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2025年9月26日更新

ラン栽培の肝 温度管理 空調の使い方見直し|省エネ診断⑮

文・写真/名嘉光男(NPO法人 沖縄県環境管理技術センター)

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ラン栽培の肝 温度管理
空調の使い方見直し

中小企業のエネルギー使用状況を調査し、省エネの工夫を提案する「省エネお助け隊」。県内でお助け隊として活動するNPO法人・沖縄県環境管理技術センターの名嘉光男さんが実際の調査結果を基に省エネのヒントを紹介する。


今回の省エネ診断事例は
(有)仲里園芸(糸満市)



◆仲里園芸の現状

ビニールハウス① 
パッケージエアコンと循環扇で、20度前後を保つことを目指している



ビニールハウス② 
空調機と大きな農業用換気扇、循環扇で温度をキープする


年中20度がベスト

当コーナーではさまざまな業種の省エネ診断事例を紹介している。今回は農業である。

(有)仲里園芸は1991年に創業したランの生産販売業者で、事務所側にビニールハウス①があり面積は約2020平方メートル。道路を挟んだ向かい側にはビニールハウス②があり、1440平方メートルある。

主要商品であるコチョウランを育てるのは、夜間は18度ぐらい、日中は25度ぐらいがベストだそう。一年を通して20度前後に保つことが理想のため、冷房・暖房と年中エネルギーを使用する施設だ。さらに地球温暖化の影響で夏の暑さが厳しくなってきているため空調機を増設したそうだ。 

ビニールハウス①は業務用のパッケージエアコン+循環扇による個別空調方式だ。

ビニールハウス②は、ガスエンジンで駆動するGHPガスヒートポンプエアコン+農業用換気扇(羽根の直径120センチ)+循環扇による個別空調方式である。夜間はGHPガスヒートポンプエアコンを、日中は換気扇を稼働し、循環扇は常時稼働している。換気扇の稼働の際には吸い込み側に水を流し、気化熱や水との接触により冷却効果を高めている。

循環扇は、閉鎖空間であるビニールハウスなどの施設栽培で、効率よく空気を循環させ温度ムラを改善するために必要な設備だ。温度管理に関しては生産の根幹であるため、きめ細かく対応している。

設定温度の緩和を

本施設で使用しているエネルギーは空調機の電力(47%)とLPG(53%)である。エネルギー管理に必要なグラフ化などの「見える化」は実施していない。ビニールハウス②の空調設備は温度制御盤を設置して、夜間の空調機運転と日中の農業用換気扇の運転を自動制御で行い、適正に温度管理している。

省エネルギー改善策として、空調の設定温度の緩和や室内機フィルターや室外機フィンの清掃など4項目を提案した。

実行による予想削減金額は年間で56万6千円だった。

 
省エネ診断による提案事項
◆運用改善
1.ビニールハウス①、②の空調設定温度の緩和
2.ビニールハウス①、②の室内機フィルター清掃(室外機フィン洗浄含む)
3.外から侵入する外気量の低減  
4.ビニールハウス②の空調機運転時間の見直し









※提案事項の実行による予想削減金額56万6000円/年の見込み。削減電力消費量は5999kWh/年、予想削減LPG消費量1197㎥/年。



省エネ診断の補助事業(中小企業向け)

事業所のエネルギー使用状況を把握し、省エネできる項目の洗い出しや改善策を提案するのが省エネお助け隊による「省エネ診断」。中小企業は国の補助(地域エネルギー利用最適化・省エネルギー診断拡充事業)により、1割負担で診断を受けられる。診断は5720円~(税込み)詳細は「省エネお助け隊ポータル」で検索。

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執筆者
なか・みつお
NPO法人沖縄県環境管理技術センター理事長、エネルギー管理士、一級管工事施工管理技士。
電話=098・853・3739
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2073号・2025年9月26
日紙面から掲載

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