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2020年4月24日更新

マンション寿命を左右「修繕積立金」について|教えて!マンション管理士さんvol.9

マンション管理組合が主体となって行う重要な仕事の一つに建物共用部分の維持管理があります。 建物共用部分の維持管理には、各種法定点検や日常管理の際に行われる軽微な修繕工事と、外壁塗装防水工事や給排水管・エレベーターの更新など計画的に行う大規模修繕工事があります。
今回は、これらの維持管理に係る注意点を説明します。

修繕積立金を蓄える
現在ほとんどの分譲マンションでは、建物共用部分の維持管理に必要な修繕積立金を、管理費とは区分して管理組合に納めています。修繕積立金は、維持管理の中でも特に計画的な大規模修繕工事に要する多額の資金をあらかじめ蓄えておくものです。しかし、多くのマンションでこの資金が不足している実情があります。
修繕積立金を蓄える方法には、「段階増額積立方式」と「均等積立方式」があります。

「段階増額積立方式」は、当初の徴収額を少なくし、将来段階的に増額していく方法ですが、販売業者は販売に有利だという理由から当初の修繕積立金をできるだけ安く設定しがちですし、購入者(組合員)も安いに越したことはないと考えがちです。増額する際に組合員の理解を得ることが難しい場合もあり、注意が必要です。

これに対して、「均等積立方式」は、将来にわたり一定額を徴収する方法で安定的な積み立てができる特徴があります。しかしながら、多額の資金を管理するため資金の管理には十分注意する必要があり、また、均等積立方式を採用した場合であっても長期修繕計画の見直しによって増額が必要になる場合もあります。

段階増額積立方式

①特徴/修繕資金需要に応じて積立金を徴収する方式であり、当初の負担額は小さく、多額の資金の管理の必要性が均等積立方式と比べて低い。
②留意点/将来の負担増を前提としており、計画通りに増額しようとする際に区分所有者間の合意形成ができず、修繕積立金が不足する場合がある。
③イメージ/上図参照(修繕積立基金)を併用した場合
築後30年間に必要な修繕工事費の戸当たりの総額522万円について、購入時に修繕積立基金を36万円徴収し、初年度の修繕積立金を月額6000円(年間7万2000円)とし、5年置きに月額3000円ずつ値上げして、26~30年目には月額2万1000円(年額25万2000円)まで増額して確保する場合を想定

積立金額の目安
下図は、専用床面積当たりの、毎月の修繕積立金額の目安(算定)です。修繕積立金額の目安として15階未満、5千平方メートル未満で平均値218円(平方メートル/月)です。
これをもとに、例えば66平方メートル(約20坪)の物件ならば1万4388円/月です。ただし、建物の形状や規模、設備の仕様などさまざまな要因で変動することから、現在の修繕積立金額がこの幅に収まっていないからといって不適切であるとは限りません。
経年劣化による大規模修繕工事の必要性が差し迫っている状況で修繕積立金が不足している場合、組合員から一時金を徴収したり、銀行などから借り入れたり、大幅な修繕積立金の増額といった事態に陥ることがあります。このような状況でも組合員の合意がなかなか得られず工事が先延ばしになることがあります。
適切な管理が行われないまま老朽化したマンションは、資産価値を損なうばかりではなく、社会問題化しています。管理組合の運営次第で50年の建物寿命が100年にも、またその逆にもなります。管理組合として、今後、建物本体や各設備の耐用年数からどのような工事が必要となるのかを把握するとともに早い段階での資金計画(準備)を組合員の共通認識としておくことが何よりも大切です。

均等積立方式

①特徴/将来にわたり、定額負担として設定するため、将来の増額を組み込んでおらず、安定的な修繕積立金の積み立てができる。
②留意点/修繕資金需要に関係なく、均等額の積立金を徴収するため、段階増額積立方式に比べ、多額の資金を管理する状況が生じる。均等積立方式であっても、その後の長期修繕計画の見直しにより、増額が必要になる場合もある。
③イメージ/上図参照
築後30年間に必要な修繕工事費の戸当たりの総額522万円について、修繕積立金を、30年間均等に月額1万4500円(年額17万4000円)積み立てて確保する場合を想定
(専有床面積当たりの修繕積立金の額の表入れる)

専有床面積当たりの修繕積立金の額​



※図表は国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン(平成23年4月)」より引用
執筆/(一社)沖縄県マンション管理士会
会長・矢口哲男、会員・上原真二

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1790号・2020年4月24日紙面から掲載

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