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2024年1月26日更新

ポップなのに憂い 不思議なうごめきも|アートを持ち帰ろう(34)

文/本村ひろみ

ポップなのに憂い 不思議なうごめきも

2月に海外初個展、宜野湾市で3人展も

画家・町田隼人(はやと)は勢いにのっている。初めて彼に会ったのは4年前、大学を卒業したてでアーティストとしてスタートした2019年。当時、個展を立て続けに開催していた。
 
「I'm as free as my hair」
910×727mm

※写真撮影はすべてナカンダカリ マリ


カフェ感覚で鑑賞

大胆な構図に色彩あふれる作品が並ぶ会場で作家自身は繊細でシャイな印象の青年だった。昨年末の個展『Unveil the Blooming』では、制作中に聴いているレコードやプレーヤーが会場に置かれ、「留学中、ニューヨークのブックオフで買ったアルバムはモンパチとユーミンで、アメリカにいるのにずっとそれを聴いていたんですよ」と笑顔でユーミンのアルバム「サーフ&スノー」をかけてくれた。カフェにいるような雰囲気で鑑賞を楽しませるという演出。町田は2024年の目標を「ジェンダーと沖縄の歴史をより深く研究し作品を制作すること」と話してくれた。新作は構図も線も躍動的でシンプルになり、アクリル絵の具で描かれた画面は、花にスイーツとポップなモチーフなのにどこか憂いが漂っている。まぶしくて幻想的。自由なまなざしが感じられる。

作品『Playground』から感じるトーンの既視感が、シティーポップミュージックに通じる独特な乾いた感覚とオーバーラップした。丸みを帯びて描かれたプロペラは、甘いピンクやオレンジに塗られ悲しい歴史を包み込む。相反するものを対立させることなく存在させている。作品『I'm as free as my hair』は観るものを鼓舞しハッとさせるし、『My flower V』では全体にうっすらと細かい装飾的な模様が描かれ、動的なのに静寂さも感じられる。作品が進化し続けている。

ところで彼の作品すべてには不思議なものが存在する。画面に描かれた、漂う白いふわふわだ。そのせいか蠢(うごめ)く画面をずっと眺めていたくなる。まるでレコードのスクラッチノイズがパチパチッと耳のそばで聞こえているような印象で絵の世界に引き込んでいく。
 
「Playground」
1620×1303mm
 
「My flower V」
300×300mm
 
「Mystery of Tears」
606×500mm
 

作家近況
●2月2日~24日/GALERIE OVO(台湾・台北)で初の海外個展
●2月22日~25日/3人展「085 IN RESIDENCE vol.2」(宜野湾市嘉数085 STUDIO 085)
その他情報はインスタグラムで発信
https://www.instagram.com/hayato_machida_/
※作品に関する問い合わせはギャラリー・アトスへ

本村ひろみ
もとむら・ひろみ
那覇市出身。清泉女子大学卒業。沖縄県立芸術大学造形芸術研究科修了。ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「We love yuming2」でパーソナリティーを務める


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1986号・2024年1月26日紙面から掲載

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ロマンチストなラジオDJ
那覇市出身。清泉女子大学卒業、沖縄県立芸術大学 造形芸術研究科修了。現在、ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「We love yuming2(毎週 日曜日 19時~20時)」でパーソナリティーを務める。

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