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2022年2月11日更新
[沖縄]満開だけじゃない!年中楽しむサクラ
沖縄県内のサクラは1月~2月初旬に満開になる。花見に出かけた人も多いだろう。しかし、サクラの見どころは満開だけじゃない!新緑や実の時季も楽しい。年中サクラを楽しむヒントを紹介する。
1月27日、本部町八重岳のヒカンザクラは満開だった。周辺の緑とピンク色、そして空の青とのコントラストが美しい
ヒカンザクラを堪能!
中城公園の所長で植物に詳しい比嘉正一さんは、「サクラの見ごろはまだまだ続く。僕は3月~5月の新緑も大好き。春になれば熟した実を食べ、種は苗づくりに使う。一年を通して、サクラを満喫しています」と話す。
名護城公園のヒカンザクラ。満開の木もチラホラあった。同公園は「2月中旬あたりまで、花が楽しめると思う」と比嘉さん(1月27日撮影)
ヒカンザクラは個性的
名護城公園内には、約3500本のヒカンザクラが植栽されている。1本1本じっくり観察すると、花の色が少しずつ違う。濃いピンクや白に近い花もある。さらに、満開の木の隣に2~3分咲きの木がある。同公園でサクラ観察会の講師を務める比嘉正一さんは「この多様性がヒカンザクラの魅力。本土のソメイヨシノと決定的に違う」と話す。
ソメイヨシノは接ぎ木で増えた、いわば〝クローン〟で、どの木も同じ遺伝子を持つ。気温などの条件がそろえば、一斉に咲いて散る。
一方、「ヒカンザクラの多くは種から発芽した実生個体です。ほら、足元に発芽しています」。地面を凝視すると、ポツポツと小さな双葉があった。「サクラの種は寒さに当たることで発芽する」ため、今が発芽シーズンだ。
「立ち入り禁止や植物の保護区域でなければ、1~2本くらい抜いても良いと思います。まずは小さなポットに植えて、1年ほど育てたら地植えすると成長が早い。5年くらいで花が咲くと思います」。手渡された小さな苗を持ち帰り、ワクワクしながら鉢に植えた。
新緑爽やか 実は野性的
2~4月には実が熟しはじめる。「食べると渋くて酸っぱい。フルーツのサクランボとは違う野性的な味です(笑)。この実を泡盛やリキュールに漬けると、きれいなピンク色になります。風味はあまり変わりません」。ピンクのお酒でゼリーやシャーベットを作ると、華やかだそう。
「3~5月の新緑は、爽やかで気持ち良い。青々とした葉が美しいし、木陰を作ってくれる。時期的にも暑過ぎず、散策に持ってこいです」
「サクラは花だけじゃない。ぜひ継続して観察してください」と話した。
花 1~2月 花見を楽しむ
1月27日、八重岳はヒカンザクラが満開だった毎年1月~2月初旬ごろ満開になるヒカンザクラ。今年は「例年より花数が多く、見応えがある」と比嘉さん。理由は昨年、台風の襲来が少なく花芽が充実したから。実際、1月27日の八重岳は花いっぱいだった。
「名護城公園は、2月中旬くらいなら、まだ満開の木もあって花見を楽しめると思う」と比嘉さん。中南部にもサクラスポットがいくつかある。比嘉さんは、「どのサクラスポットも、土・日は人が多い。平日の午前中に出掛けると人が少なく、じっくり観察できると思います」と話した。
1月27日の名護城公園。7~8分咲きの木が多かった。2月中旬ごろまでは花見が楽しめそうだ
芽 1~3月 実から発芽
実から発芽したヒカンザクラ。昨年の春ごろ落ちた実が、冬になると発芽する
1月~3月には、昨年落ちた実が発芽しはじめる。名護城公園のヒカンザクラの足元にも、小さな双葉が見られた。「大事に育てれば、5年くらいで花が咲くと思いますよ。ある程度大きくなったら、地植えすると成長が早くなる」と比嘉さん。雑草との見分けが難しいが、サクラの特徴であるギザギザした葉をたよりに探すと良いだろう。
持ち帰って鉢植えにした
抜いた苗を持ち帰って鉢植えにした。成長過程も楽しみだ
実 2~4月 食べると渋くて酸っぱい
真っ赤できれいなヒカンザクラの実。完熟すると赤黒くなる
2月~4月には実が熟し始める。最初は真っ赤できれいだが、完熟すると赤黒くなる。完熟とはいえ「食べると、渋くて酸っぱい。フルーツのサクランボとは違う野性的な味がします」と比嘉さん。「ヒカンザクラは個体差があるので、甘い実を付ける木もあるかも!と、数十年食べ続けていますが、まだ出合ったことがない(笑)」。
実を食べた後の種は、「苗作りに使っています。冷蔵庫に入れて発芽させ、ポットで育ています」。また、実をお酒に漬けるときれいなピンク色になるそうだ。
実を食べ終わった後の種は冷蔵庫に入れて寒さに当てると発芽する
葉 3~5月 爽やかな新緑
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1月末の名護城公園のサクラと(下)、新緑のころ(上)。同じ場所だが、景色が全然違う。3月~5月になると葉が生い茂り、視界いっぱいに緑が広がる
比嘉さんは「葉ザクラもすごく美しい。僕はこの時季のヒカンザクラも大好きなんですよ」と太鼓判を押す。新緑の季節は3~5月。まだ本格的な夏が来る前なので、暑過ぎず散策しやすい。「公園の散策路も、花の時期とはまったく違う景色になります。うっそうと茂る葉が、影を作ってくれるので歩きやすい」と比嘉さん。上写真のように、視界いっぱいに緑が広がる。緑に包まれて森林浴すれば、心も体もリフレッシュできるはず。
紅葉 8~9月 真夏は黄色く
夏場、黄色く紅葉したヒカンザクラ夏になると葉が黄色く色づき、落葉する。「ヒカンザクラは紅葉する8月~9月に花芽が作られるので、この時季までに台風の被害がなければ、翌年にたくさん花を咲かせます。花や新緑の時季に比べると地味な姿ですが、とても大切な過程です」
番外 見ごろは3月初旬 琉大にオオシマザクラ
琉大・風樹館前のオオシマザクラの交配種。通常、オオシマザクラの花は白いが、この花はピンク色のためヒカンザクラとの交配種と思われる(写真は2015年2月撮影)西原町の琉球大学にある「風樹館」の前には、ヒカンザクラとは少し違う、大ぶりの花を咲かせるサクラがある。同館の学芸員・佐々木健志さんは「オオシマザクラとヒカンザクラとの交配種だと思われます。花は大きくてオオシマザクラのようだけど、薄いピンク色でヒカンザクラの特徴も交じっています」と話す。花びらが大きくて「散るときも美しい。内地のサクラのようにハラハラと舞うんです」と説明する。
2月1日時点では、ほとんど咲いていなかった。「見ごろは3月の初め頃。寒さに当たると満開になりますが、今年の冬はそこまで寒くなかったので満開にはならないかもしれませんね」と佐々木さんは話した。
編集/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1884号・2022年2月11日紙面から掲載
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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。