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2021年9月10日更新

[沖縄・建築探訪PartⅡ⑮]持続可能な開発 沖縄モデル国際コンペ

次世代に残したい沖縄の建造物の歴史的価値や魅力について、建築士の福村俊治さんがつづります。文・写真/福村俊治

持続可能な開発 沖縄モデル国際コンペ

国際ワークショップ(沖縄県)

20世紀の沖縄は「破壊と建設の時代」だった。76年前の沖縄戦で多くの命と街や建造物などを失い、戦後の米軍占領下で良好な土地に基地が造られ、日本復帰後はインフラ整備と経済振興による建設ラッシュが続いた。しかし一見経済繁栄しているように見えるが自立経済には程遠く、さまざまな都市・環境問題が潜在し貴重な自然が失われ、将来に向けての総合的な都市整備の必要性が叫ばれている。

25年前、沖縄県は「平和・共生・自立」を理念に、「脱基地」を目指し、人・モノ・情報が交流する「国際都市形成構想」を策定した。温暖な気候と豊かな自然環境を生かした「環境共生モデル地域づくり」のリレー・ワークショップが始まり私たちも参加した。1997年2月に地域開発の参考例として、フィリピンのスービック基地跡地利用開発、ドイツのIBAエムシャーパークの開発、そして台湾の先端エレクトロニクス産業開発の関係者を招いた国際ワークショップが開催され、多くの県民が聞き入った。また、その秋には、ドイツのデッサウ市で開かれた地域開発国際会議に参加し、沖縄の「国際都市形成構想」を報告した。この欧米10カ国が参加した国際会議では、「パートナーシップによる開発」「産業地再活性開発」「軍用地の跡地利用」の分科会があった。そこで私たちは「環境共生型の地域開発」にもさまざまな開発があることや「地域開発にとっての環境負荷削減」の重要性や「市民生活と自然や地域遺産の親密性や、市民意識や市民運動の育成」の大切さを確認し、ドイツでの実例も見学した。その年の暮れには「島しょ地域における戦略的で持続可能な土地利用モデル」の研究会も開かれた。


①台湾・東京チーム(代表 陳亮全台湾大学建築与城研究所副教授)
この提案は、戦前の資料をもとに従前の自然と定住のシステムを新しく発展させ、基地跡地の場所の力を生かす土地利用を提案。一見古く思えるが、地形や河川や緑などの自然環境の生態回廊を生かして、自然回復技術や循環型定住技術の開発、新医療産業としての心や体の癒やしの提供、そして新たな観光の長期滞在型のヘルシーリゾートを目指す計画。


②ドイツ・大阪チーム(代表 K・Rクンツマン ドルトムント大学国土計画科教授)
この提案は、最初から具体的土地利用を決めるのでなく、次世代の担い手が跡地に入り、考えながら新しい産業の街を創っていくというプログラムの計画。この開発を先導する推進機構や推進ファンドなどを主に提案。環境共生、地域文化・地域社会を生かして沖縄の潜在的ポテンシャルを生かした沖縄らしいテーマパーク的な交流重視の土地利用を提案。


基地跡利用4国が提案

その翌年、ドイツ、カナダ、台湾、沖縄の4チームでの瑞慶覧(6・5平方キロメートル)と普天間基地(4・9平方キロメートル)の「持続可能な開発・沖縄モデルでの土地利用」を求めた国際コンペ(委員長・伊藤滋慶応大学教授)が開催された。このコンペは実施計画を求めたものでなく基本コンセプト開発や実行シナリオ、組織づくりなどを考慮した土地利用計画を求めるものであったため優劣は評価されなかった。

この一連のワークショップで沖縄の持続可能な開発は「エコノミーとエコロジーの地域的調整こそが前提となる」こと、また短期・中期的持続可能性の双方の条件を満たすと同時に、超長期的な視点や国際的な視点も持つことの大切さも確認された。この国際コンペ発表は、大田県政に代わる新知事の初登庁日と重なったため、マスコミに取り上げられず県民に知らされることがなく終わった。


③カナダチーム(代表 トーマス・ハットン ブリティシュコロンビア大学地域計画学科教授)
この提案は、跡地を狭い範囲で考えるのでなく、アジア太平洋圏コミュニティーの一員と位置づけた計画。跡地の関係者の意向による土地利用計画を作成すべきとし、持続可能な開発を目指すが具体的な戦略は地元に任せ、土地利用原則だけを提示。また基地内既存施設を使った低家賃産業地区などを提案し、現在の都市構造を継承的に発展するほうが経済的とした。


④沖縄チーム(代表 福島駿介琉球大学工学部教授)
この提案は、地元沖縄の実情を踏まえ、既存市街地再生や嘉手納基地まで含む広域的・長期的なビジョンの土地利用計画を提案。基地跡地全体を公園化しながら人口2~3万の環境共生型コンパクトタウンを配置、基地跡地やコンパクトタウンを緑道や新交通で結ぶ。同時にこれまでの経済開発によって失われた既存市街地の貴重な緑地や海岸を再生して沖縄全体を環境共生型地域にしようという持続可能な開発の提案。

・文章中の肩書きはコンペ当時のもの。
・雑誌「ランドスケープ・デザイン No15」(マルモ出版)に詳しく掲載。


[沖縄・建築探訪PartⅡ]福村俊治
ふくむら・しゅんじ 1953年滋賀県生まれ。関西大学建築学科大学院修了後、原広司+アトリエファイ建築研究所に勤務。1990年空間計画VOYAGER、1997年teamDREAM設立。沖縄県平和祈念資料館、沖縄県総合福祉センター、那覇市役所銘苅庁舎のほか、個人住宅などを手掛ける
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1862号・2021年9月10日紙面から掲載

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