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2024年6月27日更新

人の内面に響く植物が生む情緒|アートを持ち帰ろう(39)

文/本村ひろみ

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人の内面に響く植物が生む情緒

染めの工程と日本画の画材で表現

画家・湖城磨李奈(こしろまりな)は大学時代、秋から冬のドイツに留学した。冬のヨーロッパは暗くてシンシンとしびれる寒さ。そんな日々、湖城は授業でのデッサン以外はひたすら森や道端に咲いている雑草を描く日々だったという。沖縄にはない草花にひかれて。
 
「Person」
P6号 個人蔵


幸福が続くように

帰国後32枚の植物スケッチは「ドイツの雑草 イラスト図鑑」として製本された。何げない存在の植物は彼女の作品にとって重要なモチーフなのだ。絵の中に登場してくる人物は植物柄の衣装を着ているが、「植物柄は同じパターンが続くような表現にすることによって幸福が続きますようにと祈りを込めています」と湖城は言う。「絵を通して鑑賞者に少しでも寄り添えたらいいなと思っています」とも。彼女のまなざしはまるで神に祈りをささげるかのように美しく純粋だ。

日本画の画材を用いて描く彼女の表現方法は、博物館で見た染めの工程である糊(のり)の防染を日本画に応用できないかと試行錯誤し、ようやく確立できたもの。5月の個展ではそれらの作品が展示された。作品「Person」は人物に身近にある植物柄の洋服を着せている。

人物と植物は互いに環境によって影響され個性が形成されるのではないか、と湖城は考える。日本画における植物の存在が情緒を生み出すだけでなく、描かれた人物の内面に響くという考え方は哲学的だと感じた。
 
「私の頭の中」
50ミリ×105ミリ 個人蔵

 
「道草」
F4号 個人蔵

 
「drawing」
F0号 作家蔵
 

 
作家近況
画家・湖城磨李奈
今後の予定はインスタグラムで
https://www.instagram.com/lakeandcastle/

本村ひろみ
もとむら・ひろみ
那覇市出身。清泉女子大学卒業。沖縄県立芸術大学造形芸術研究科修了。ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「We love yuming2」でパーソナリティーを務める


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2008号・2024年06月28日紙面から掲載

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ロマンチストなラジオDJ
那覇市出身。清泉女子大学卒業、沖縄県立芸術大学 造形芸術研究科修了。現在、ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「We love yuming2(毎週 日曜日 19時~20時)」でパーソナリティーを務める。

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