油彩とドローイングで透明感のある色調|アートを持ち帰ろう(32)|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

スペシャルコンテンツ

特集・企画

2023年11月24日更新

油彩とドローイングで透明感のある色調|アートを持ち帰ろう(32)

文/本村ひろみ

特集・企画

タグから記事を探す

油彩とドローイングで透明感のある色調

展示会でリアルな体験を

インターネットにSNSが登場して以来、友人と久しぶりに会っても久しぶりと感じない時代になった。知っている気分に慣れてしまっている。アーティストの展示会の投稿を見て、つい作品を見た気になったりもする。でも実際に展示された空間で鑑賞して作家に話を聞くと、何も見えていなかったことに気づく。知っていたはずなのに新鮮。知っているつもりになっていた。秋は展示会も多いのでできるだけリアルな体験をしたいと足を運ぶ。
 
「君の街が沈む、最小単位の」
910×652ミリ 6万円


「絵画で時間を留める」

数年前に見た金城妃美佳(きみか)の絵は私小説のような印象だった。インスタグラムの写真も、ふと目に留まった街の風景や食べかけのピザ、サンセット、運動靴のひも、友人との戯れなど何げない日常のあいまに彼女の作品は投稿されている。フラジャイルでフワッとした作品のイメージを勝手に抱いていたが個展で印象は違った。実際に見ると画面のタッチに勢いがあり筆致は繊細でかつ力強い。SNSからは伝わって来ない絵肌だ。

9月に開催された個展「スロー・ガラス」は油彩とドローイングを中心に透明感のある色調の作品が並んでいた。スロー・ガラスとはボブ・ショウのSF短編小説『去りにし日々の光』に登場する“光を遅らせて通すガラス”のこと。金城は「絵画が時間を留めること、遅延させることを思いながら制作した」と話す。作品「君の街が沈む、最小単位の」は手で作った空間の向こうに、時が止まったような街が見える。トーンの高い画面は光を放っているようにも感じられ“光速では時間が止まって見える”という説を思い出した。

絵画という窓を通していつまでも夢を見させてほしい。

「海市」
803×1167ミリ 14万4000円
 
「迷子たち」
1091×788ミリ 1万5000円

「舟は静けさを運んで」
333×455ミリ 個人蔵


作家近況
金城妃美佳
https://www.instagram.com/kimykak/
【展覧会予定】
2024年2月14日~2月18日
卒業・修了作品展(沖縄県立博物館・美術館)


本村ひろみ
もとむら・ひろみ
那覇市出身。清泉女子大学卒業。沖縄県立芸術大学造形芸術研究科修了。ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「We love yuming2」でパーソナリティーを務める


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1977号・2023年11月24日紙面から掲載

特集・企画

タグから記事を探す

この連載の記事

この記事のキュレーター

キュレーター
本村ひろみ

これまでに書いた記事:43

ロマンチストなラジオDJ
那覇市出身。清泉女子大学卒業、沖縄県立芸術大学 造形芸術研究科修了。現在、ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「We love yuming2(毎週 日曜日 19時~20時)」でパーソナリティーを務める。

TOPへ戻る