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2023年2月17日更新

アンダルシア地方(コスタ・デル・ソルからロンダ)|リゾートの裏に素朴さ[スペインタイル紀行⑪]

文・写真/山内直幸
「何と美しい瞳だろう、眉の下のその瞳は私を見つめ、まばたきすらしない。魅惑のマラガの君、美しきひとよ」-アンダルシア地方の港町・マラガ女性の美しさを歌ったラ・マラゲーニャの一節だ。

アンダルシア地方(コスタ・デル・ソルからロンダ)
リゾートの裏に素朴さ

山の上にある小さな村、カサーレス。頂上に古代ローマ時代の砦(とりで)と古い教会が見える

世界屈指のリゾート

「何と美しい瞳だろう、眉の下のその瞳は私を見つめ、まばたきすらしない。魅惑のマラガの君、美しきひとよ」-アンダルシア地方の港町・マラガ女性の美しさを歌ったラ・マラゲーニャの一節だ。ここには黒髪に黒い瞳の美女が多く、情熱的なスペイン女性のイメージそのものだ。スペイン南部、地中海に面した風光明媚(ふうこうめいび)なリゾート地コスタ・デル・ソル(太陽の海岸)には世界中から多くの観光客が訪れる。 その空の玄関口が、天才画家ピカソが生まれた街・マラガである。この強い日差しと開放的な風土がピカソの作風にも影響したのだろうか。
 
◇      ◇      ◇

マラガからバスに乗り、ビルの合間にのぞく海岸とヤシの木々を眺めながら西に向かう。2時間ほどで山の中腹にあるミハス村に着いた。11月だというのに太陽がまぶしい。細い路地には2階建ての家々が連なり、下の階はカフェや土産店になっている。バルコニーにパラソルが広げられ、いかにも南ヨーロッパのリゾートらしい。白壁にかけられた花鉢が訪れる者を歓迎している。

路地裏に入ると人影はまばらだ。2階の窓から白髪のおばあちゃんがぼんやりと通りを見下ろしていた。観光地としてのにぎやかさと裏通りの素朴な生活を見ると、ふるさと・沖縄を思い出す。

展望台に着いた。水平線の彼方(かなた)、かすかにアフリカ大陸が見えた。「ピレネーを越えるとそこはアフリカだ」。スペインを指したナポレオンの言葉だ。かつてこの海を越え、さまざまな人々と異文化がやってきた。
 
スペイン南部・アンダルシア地方の断崖絶壁の町ロンダ。新市街と旧市街を結ぶヌエボ橋、橋から見える街の光景と丘陵は絶景
畑を越え崖を越えて

バスに乗りさらに西を目指す。途中、「美しい海」という意味のマルベーリャを通る。ヨットハーバーやビーチ、リゾートホテルが立ち並んだスペイン屈指の高級リゾート地だ。その華やかな風景を見送り、次の町・エステポーナでバスを降りた。ここから目的地のロンダまではバスがないので、タクシーをつかまえた。40過ぎでヒゲの濃い運転手にスーツケースを預けたが、大き過ぎてトランクが閉まらない。運転手は首を振ったが、僕は旅行に持ち歩いているロープを取り出しトランクのふたを縛りつけた。
「オッケー、レッツゴー」
途中、カサーレスという小さな村に寄った。その昔、異教徒から逃れるため荒涼とした丘陵の中、山の上に村ができた。今でも助け合うように白壁の家々が肩を寄せ合い人々が暮らしている。

タクシーはさらに山道を走り続ける。時にはオリーブ畑の中を、時には崖上の道を。行き交う車もなく、人影もない。断崖絶壁の街・ロンダは遠かった。赤い山肌に夕暮れが迫っていた。このままどこかに連れていかれるのではと不安になる。無事ロンダに着いた時には日も暮れていた。ふっかけられると思いつつ、運転手にいくらかと聞いた。彼は料金表を出して丁寧に説明してくれた。明朗会計である。疑ってごめんなさい、そして「グラシャス」

 
◇      ◇      ◇


深い渓谷の上につくられたロンダの街の歴史は紀元前から始まり、ローマ時代、イスラム時代、キリスト教時代と続いてきた。新市街と旧市街を結ぶヌエボ橋は、高さが100メートルあり見応えがある。旧知の沖縄の画家はこの景色に惚(ほ)れ込み、何度も訪れこの橋を描いている。スペイン最古の闘牛場もここロンダに現存している。闘牛場前にある小さなレストランで食したブルーベリーソースのフォアグラは安くて絶品だった。


山内直幸
執筆者
やまうち・なおゆき/沖縄市出身。米国留学より帰国後、外資系の商社勤務を経て1995年、スペインタイル総代理店「(有)パンテックコーポレーション」を設立。趣味は釣りと音楽、1950年~60年代のジャズレコードの鑑賞、録音当時の力強く感動的な音をよみがえらせるべく追求。

㈲パンテックコーポレーション
宜野湾市大山6-45-10  ☎098-890-5567

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1937号・2023年2月17
日紙面から掲載

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