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2024年9月20日更新

[不動産の日]不発弾探査②|耐爆容器で住民負担減

ことし4月、うるま市の津堅島で81ミリ迫撃砲弾3発が発見された=下写真。長雨が続き、傾斜のある畑の土がすべり落ちたことで、斜面に埋まっていた不発弾があらわになったもの。県の不発弾対策班の當眞嗣夫班長は「発見されたのは重機が行き交っていた場所。万が一が起こっていてもおかしくなかった」と危機感を募らせた。

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耐爆容器で住民負担減

重機行き交う畑で

ことし4月、うるま市の津堅島で81ミリ迫撃砲弾3発が発見された=下写真。長雨が続き、傾斜のある畑の土がすべり落ちたことで、斜面に埋まっていた不発弾があらわになったもの。県の不発弾対策班の當眞嗣夫班長は「発見されたのは重機が行き交っていた場所。万が一が起こっていてもおかしくなかった」と危機感を募らせた。
 

津堅島でことし4月に発見された直径81ミリの迫撃砲弾(うるま市提供)
 
79年地中に埋まっていた不発弾とはいえ、その殺傷力や破壊力は変わらない。実際、1974年には那覇市の幼稚園そばで園児を含む4人が死亡、34人が重軽傷を負う痛ましい事故が発生。2009年には糸満市小波蔵の工事現場で重機と不発弾が接触して爆発、2人が重軽傷を負った。

こうした事故を機に始まったのが不発弾等処理事業。今回紹介する、住宅やアパートの新築・建て替えなど民間の工事予定地を対象とした「住宅等開発磁気探査支援事業」と、畑など工事を伴わない土地を対象とした「広域探査発掘加速化事業」がある。いずれも土地の不発弾探査の費用を原則100%補助するもので、市町村の窓口から申し込む。不発弾が見つかった場合も、処理費用は公費で賄われている。

補助申請は早めに

ことし4月から新たな取り組みも始まった。沖縄本島で特に多く発見される5インチ艦砲弾の不発弾処理時に使う耐爆容器=左上写真=の本格運用だ。當眞班長は「穴を掘り周囲に鉄板を張り巡らせた強固な処理壕を造り、その中で信管破壊(安全化)を行っていた従来の方法に比べ、避難範囲が格段に縮小。住民や処理作業にあたる関係者の負担を軽減できるメリットがある」と説明する。耐爆容器を使った処理は8月末時点で5件行われており、7月に那覇市真地の住宅街でよう壁工事中に発見された不発弾処理でも活躍。「避難範囲がこれまでの半径88メートル内から25.5メートル内に縮小された」と話す。

こうした「住宅等開発磁気探査支援事業」が始まったのは2012年。24年3月までの12年間で2066件を探査し、そのうち116件で合計5.8トンの不発弾が見つかった。當眞班長は「昨年度だけで233件探査したうち16件で合計1トンの不発弾が発見された。同事業による探査件数は増えているが、それでも新築着工件数には遠く及ばない。探査が義務づけられている公共工事に比べ、住宅建築などの民間工事では施主の判断に任されており、補助事業を知らない人が多いのも要因。安心して工事を進めるためにも、ぜひ事業を活用してほしい」と話す。「補助事業は予算の範囲内で行われるため、早めの申請を」と呼び掛けた。
 

那覇市真地での住宅街で5月によう壁の工事中に発見され、処理された不発弾(県防災危機管理課提供)
 
ことし4月から本格運用が始まった耐爆容器。不発弾処理時の避難範囲が格段に狭まり、住民負担を軽減(沖縄総合事務局提供)
 

探査費用は原則全額補助

 
不発弾等処理事業のリーフレット。沖縄県防災危機管理課のホームページに掲載しているほか、各市町村の担当窓口などでも配布中

住宅建築やその他の工事を行う際に不発弾探査を補助する「住宅等開発磁気探査支援事業」=概要は下参照
よくある質問をQ&A形式でまとめたので参考にして。

 
 
Q1 事業の対象は?
A 住宅やアパートの新築・建て替えなど、民間の工事予定地

住宅の新築や建て替え、各種事業所、店舗、土地造成といった民間の工事予定地が対象。面積による制限はないが、過去に同事業の補助を受けたことがある土地は対象にならない。ただし、建て替えなどで以前よりも基礎が深くなる場合などでは補助の対象となる可能性がある。

Q2 費用は?
A 原則として申請者の負担はなし

予算内であれば原則、全額補助されるため、申請者の負担はない。ただし、樹木の伐採や所有物の撤去などは、申請者自身で行う必要がある。

Q3 申請方法は?
A 申請書類を建設予定地の市町村窓口に提出

不発弾等処理事業のパンフレット=上写真=にある「沖縄県住宅等開発磁気探査支援事業申請予定表」に記入し、建設予定地の市町村窓口に提出。

Q4 補助を受けられないケースもある?
A 補助金の交付決定前に探査すると、補助を受けられない

不発弾探査は、補助金の交付決定後に申請者と探査を行う業者が契約し、着手する。交付決定前に契約・探査を行ってしまうと、補助が受けられなくなる。

Q5 家の近くで不発弾が発見されたことがあるかを知る方法はある?
A おおよその位置を調べられるデータベースがある

沖縄総合事務局による「沖縄不発弾等事前調査データベースシステム」を使えば、不発弾の発見場所などを地図上に表示して確認できる。誰でもインターネットで閲覧可能。
那覇市久茂地周辺を調べた様子。赤い印は不発弾が発見された場所。
※上の画像は「沖縄不発弾等事前調査データベースシステム」の画像を切り取って使用したもの


Q6 探査の方法、期間は?
A 専門業者による磁気探査。申請受理から探査終了まで約1カ月

不発弾が主に鉄製なので、磁力を利用した磁気探査で地中に鉄類が埋まっていないかを調べる。探査は専門業者が行う。申請受理から探査開始まで約2週間。その後、探査に約2週間かかかる(一般的な住宅の場合。敷地の広さなどにより異なる)。

Q7 不発弾を見つけたら?
A 近寄らず、すぐ警察に連絡!

万一、探査していない場所で不発弾を見つけたら、近寄ったり触れたりせず、すぐに警察へ連絡を! 探査中に不発弾が見つかったら、建設予定地の市町村、県、自衛隊で処理方法を協議の上、後日処理作業を実施する。費用はすべて公費で賄われる。


↓画像をクリックすると、(一社)沖縄県磁気探査協会のサイトに移動します

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2020号・2024年09月20日紙面から掲載

 

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