2024年6月28日更新
物別に電力把握 一元管理の構築を|省エネ診断⑧
文・写真/名嘉光男(NPO法人 沖縄県環境管理技術センター)
建物別に電力把握 一元管理の構築を
中小企業のエネルギー使用状況を調査し、省エネの工夫を提案する「省エネお助け隊」。県内でお助け隊として活動するNPO法人・沖縄県環境管理技術センターの名嘉光男さんが、実際の調査結果を基に省エネのヒントを紹介する。
今回は、沖縄こどもの国の省エネ診断事例
今回は、沖縄こどもの国の省エネ診断事例
◆沖縄こどもの国の現状
チルドレンズセンターの氷蓄熱ビルマルチシステム室外機
動物ZOOスクール内のエサ保管用のプレハブ冷凍・冷蔵庫
さまざまな空調機使用
沖縄こどもの国(沖縄市)は体験型の動物園と博物館。今回調査した建物はチルドレンズセンター、ワンダーミュージアム、動物センターZOOスクール。建物によって用途が異なる。
空調システムは、業務用のパッケージエアコンや氷から冷気をつくる氷蓄熱ビルマルチシステム、空気で冷気をつくる空冷チリングユニットなど各施設でさまざまなものを使っていて、個別空調方式である。動物センターには動物の餌を保管するプレハブ冷凍・冷蔵庫もある。
照明設備は蛍光灯とLED灯を混在して使用している。使用電力値を監視する「デマンド監視装置」は設置していない。チルドレンズセンターが本社機能を担っているがエネルギー管理体制は構築していない。
チルドレンズセンターと動物センターの建物および設備は老朽化が進み、機器の効率の低下や故障が生じている。そのため高効率型の空調機への更新が必要である。ワンダーミュージアムの空調設備は高効率型に更新しているが、入場者の変動が大きく、空調負荷密度の変動が大きいため省エネルギー管理は難しい面がある。
各建物に電力メーター
施設の運営にはさまざまな機器が稼働しているためエネルギー多消費型の施設になっている。建物別に電力小メーターを設置してそれぞれの建物のエネルギー使用状況を把握した上で、一元管理するためのシステムを設置し、省エネルギーに努める必要があると思われる。
今回の省エネ診断では、空調機の清掃や、設定温度の緩和、稼働時間の短縮のほか、高効率型空調機への更新などを提案した=右囲み参考。提案事項の実施における予想削減金額は年間で526万4683円だった。
◆省エネ診断による提案事項
運用改善
・チルドレンズセンター空調設定温度の緩和
・同センター室内機のフィルターの清掃
・同センター室外機熱交換器フィンの洗浄
・ワンダーミュージアム空冷チラーの稼働時間短縮
設備投資による改善
・チルドレンズセンター高効率型空調機への更新
・同センター照明設備のLED化
・ZOOスクール高効率型空調機への更新
・同スクールプレハブ冷凍・冷蔵庫の冷凍機の更新
提案事項の実施における予想エネルギー削減量は18万2865kWh/年、予想削減金額は年間526万4683円
省エネ診断の補助事業(中小企業向け)
事業所のエネルギー使用状況を把握し、省エネできる項目の洗い出し、改善策について提案するのが省エネお助け隊による「省エネ診断」。中小企業は国の補助(地域プラットフォーム構築事業)により1割負担で診断を受けられる。診断は6640円~(税抜き)。詳細は「省エネお助け隊ポータル」で検索。
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執筆者
なか・みつお
NPO法人沖縄県環境管理技術センター理事長、エネルギー管理士、一級管工事施工管理技士。
電話=098・853・3739
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2008号・2024年6月28日紙面から掲載