沖縄建築賞
2018年9月28日更新
From沖縄建築賞[3]
県内の優れた建造物・建築士を表彰する「沖縄建築賞」(主催・同実行委員会)。当連載では第4回の入賞作品の詳細を紹介する。今回はタイムス住宅新聞社賞を受賞した美濃祐央さん設計の「ウルマノイエ」と、新人賞を受賞した山口瞬太郎さん設計の「南風原の老人福祉施設」を取り上げる。
第4回(2018年)タイムス住宅新聞社賞
ウルマノイエ~コトとコトがつながるすまい~ 美濃祐央/一級建築士事務所mino archi-lab
開口に技あり つながりの家
開口部は景色の額となり、外とつながる重要な部分。美濃祐央さんが手掛けた戸建て住宅「ウルマノイエ~コトとコトがつながるすまい~」は、その設け方に審査員から「技あり!」と賞賛の声が上がった。
玄関を入ってすぐの場所にある土間空間のナカメーには、天井から壁にかけて縦スリットの窓がいくつも配されている。日中はいく筋もの光が差しこみ、夜は星空を切り取る。施主はここにハンモックを置き、「ずっと空を見ている。飽きないし、癒やされる」と語る。
前面道路と建物の間には、超薄肉コンクリート製の回転ルーバーを設けた=下写真。開閉の加減で沿道からの視線をコントロール。さらに、ヨットの帆のように家に風を呼び込むこともできる。
ナカメーや中庭を中心にした造りも、そこが各空間をつなぐパイプ的な役割を果たし、家族の気配を伝えていると好評を得て、タイムス住宅新聞社賞を受賞した。
①室内から回転ルーバーを見る。ルーバーは自在に開閉加減を調整でき、日射や通風のコントロール、プライバシーの確保に役立つ。外塀を省くことで地域への開放感も創出
②玄関を入ると土間空間の「ナカメー」がある。ちょっとした来客をもてなしたり、大人の癒やしの場、子どもの遊び場にもなる
③ナカメーを囲むようにLDKや和室が配されている
④廊下にスタディースペースを設けた。掃き出し窓の向こうには実家があり、孫の姿が見えるよう配慮
第4回(2018年)新人賞
南風原の老人福祉施設 山口瞬太郎/山口瞬太郎建築設計事務所
明るく開放的 外と交流促す
地域や家族との交流を促すことで、利用者が元気になる。「南風原の老人福祉施設」は、これまでの「暗く閉鎖的」な印象とは真逆の、「明るく開放的な、福祉施設らしくない施設」を目指し、山口瞬太郎さんが設計。40歳以下の建築士に与えられる新人賞に選ばれた。
その工夫の一つが1階。エントランスを入るとすぐに施設関係者以外も利用できるカフェがあり、暗くなりがちなフロア中央に光を届ける中庭、イスやテーブルが並ぶパブリックスペースが外庭へと続く。内と外をつないでいく造りにより、ホテルのような明るく開放的な空間を演出。地域住民や家族が訪れたくなる雰囲気となり、利用者と地域がつながりやすくなっている。
手に触れる家具や手すり、内装には、あたたかみのある木材を使用。利用者が集まるリビングのような場所には、みんなで作業しやすいようアイランド型のキッチンを設けるなど、「住まい」としての居心地のよさにも配慮されている。
建物の中央にある中庭。一般的に暗くなりがちな各フロアの中央部分に光を届けるだけでなく、上下階の様子が互いに分かる。中央奥に見えるのが下写真のカフェスペース
1階のカフェスペース。ホテルや商業施設の一角にあるようなオシャレな雰囲気で、外部からの利用者も多い
離れた場所から見た外観。山の上に建つ「南風原の老人福祉施設」は、黒い外壁により周囲の風景に溶け込んでいる
屋上のデッキテラス。空が広がる開放的な空間で、足湯=右手前=につかりながら会話を楽しんだり、のんびり過ごせる
ウルマノイエ~コトとコトがつながるすまい~ 美濃祐央/一級建築士事務所mino archi-lab
開口に技あり つながりの家
開口部は景色の額となり、外とつながる重要な部分。美濃祐央さんが手掛けた戸建て住宅「ウルマノイエ~コトとコトがつながるすまい~」は、その設け方に審査員から「技あり!」と賞賛の声が上がった。
玄関を入ってすぐの場所にある土間空間のナカメーには、天井から壁にかけて縦スリットの窓がいくつも配されている。日中はいく筋もの光が差しこみ、夜は星空を切り取る。施主はここにハンモックを置き、「ずっと空を見ている。飽きないし、癒やされる」と語る。
前面道路と建物の間には、超薄肉コンクリート製の回転ルーバーを設けた=下写真。開閉の加減で沿道からの視線をコントロール。さらに、ヨットの帆のように家に風を呼び込むこともできる。
ナカメーや中庭を中心にした造りも、そこが各空間をつなぐパイプ的な役割を果たし、家族の気配を伝えていると好評を得て、タイムス住宅新聞社賞を受賞した。
①室内から回転ルーバーを見る。ルーバーは自在に開閉加減を調整でき、日射や通風のコントロール、プライバシーの確保に役立つ。外塀を省くことで地域への開放感も創出
②玄関を入ると土間空間の「ナカメー」がある。ちょっとした来客をもてなしたり、大人の癒やしの場、子どもの遊び場にもなる
③ナカメーを囲むようにLDKや和室が配されている
④廊下にスタディースペースを設けた。掃き出し窓の向こうには実家があり、孫の姿が見えるよう配慮
第4回(2018年)新人賞
南風原の老人福祉施設 山口瞬太郎/山口瞬太郎建築設計事務所
明るく開放的 外と交流促す
地域や家族との交流を促すことで、利用者が元気になる。「南風原の老人福祉施設」は、これまでの「暗く閉鎖的」な印象とは真逆の、「明るく開放的な、福祉施設らしくない施設」を目指し、山口瞬太郎さんが設計。40歳以下の建築士に与えられる新人賞に選ばれた。
その工夫の一つが1階。エントランスを入るとすぐに施設関係者以外も利用できるカフェがあり、暗くなりがちなフロア中央に光を届ける中庭、イスやテーブルが並ぶパブリックスペースが外庭へと続く。内と外をつないでいく造りにより、ホテルのような明るく開放的な空間を演出。地域住民や家族が訪れたくなる雰囲気となり、利用者と地域がつながりやすくなっている。
手に触れる家具や手すり、内装には、あたたかみのある木材を使用。利用者が集まるリビングのような場所には、みんなで作業しやすいようアイランド型のキッチンを設けるなど、「住まい」としての居心地のよさにも配慮されている。
建物の中央にある中庭。一般的に暗くなりがちな各フロアの中央部分に光を届けるだけでなく、上下階の様子が互いに分かる。中央奥に見えるのが下写真のカフェスペース
1階のカフェスペース。ホテルや商業施設の一角にあるようなオシャレな雰囲気で、外部からの利用者も多い
離れた場所から見た外観。山の上に建つ「南風原の老人福祉施設」は、黒い外壁により周囲の風景に溶け込んでいる
屋上のデッキテラス。空が広がる開放的な空間で、足湯=右手前=につかりながら会話を楽しんだり、のんびり過ごせる