庭・garden
2020年10月2日更新
【プロがつくる庭】石樋や水琴窟が涼運ぶ 和風・洋風二つの個人庭
vol.9 このコーナーでは、プロが作った庭を紹介する。今回は石樋や水琴窟のある二つの庭を紹介する
Cさん宅の庭(糸満市)
夫婦表す二つのせせらぎ
Cさん宅の主庭。約4坪ほどと、さほど広い庭ではないが、密集した緑とその足元から流れ出た石樋、そして白砂利で模す平らな大海のコントラストが奥行きを生む。石樋から流れ出た水は砂利部に吸い込まれ、循環してまた流れ出てくる
優しい水音に癒やされ
「ポロロン」「キーン」。地中に埋めたつぼへ水が滴り、琴のような味わい深い音色を響かせる。それが「水琴窟」だ。大きな音ではない。静かに耳をそばだてることで、徐々に心が安らいでいく。
糸満市のCさん宅の庭には、水琴窟や水の流れる御影石製の石樋がある。水琴窟があるのは、主庭から少し離れた場所。
水琴窟。手水鉢の地下につぼが埋め込まれていて、あふれ出た水が「ポロロン」と優しい音を奏でる
手水鉢を低く据えた「つくばい」に、少量ずつ水を流す。すると、鉢からじわじわと水があふれ〝琴の音〟を響かせる。「外に出るのもうんざりするほど暑い沖縄。だからこそ庭には水場が必要だと思う」と庭師は語る。
主庭は、クロキの足元から二つの石樋が伸びる。庭師は「夫婦を表している。Cさん家族がいつまでも仲良く幸せであるよう、願いを込めた」と話す。薄暗い緑の中から湧き出た水はサラサラと爽やかな音をたてて石樋を流れ、砂利で摸す大海に合流する。短い距離ではあるが、目と耳へと涼を運ぶ。
Kさん宅の庭(糸満市)
モダンな石使いで洋風に
Kさん宅の主庭。手前の石樋がある部分は最近改庭した。その隣のれんが敷きの空間に合わせ、オブジェのような洋風な石樋にしたそう
オブジェのような石樋
糸満市のKさん宅にも水琴窟と石樋があるが、こちらは洋風。住居の外観デザインや施主の好みを反映した。
石樋は先のCさん宅と同じく御影石だが、単に真っすぐ突き出すのではなく、モダンな三角形。周囲にも多彩な形の御影石を積み重ねており、まるでオブジェのよう。さらに白地の深皿で水を受け止める。手掛けた庭師は、「石樋のある部分は最近、改庭した。昔からあるれんが敷きのアンティークな空間との調和も考え、こういう造りにした」と語る。和風庭園に欠かせないクロキやタマリュウなども息づくが、モダンな石使いで和と洋を調和させている。
先の深皿の下が水琴窟になっており、優しい音を響かせる。「地中に埋めるつぼの材質や大きさ、地質によって少しずつ音が変わってくる。同じ水音は一つとして無いのが水琴窟の面白いところ」
もう一つの水場は水草であるホテイアオイが葉を広げる鉢。なみなみと水が入った鉢が地中に埋まっている。
和風庭園の水場と言えば滝だが、それが無くとも涼を感じられる二つの庭。滝の庭よりも優しい印象を醸していた。
門をくぐると、水草「ホテイアオイ」が地中に埋まった水鉢の中で葉を広げる=写真中央
編集/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1813号・2020年10月2日紙面から掲載
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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。