性もあると心に留めておいてください。
写真のベストアルバム
親子で円満に片付けるなら、三つの整理で進めましょう。㈰心の整理㈪モノの整理㈫情報の整理—の三つです。
まず、心の整理では、親のアイデンティティーともいえる写真を整理していきます。
帰郷した際にアルバムをめくって「こんなことがあったね」と話しながら、膨大な写真からベストアルバムを作り、楽しい時間を過ごしてください。
「景色だけならいらない」「色あせているのは捨てる」などを決めれば、仕分けしやすくなります。スキャンして、データを家族で共有するのも手です。私はLINEの家族グループのアルバムに入れて、時々見返したりしています。
写真の整理をすることで、親自身が残しておきたい思い出のものが明確になり、本当に大切にしたいものが何か分かるようになります。
親子で円満に片付けるための「三つの整理」
① 心の整理
人生を写してきた写真を整理することで、親が本当に大切にしたいことをはっきりさせていく。
② モノの整理
たくさんのモノの「要・不要」を仕分けるため、「毎日使っている」「時々使っている」「使っていないが取っておく」「捨てる」の四つに分類。使っていなくても「捨てない」という選択肢を設けることで、安心して仕分けられるようになる。
③ 情報の整理
財産をはじめ、これまでの思い出、やりたいこと、家系図など、親自身に関する情報をノートにまとめる。今後の生き方のヒントにしつつ、子に伝えたいことも整理できる。
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Before After物があふれ、転倒が懸念された台所を整理した例
今後の生き方を考えるやりたいことリスト(記入例)
写真や情報を整理して人生を振り返ると、やり残したことが見えてくる。それをやりたいこととしてリスト化することで、今後の生き方を考えるきっかけになる。
情報の整理をサポートする「ディズニーマイストーリーノート」(日本ホームステージング協会監修)にも、やりたいことを書き込む表がある
「ディズニーマイストーリーノート」内にある、家系図のページ。子に伝えたいことなどを整理しやすくなる執筆者
のぐち・ゆきえ/一般社団法人日本ホームステージング協会理事。これまでに3500件以上の引っ越しと片付けを行う、片付けに悩む人の救世主。建設会社・リフォーム会社・不動産会社等でのお片づけセミナー講師多数務めるほか、TV番組にも出演。著書に『実家と空き家の片づけ方』などがある。
◆ホームステージングとは
片付けや掃除、インテリアなどの専門知識・技術を活用しながら、家を整えることで、暮らしの質や家の価値を高めること。(一社)日本ホームステージング協会では、ホームステージングの普及とその担い手であるホームステージャーの育成に力を入れている。詳しくは同協会ホームページ(https://www.homestaging.or.jp/)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1828号・2021年1月15日紙面から掲載