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2025年2月21日更新
イランの暮らしに欠かせないチャイ|ラグの世界⑫
イランやトルコなどの中東で手織りされるラグを取り扱う那覇市西の「Layout(レイアウト)」のバイヤー、平井香さんによるラグ買い付け旅記。今回は、イランの「チャイ」文化について紹介する。

エピソード⑫ 番外編・イランフードの話2
チャイというと、インド式のスパイスで煮だした甘さのあるマサラ・チャイのイメージが強いが、イランの「チャイ」はそれとは違う。ペルシャ語でお茶を意味する言葉「チャーイ」は、温かいアールグレーのストレートティーのことを指し、スパイスもミルクも入っていないシンプルなホットティーである。
イランのチャイには欠かすことができない給茶器、サモワールはその形も機能もとても興味深い。昔は中に炭を入れお湯を沸かし、その蒸気で上に乗せたティーポットを保温。時間がたって濃くなったチャイは蛇口から出るお湯で薄めて飲む=下写真。これは英国より早く紅茶文化が根付いていたロシアからイランへ伝わったと言われている。
イランでは朝から晩まで一日中チャイを飲むので、画期的な道具だ。現代では、電気式のサモワールを使う人が多い。
イランのチャイには欠かすことができない給茶器、サモワールはその形も機能もとても興味深い。昔は中に炭を入れお湯を沸かし、その蒸気で上に乗せたティーポットを保温。時間がたって濃くなったチャイは蛇口から出るお湯で薄めて飲む=下写真。これは英国より早く紅茶文化が根付いていたロシアからイランへ伝わったと言われている。
イランでは朝から晩まで一日中チャイを飲むので、画期的な道具だ。現代では、電気式のサモワールを使う人が多い。

チャイを入れるのに欠かせない給茶機「サモワール」。湯を沸かす蒸気でティーポットを保温。濃くなったチャイは蛇口から出るお湯で薄める。棒付きキャンディ「サフランナバート」とともにチャイをいただく
砂糖かじりながら
イランのチャイはおともの砂糖がないと始まらない。固まりの砂糖をかじってチャイを飲むのがイラン流。砂糖の固まりなんて! と最初は抵抗があるかもしれない。しかし、私たちがお寺などでお抹茶を練り切りや干菓子と一緒にいただくのと近い感覚だと思うと、そんなに違和感はない。
添えられる砂糖にも多くの種類がある。お土産屋でよく見かけるサフランナバートは、サフランの入った琥珀(こはく)色の棒付きキャンディ。チャイの入ったカップの中でくるくる回すとほろほろと溶けていく。
私のお気に入りは薄くパリッとしたべっこうあめのようなキャンディで、口に1枚含んでチャイを飲むと、甘さがすーっと口の中に広がる。
粉砂糖をカルダモンやローズ、ピスタチオなどと固めたラムネのような砂糖は、スパイスやナッツの香りも合わさり、いつものチャイにちょっと特別感が出る。たまに出てくるとうれしいのが、シロップに漬かった小さなドーナツのようなお菓子。とても甘くてたくさんは食べられないが、歩き疲れてへとへとな時はこの甘さを欲する。

私のお気に入りのチャイのおとも。薄くてパリッとしたべっこうあめのようなキャンディ
暑い日でもホットで
ラグ店を回っていると、「チャイは飲む?」と声をかけてくれるので結局、一日中チャイを飲んでいることがある。乾燥しているイランでは、このくらいが喉が潤ってちょうどいいのかもしれない。
40度近い日でも熱いチャイのポジションは変わらず、アイスティーが私たちの前に姿を見せることはない。思い出に残っているのは、イラン南部のカシュガイの人とピクニックをしたときに出してもらったチャイだ。薪火のお湯で淹(い)れるチャイは、薪の香が付くから全然違うのよとお母さんが教えてくれた。
雄大な景色の中でみんなで飲むチャイは格別だ。羊たちがカランカランと首に付けたベルを鳴らし、草を食べながら歩くのをぼんやりと眺めながら最高のチャイタイム。イランで飲むチャイは、その場所の空気感や景色、音や人々の話し声、ラグのにおいなどさまざまな要素が味となり、より一層おいしく感じる。

シロップに漬かった小さなドーナツのようなお菓子は、かなり甘いが疲れた体に染みる

執筆者/ひらい・かおり
ラグ専門店Layout バイヤー
那覇市西2-2-1
電話=098・975・9798
https://shop.layout.casa
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2042号・2025年02月21日紙面から掲載