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2025年11月21日更新

沖縄にあるラグ専門店のバイヤー、念願だったイランの紡績工場へ! 原毛から糸になる工程を見学すると…|ラグの世界⑳

イランやトルコなどの中東で手織りされるラグを取り扱う那覇市西の「Layout(レイアウト)」のバイヤー、平井香さんによるラグ買い付け旅記。アゼルバイジャンとの国境近くにあるアルダビールの街で、念願だったウール糸の紡績工場を見学した様子。今回は、原毛から糸になるまでの16工程のうち、前半9工程を紹介する。

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エピソード⑳ イランで紡績工場を見学(前編)

原毛が糸になるまでには16工程ある。一番始めに原毛を色ごとに仕分けていく。真っ黒から白まで6種類に分けるが、白だけで3種類あり、ここからもう職人の長年の経験が必要とされる

山積みの原毛から糸に
完成までに16もの工程


そういえば、小学生のころから社会科見学が大好きだった。見たことのない機械やその道のプロフェッショナルのお仕事を見るとワクワクしたし、原料から形になっていく工程を見られるのはとても楽しい。今回の旅では「ウール糸の紡績工場に行きたい!」とリクエストしていた。原毛から手つむぎで糸を作り出す人に話を聞かせてもらったことはあるが、機械でよられる糸がどういう工程で作られるのかを、どうしても現地の工場に行って確かめたかった。

「明日、糸の工場に行けるよ」と決まったのは前日。チャンスはいつも突然やってくる。

ラグに使う糸は経糸・緯糸・結びの糸の3種類。私たちがセレクトするラグは、経糸・緯糸はウールかコットン、たまにヤギの毛。毛足部分はウールが多い。そして手つむぎの糸は主に毛足の部分に、機械よりの糸はすべての場所に使われている。

前半の9工程を紹介

私たちが「ラグの健康診断」と読んでいる、日本でのラグの最終検品では、ウールの糸に入り込んだ木くずたちに苦戦してしまう。ピンセットで一つ一つ取るのだが、とにかく時間と根気がいる。どうして木くずが入り込んでしまうのか? 原因をこの目で確かめる! というミッションを掲げ、いざ工場へ。

工場に入ると天井につきそうなほどのウールの原毛の山に迎えられた。原毛から糸になるまでに、なんと16もの工程があるという。今回は前半を紹介する。

①原毛を色で仕分ける
真っ白~黒まで六つに仕分ける。白だけで3種類あるそうだ。仕分けの職人は「イラン西部のケルマンシャー(コルディ)のウールが白くて一番質がいい」と言っていた。

②ウールをほぐしごみを落とす
コンベヤー式の機械でウールをたたいて大きなごみを落とす

③50~60度の湯で洗う
水槽が5段階になっている洗浄の機械で洗ってきれいにする。

④脱水
ラグと同じように大きな脱水機で水を切る。

⑤乾燥
長いコンベヤー式の乾燥機で乾かす

⑥プレスする
150~200キロの力でプレスする

⑦再びごみや木くずを落とす
さらに原毛をほぐしながら機械でたたいてごみを取り除く

⑧オイルやトリートメントをスプレーする
オイルをスプレーすることで紡績しやすく、きれいな糸を作ることができる

⑨倉庫で一晩寝かせ、オイルをなじませる

これでまだ半分。糸になるまでにはたくさんの工程があることが分かった。
 
五つの水槽がある機械で原毛を洗う
 
洗ったウールの隙間から顔を出す職人
 
◆   ◆

ウールのラグのお手入れは、シャンプーを使うことをおすすめしている。ウールが人の髪の毛と似た繊維だからだ。今回の工場見学で、洗って乾燥させた後、オイルやトリートメントをなじませる工程を見た時に「私たちのお風呂上りと同じ!」と合点がいった。一晩寝かせるところもまたいい。

ラグのように水を含んだウールは重さがあり力が必要で、ここまでの工程はすべて男性の職人が担当している。次回は糸になるまでの後半を紹介する。



執筆者/ひらい・かおり
ラグ専門店Layout バイヤー
那覇市西2-2-1
電話=098・975・9798
https://shop.layout.casa

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2081号・2025年11月21日紙面から掲載

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