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2023年12月22日更新

表情に刻み映す 言葉にならぬ想い|アートを持ち帰ろう(33)

文/本村ひろみ

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表情に刻み映す 言葉にならぬ想い


話しかけたくなる佇まい

彫刻家・小泉ゆりかの作品は表情がいい。怒っている表情が強烈な印象の「不機嫌なお月様」、戸惑い、口を真一文字に結んで今にも泣き出しそうな「崩れゆく」、悲しみと迷いの表情を捉えた「愁い」。表情とは言葉にならない想いが現れた瞬間だ。言葉を発するのではなく、顔に感情を刻んでいる。実際小泉は作品のコンセプトをこのように語る。

「人は言語や表情・身ぶり手ぶりなどを使って自身の内面を表現する。それらはその人の内部と外部をつなぐ架け橋であるが、時に曖昧で、不正確だ。私は特に“表情”に着目し、彫刻作品として“表情”を制作している。鑑賞者がその作品の表情から内面性を見いだし、勘ぐったり、心配したり、一緒にうれしくなったりして、作品と鑑賞者の間で一種のコミュニケーションを発生させることを目標としている」と。
 
「不機嫌なお月様」
W130×D150×H170mm


見る物の感情を可視化

たしかに、素朴な作品「ふくふく坊や」は思わずどうしたの? と話しかけたくなる仏像のような佇(たたず)まい。小泉は素材に樟(くすのき)を使っているが、楠は飛鳥時代から仏像の素材として用いられてきた。木目に柔らかな線があり優しさがにじむ素材だ。最近では張り子の作品も発表し「おいてけぼりシリーズNo.1」は新聞紙と薄葉紙で制作している。繊細な素材から浮かび上がる表情はまるで何かを祈っているかのよう。

小泉の作品には愛らしさと少しの切なさが同居していて、それが味わい深い個性となっている。彫刻とは見るものの感情を可視化させるそんな存在なのかもしれない。
 
「崩れゆく」
W200×D300×H450mm
 
「ふくふく坊や」
W130×D120×H180mm
 
「おいてけぼりシリーズNo.1」
W140×D130×H140mm
 

作家近況
小泉ゆりか
作家近況はインスタグラムをチェック
https://www.instagram.com/5123_yurika/


本村ひろみ
もとむら・ひろみ
那覇市出身。清泉女子大学卒業。沖縄県立芸術大学造形芸術研究科修了。ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「We love yuming2」でパーソナリティーを務める


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1981号・2023年12月22日紙面から掲載

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ロマンチストなラジオDJ
那覇市出身。清泉女子大学卒業、沖縄県立芸術大学 造形芸術研究科修了。現在、ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「We love yuming2(毎週 日曜日 19時~20時)」でパーソナリティーを務める。

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