美しく優雅な“日用美術品”|アートを持ち帰ろう(38)|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

スペシャルコンテンツ

特集・企画

2024年5月24日更新

美しく優雅な“日用美術品”|アートを持ち帰ろう(38)

文/本村ひろみ

特集・企画

タグから記事を探す

美しく優雅な“日用美術品”

渋い色とシャープな曲線が融合した器

陶芸家・福富貴弘がまだ県立芸術大学大学院に在学中していたころ、取材をしたことがある。将来の夢を尋ねたら「最終的には地元茨城に戻って蓄積した知識と表現で地元に貢献することが目標です」と語ったのが印象的だった。その言葉どおり彼は大学院を終了して2022年には地元の茨城県笠間市に戻り、陶芸作家としてスタートした。そして初個展の場所を沖縄に選び、初日から盛況だった。そして器はほぼ完売した。
 
「HIGH-END」
H170mm×W140mm 4万5000円(税込)


影のシルエットも魅力

福富は学生時代から研究を続けている赤い陶土のもつ鉄分の渋い色と、削りを使ったシャープな曲線を融合させた器をベースに、日用品でありながら美しく優雅な「日用美術品」を目指して制作している。作品は「NORMAL」「HIGH-END」の2シリーズを展開。「NORMAL」は彼の作品の特徴となる彫りに加え日常の中に取り入れやすい美術品としての陶器で、「HIGH-END」は全面彫り込みのオブジェのような作品となっている。そして今後は掘り込みのないシンプルな器「MATERIAL」シリーズも制作予定だという。沖縄の個展での感触は、作家にさらなるエネルギーを与えたようだ。

今回、私は釉薬(ゆうやく)だれが大きな雨粒のように見えるゴブレットを手にした。「こんなふうに器を逆さにひっくり返すと作品の見える景色も変わりますよ」と、楽しそうに作品を語る作家との時間は貴重だ。創作秘話も聞けるし、何より作り手が日々の暮らしをどんなふうに見つめているかが感じられる。お気に入りの器は生活を豊かにするし贈り物としても喜ばれる。

ところで自宅でギャラリーのように器を並べていると、照明まで変えたくなった。明かりと器は密接な関係だ。影のシルエットも器の魅力だから。

 
「HIGH-END」天上杯(極)
H440mm×W280mm 8万円(税込)

 
「HIGH-END」大皿
H50mm×W300mm 5万7000円(売約)

 
「NORMAL」碗
H60mm×W120mm 5500円(税込)

 
器について話す陶芸家福富貴弘さん

 
作家近況
作家近況はインスタグラムで発信中
https://www.instagram.com/fukutomi_takahiro/

本村ひろみ
もとむら・ひろみ
那覇市出身。清泉女子大学卒業。沖縄県立芸術大学造形芸術研究科修了。ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「We love yuming2」でパーソナリティーを務める


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2003号・2024年05月24日紙面から掲載

特集・企画

タグから記事を探す

この連載の記事

この記事のキュレーター

キュレーター
本村ひろみ

これまでに書いた記事:38

ロマンチストなラジオDJ
那覇市出身。清泉女子大学卒業、沖縄県立芸術大学 造形芸術研究科修了。現在、ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「We love yuming2(毎週 日曜日 19時~20時)」でパーソナリティーを務める。

TOPへ戻る