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2015年4月10日更新

第1回沖縄建築賞|地域に開く建築 多彩な提案期待

県建築士会や県建築士事務所協会、日本建築家協会沖縄支部とタイムス住宅新聞社は、5月末までに、第1回沖縄建築賞(主催・同賞実行委員会)を決定する。沖縄の気候風土を生かした建築を選び、新人を発掘・育成するのが狙いだ。今回、審査委員長を務める古市徹雄氏(66)に沖縄建築への期待、賞の考えを聞いた。

審査委員長・古市徹雄氏に聞く

先人の知恵を現代に

同賞の審査委員長を務める東京在住の建築家・古市徹雄氏。自然と生きる住宅や集落を研究し、県内の建築家とも活発に交流する。「沖縄こそ、先人の知恵に学ぶ建築のヒントが詰まっている」と考えている。

―沖縄建築のどういった点に魅せられている?
人や自然に「開いている」ことだ。大学院生だった1973年、訪ねた伊良部島の佐良浜集落は、家に住む人と路地を歩く人が互いに目が届いていて、印象的だった。それが強い絆を生んでいるのを、住民との触れ合いで感じた。名護市庁舎の大胆に設けられたパーゴラ、建物全体の造形にも衝撃を受けた。
伝統的な沖縄の民家は、台風に耐えるために赤瓦を漆喰で固めた屋根、ふんだんな風を取り込むオープンな間取り、外気を冷やす影を生むアマハジなど、先人の知恵が詰まっている。地元の素材で造られてきたことも注目すべき点だ。

―建築に求められることは。
現代の建築は空調に頼りきり、地域に対しても閉じてしまっている。私のオフィスがある東京都新宿区の都営戸山団地は入居者の高齢化、孤独死が深刻な問題になっている。
一つの建物を造り、維持していくにも、膨大なエネルギーや資源を費やす。これからの建築は、人と人をつなぎ、自然と共生していける術を模索する必要がある。
先人たちが積み重ねた建築の英知を現代にどう生かすか。賞では、その点を踏まえた出展を期待したい。特に次世代を担う若者は注目してほしい。
現在、日本建築家協会(JIA)を通じて東南アジアの建築家と交流しているが、彼らの沖縄に対する関心は高い。インドネシアでは、アマハジのような深い軒で影をつくる手法が見られる。東南アジアと気候が似た沖縄だからこそ、これらの国々にできる建築の提案は多いと考える。

―賞に期待することは。
一般の方々には、建築が生活に身近であることを、賞を通して気付いてもらえると、うれしい。建築への関心が高まれば、建築士にとっても励みになるし、沖縄ならではの住宅、景観をつくることにつながると思う。

ふるいち・てつお 1948年、福島県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科、同大大学院卒業。75年、丹下健三都市建築設計研究所入所。ヨーロッパ、中近東、アフリカ、東南アジア各地に滞在。88年、古市徹雄都市建築研究所設立。2001~13年、千葉工業大学専任教授。日本建築家協会沖縄支部顧問
 

若手が思う設計のだいご味

「施主の要望以上を形に」 久志さん 「広く長い目で社会見る」 蒲地さん


「設計の検討は大変だが、完成した時はうれしい」と話す久志さん(右)と蒲地さん(3月28日、うるま市の久友設計)

沖縄建築賞の目的の一つに、「若手の発掘や育成」がある。県内で活躍する40歳以下の若手建築士を紹介する。
スタジオ・ジャグ代表の久志直輝さん(39)もその一人。県内のコンペに精力的に応募し、業務歴は16年になる。
絵を描くのが好きな少年だった。「描いたものが形として残る建築に漠然と興味はあった」と振り返る。大学院卒業後、設計事務所勤務をへて、2007年には現事務所を設立。一戸建て住宅の設計、監理を中心に約40棟を手掛けてきた。
設計のだいご味を「予算や敷地に制約がある中で、いかに施主の要望以上の提案をするか」と答える。施主の反応を細かく見ながら真意を引き出す努力、模型やCGを使って設計の意図を分かりやすく伝える工夫が大切になる。「課題を乗り越えた分、建物として形になったときのやりがいは、とても大きい」と、目を細める。
キャリア8年の蒲地史子さん(32)は、うるま市の久友設計に勤務。公共施設や住宅を手掛ける。昨年末、県総合運動公園多目的広場に設ける競技運営棟の設計競技「ケンソーコンペ2014」で最優秀賞を受賞した。
建築を志したきっかけは、高校2年のときに雑誌で読んだ、清家清氏設計の「私の家」。戦後復興の中で建てられた住宅で、「建築は人を幸せにする」という考えに感銘を受けた。「文系でも建築はやれる。私がそう。興味を持った学生は、迷わず飛び込んでほしい」と声を弾ませる。
施主だけでなく、施工会社や行政との調整が必要になり、意見がぶつかることもある。図面に込めた思い、至るまでの経緯をいかに知ってもらうかに苦心する。「自然や周辺環境との調和を考え、社会を広く長い目で見るのが建築士。提案力を付けたい」と、キリッとした表情を見せる。
沖縄建築賞について、久志さんは「入賞作品について建築士同士の議論が深まれば、スキルアップにつながると思う」と話した。蒲地さんは「一般の方々の関心を高めるために、設計者の解説付きで入賞作品を巡る企画があってもいいのでは」と提案した。

くし・なおき(写真右) 1975年、宮古島市生まれ。一級建築士。琉球大学環境建設工学科、同大学院卒業。2000年、ファイブ・ディメンジョン入所。07年、スタジオ・ジャグ設立。趣味はサッカー観戦、旅行
かまち・ふみこ(写真左) 1982年、兵庫県川西市生まれ。一級建築士。2005年、大手前大学人間環境学科卒業。11年、(株)久友設計入社。14年、山内詩織さんとともに「ケンソーコンペ2014 U‐40」で最優秀賞受賞。趣味は食べ歩き、演劇鑑賞




 「沖縄建築賞」作品応募 4月24日締切 
対象は、過去2年以内に完成した住宅と、過去3年以内に完成した住宅以外の建築物。県内での建築が条件。締め切りは、4月24日(金)午後5時必着。
問い合わせは、沖縄建築賞実行委員会事務局( 098-934-1122  タイムス住宅新聞社内、担当/玉那覇・大嶺)。
Eメール kenchiku@jpress.co.jp
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1527号・2015年4月10日紙面から掲載

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