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2019年8月23日更新

人件費抑える工法、住み継ぐ視点も|気になるコト調べます![53]

住宅着工統計(国土交通省発表)から県内の新設住宅のうち持ち家一戸建ての推移を見ると、2018年のRC造の工事費予定額は7年前に比べて1戸当たり約520万円増、坪当たりでは約18万円増となっていることが分かった。その他の構造も予定額が軒並み増加する中、戸数では木造が増加、鉄筋コンクリート造が減少している。その背景や実態について関係者らに聞いた。

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RC造1戸当たりの工事費予定額 7年で約520万円増

持ち家一戸建て住宅の工事費予定額(以下、予定額)を見ると、データが公開されている2011年は1戸当たり2148万円、1平方メートル当たり17.6万円、坪当たりに換算すると58.2万円だった。一方で、18年は2547万円/戸(22.3万円/㎡、73.7万円/坪)。11年と比較すると、約400万円/戸、坪当たりでは約15.5万円増加している。予定額の増加に伴い、持ち家一戸建ての新設戸数は減少している=グラフ3。

構造別に見るとどの構造も軒並み予定額が増加している=グラフ1。1戸当たり予定額を11年と18年で比較した際、上げ幅が最も大きかったのは鉄筋コンクリート造(RC造)で、約520万円増の2954万円。次いでコンクリートブロック造(CB造)が約490万円増で1983万円、木造が約477万円増で2226万円、鉄骨造が約366万円増で2663万円となっている。坪当たりの予定額では、RC造が約18.2万円増、木造が約16.9万円増と、特に上げ幅が大きくなっている。

木造に勢い 全体の4分の1に
戸数の推移を見ると、RC造や鉄骨造は減少、木造は増加、CB造は横ばいの傾向が見られる=グラフ2の棒グラフ。予定額が増加する一方で戸数が増加している木造は、18年(504戸)には全体の約25%を占めた。「木造住宅は勢いがある」と県木造住宅協同組合事務局長の村山創さん。「台風やシロアリに耐えうるという認識が深まってきたと思われ、需要が高まっている。工期が比較的短くて人件費を抑えられ、新たに手掛けようとする事業者や職人も増えてきた」。

県内で主流のRC造はこれまで総戸数の5割以上を占めていたが、18年(956戸)は全体の約47%にとどまった。16年までRC造に次ぐ戸数割合を占めていたCB造は、戸数は微減だが、全体に占める割合は20%前後を維持している。住宅設計を手掛ける義空間設計工房の伊良波朝義さんとアトリエ・ネロの根路銘安史さんは「住宅設計の依頼は減ってきた」と話す。

伊良波さんは「北京オリンピック以降、鉄骨資材が高騰。資材費よりも深刻なのは人手不足による人件費の高騰」と話す。CB造でも壁や角継ぎに型枠職人不要の「役物コンクリートブロック」を使う工法に取り組む伊良波さんは、「人件費を抑える工法の工夫も見えてきた」という。

根路銘さんは「建物の長寿命化で長期的視点を持つこと」とアドバイス。コンクリートに高炉スラグ(混和材)を加えるなどしてRC造の長寿命化に取り組む根路銘さん。「長寿命化で資産価値が上がると考えられ、エネルギー問題などの社会問題の解決にもつながる。建てた世代だけでなく次の世代が住み継ぐという長期的な視点も大切になってくると思う」と話した。

グラフ1.県内の新設持ち家一戸建て住宅の構造別工事費予定額の推移(1戸、1㎡当たり)



グラフ2.構造別戸数と1戸当たり床面積の推移




グラフ3.全構造で見る戸数と1戸当たりの工事費予定額の推移



住宅着工統計年次集計データを基に作成

・住宅着工統計:各都道府県に提出された建築工事届を基に国交省が統計でまとめている。工事費予定額は届出された額(消費税は含まない)で、実額とは多少異なる。
・坪当たり予定額:1坪=約3.31㎡。㎡当たり予定額×3.31で算出した
・構造別:同統計では木造、RC造、鉄骨造、CB造のほかに、「鉄骨鉄筋コンクリート造」「その他」があるが、どちらの戸数とも全体に占める割合が1%未満のため割愛した。


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取材/川本莉菜子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1755号・2019年8月23日紙面から掲載

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この記事のキュレーター

スタッフ
東江菜穂

これまでに書いた記事:350

編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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