沖縄建築賞
2016年5月27日更新
【第2回沖縄建築賞】一般建築部門 正賞・新人賞/「名護城公園ビジターセンター Subaco」(名護市)/蒲地史子氏(33)/久友設計
第2回沖縄建築賞(主催・同実行委員会)の入賞作品がこのほど決まった。応募総数44点の中から、住宅建築部門は仲間郁代氏、一般建築部門は蒲地史子氏の作品が正賞に輝いた。入賞作品7点を紹介する。
第2回沖縄建築賞には44点が応募(住宅建築部門32点、一般建築部門12点)。4月19日の書類審査で8点に絞り、同月16日~17日に現地審査を行った。17日の最終審査で、審査委員長の古市徹雄氏を含む審査委員7人が議論を重ね、正賞に住宅部門は仲間氏、一般部門は蒲地氏の作品を選出した。40歳以下の若手建築士が対象の「新人賞」は蒲地氏に決まり、正賞とのW受賞となった。住宅・一般両部門から正賞に次ぐ作品に贈られる「タイムス住宅新聞社賞」には、島田潤氏の作品が選ばれた。表彰式は6月3日(金)午後2時から、那覇市のタイムスギャラリーで開かれる。
一般建築部門 Subaco 名護城公園ビジターセンター 【名護市】蒲地史子氏(33)
展望台生かし全面改修
名護城公園内にある鉄筋コンクリート造3階建ての集会施設兼店舗。築27年を超える展望台を全面改修。建物は増築せず、高床部分を1階スペースに充て設計した。
「名護湾の夕景を望むスポットにしたい」という施主の要望を踏まえ、周辺の自然と調和しながら、名護湾の景色を取り込める工夫がされている。審査では、「昔ながらの展望台に現代の息吹を盛り込んで、軽快な建物にリノベーションした提案」が評価された。西日を遮り、台風に備える可動樹脂ルーバーの活用、黒い躯体で自然との調和を図った点も関心を集めた。
お世話になった皆さまに感謝の気持ちを伝えたい。沖縄の気候風土も自然も、年々美しく感じる。建物は人を幸せにすることができると信じ、沖縄の暮らしや住まいを支える一人となりたい。(久友設計)
審査講評
風、光、眺め 豊かに溶け込む
構造体に工夫 緑と調和
名護湾が望める高台にある築27年を超える展望台の全面改修である。この建物は全体が黒を基調に仕上げられ、斜面に浮くような配置になっていて周囲に違和感を与えない。
鉄筋コンクリートの床をカットして自荷重を減らし、注意深く構造体の合理を守る工夫をしながら、それらをガラスと木板でくるむように軽快な外観を作り上げている。ガラス面には木々や影を映りこませ、周囲の木陰と一体化させたいという意図も成功している。
「名護湾の美しい夕日を見せたい」という要望に応えるために問題となる西日対策として、複層ガラスや可動ルーバーをうまく用いて解決している。ルーバー天井と壁面の縦格子は、室内に落ち着きと繊細さを与えている。
外壁に使用したのは焼き杉とはいえ、木の外部仕上げの耐久性は心配を伴うものだが、設計者の「時と共に変化していくことが自然との調和である」という主張は共感できる。
自然通風の取り入れや庇による日照調整、クールチューブ等、自然エネルギーの取り入れにも工夫がみられる。
「Subaco」という建物の愛称も、この建築を言い表していて楽しい。
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1586号・2016年5月27日紙面から掲載