手掛けるのは木造「風景ヒントに自由な発想」下地洋平さん[クロトン]|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

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2018年6月29日更新

手掛けるのは木造「風景ヒントに自由な発想」下地洋平さん[クロトン]

【建築士の素顔】7月1日は建築士の日。通常紙面では仕事のみにスポットがあたるが、建築士の素顔は?アイデアの素は? 掘り下げると、建築への熱い思いや豊かな個性が見えてきた。

下地洋平さん(40) クロトン


ジョギング中の下地さん。決まったコースもあるが、「おいしい料理をいろいろ食べたいように、良い建物や風景をいろいろ見たい」と、細い路地など通ったことのない道や出張先でも走る(写真はいずれも下地さん提供)


風景ヒントに自由な発想

先人の知恵を取り入れる

午前6時、「タッタッタッタッ…」と軽やかな足音が目覚めたばかりの静かな町を通り抜ける。流れる景色を眺めながら、下地洋平さんの頭の中ではアイデアが生まれ、少しずつまとまっていく。
「走っているときに目に映るいろいろな風景が、刺激になり、ヒントになる。住宅の形も一軒一軒違うが、それぞれ成り立っていて、『こうじゃなきゃいけない』という縛りもないように感じる」
後から考えることもあるため、ジョギング中に出合った「これは」と感じる風景はスマートフォンで写真に収める。その中の1枚、「海岸沿いのトゲトゲした岩」=右写真=を見ながら、「自然の風景を建築としてつくる場合にどうしたらいいか思い描いたりすることで、自由な発想につながる」。
例えば公園や森の中では、ぐにゃぐにゃに曲がり、寄せ合い、寄生する木々を見て、「台風に耐えるため、どっしりしている。建物も、重心を低くした方が沖縄の気候に合うのではないか」と考える。
もちろん先人の知恵も参考にする。伝統的な沖縄の木造住宅を代表する中村家住宅には、角ばった柱もあれば、角が面取りされている柱もあり、太さもさまざま。「全部同じだと、自然ではなく違和感。微妙なゆらぎが心地よさを生む」ことから、自身の設計でも部材の太さなどを変える。



柱の太さをそろえていないのは心地良さにつながる「ゆらぎ」を出すため。梁にかもいの役割も持たせるという発想で、部材にかかるコストも抑えた


木造100棟建て風景復興

木造住宅の設計に力を入れる下地さん。きっかけは学生時代に通った大阪の設計事務所だった。古い民家の修復などを学んでいるうちに、繊細な技に魅了された。沖縄に帰ってきてからも木造を研究し続け、自力で民家を再生した経験もある。
「軽くて強い木造は、土地や空間を有効活用できる。住む人自身によるDIYで生活空間をデザインしていきやすく、赤瓦の生産地も近いので台風などの被害を受けても修理しやすい。戦争がなければ木造の瓦屋もたくさん残っていたはず」
その風景を取り戻すとともに、「現代沖縄における木造のスタンダードをつくりたい」と話す下地さん。そのために掲げる「赤瓦屋根の木造住宅を100棟手掛ける」という目標に向かい、今日も駆けていく。



下地さんがジョギング中に撮った写真。上写真を建築でどう表すか考えるなどして、自由な発想力を培う。


下地さんがジョギング中に撮った写真。木の枝が上に向かって伸びているのを見ると、「梁もその方が自然なのでは?」と思うことも


下地洋平(しもじ・ようへい)
1977年、浦添市出身。近畿職業能力開発大学校建築施工システム技術科修業。県内の設計事務所で勤務した後、04年に「設計屋」を創業。同年「クロトン」に改名し、12年に法人化。取締役に就任。木造と木造以外が半分ずつぐらいの割合で住宅設計などを手掛ける。二級建築士。

(株)クロトン
098-877-9610
http://croton.jp/


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編集・取材/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1695号・2018年6月29日紙面から掲載

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