家づくり
2025年6月6日更新
見積もり・工事契約・地鎮祭・そして着工へ|頭を悩ませる金額調整[Aさんの家づくり 完成までの道のり③]
マイホームの建築は人生の一大事業。住まいづくりについて皆さんのヒントになるように、建築士の具志好規さんがAさん宅完成までの流れを紹介します。(写真・文/具志好規)

見積もり・工事契約・地鎮祭・そして着工へ
頭を悩ませる金額調整
私たちの仕事は設計図面の作成、手続きの代行、図面通りに施工出来ているか確認する設計監理だけではない。より良い建物をより安く建てるため、提出された見積書の精査や金額調整もまた重要な仕事だ。設計費用は事務所によりさまざまだが、金額を抑えすぎると細かな設計や確認、品質管理に時間と手間をかけることが難しくなってしまう。
見積もりの図面リスト。仕上げ表、平面・立面・断面図や構造図・設備図など。今回の図面は56枚
完成した見積図を数社の建設会社へ渡し、質疑応答をしながら2週間ほどで見積書を作成してもらったが、各社から提出された書類を見て衝撃を受けた。昨今の建設コストの高騰もあり、予算が大きくオーバーしていた。

建築会社から受け取った見積書。最終金額決定まで5回ほど金額の調整を行った
同じ図面であっても各社の見積もり金額はさまざまで、私たちは見積書から工種別の比較表を作り、単価は妥当か、数量が合っているか、項目に抜けや重複がないかを設計者の立場で細かく確認し、Aさんとも相談しながら仕上げ材料や機器類の変更・取りやめなどの金額調整を行った。

見積比較表。建設会社ごと、工種ごとの一覧を作り、比較しながら内容を精査する
将来を見据えて
今回の建物は勾配屋根の平屋で、室内の高い天井とパティオ(中庭)の天井が連続した開放的な空間が一番のポイントだ。室内が暑くならないよう屋根は外断熱とし、耐久性を考え鋼板ぶきとしたが、「予算内に収めるため鋼板屋根を無くして防水塗装にしてはどうか」という話も上がった。耐久性と断熱性能、防水塗装のメンテナンス頻度とコストを比較し、「初期費用はかかるが将来の修繕費用を抑えた方が良い」と鋼板屋根は残すことになった。また、耐久性を考えチークの床材やコンクリート面の塗装は残し、玄関前のヒンプンや植栽は施主施工の別途工事とした。建設費用の調整や仕様の変更を行い、なんとか金額に折り合いをつけた。箱のような建物なら金額も安く収まるが、Aさんの夢の詰まった住宅を実現するため、私たちも力を尽くした。

左:鋼板ぶき 耐久性があり、外断熱ができる 右:塗装防水 初期コストは安いがメンテナンスが必要
工事を最終的に受注した日大建築の宮國大佑社長は「やりがいのある面白そうな建物だ」と、何度も金額調整の相談に乗ってくれた。
最終の見積書と修正した図面、工事工程表を確認し、支払い条件を決め、工事契約が結ばれた。地鎮祭の日取りも決定し、敷地の草刈り、敷地と建物の位置出しを行って、着工の日を迎えた。Aさん家族・親族も集まり、地鎮祭が無事とり行われた。模型を前に心を躍らせている様子だった。

位置出し。敷地境界と建物位置を測量して確認する作業。境界と建物の外壁に沿って木の杭に糸が張ってある

地鎮祭での鍬入れの様子。施主・設計者・施工者の3者で協力して工事を進めようと親ぼくを深めた
ついに工事が始まる。施主・設計者・施工者の三人四脚で次のステップに踏み出した。
執筆者プロフィル

ぐし・よしのり/
1981年、那覇市生まれ。沖縄職業能力大学校住居環境科卒、(有)チーム・ドリーム勤務。住宅・商業施設・教会や公共施設など幅広く設計に携わっている。
www.dream-archi.com/
毎週金曜発行・週刊タイムス住宅新聞
第2057号・2025年06月06日紙面から掲載