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2023年9月8日更新

洗濯機でラクラク運動靴洗い|知財 この人あの会社⑩

運動靴をブラシでゴシゴシと洗うのは、なかなか骨が折れる。よく汚れる子どもの運動靴は洗っても、自分の靴はあまり洗わない人も多いだろう。今回紹介するのは、元工業高校の先生が開発した洗濯機で靴が洗えるネット。形崩れせず、汚れもしっかり洗浄できる。

靴専用洗濯ネットは中央の仕切り帯が浮きの役割をし、洗濯槽内で浮くため遠心力できれいに洗浄できる。対応する靴のサイズは27センチまで。子ども用の靴は2足同時に洗濯できる。※縦型洗濯機専用
靴専用洗濯ネットは中央の仕切り帯が浮きの役割をし、洗濯槽内で浮くため遠心力できれいに洗浄できる。対応する靴のサイズは27センチまで。子ども用の靴は2足同時に洗濯できる。※縦型洗濯機専用

 
 靴専用洗濯ネット/真渕商会 真境名勝さん 

工業高校を定年後もモノづくり

真渕商会の真境名勝さん(72)は、もともと県立工業高校の教師だった。生徒たちとソーラーカーコンテストなどに挑戦してきたが、定年後も電動自転車や太陽光発電システムなどのモノづくりを続けている。

健康づくりのためにロードバイクを毎日20キロも走らせるスポーツマンでもある。ただ、そのたびに靴が汚れてしまうので、週に1度は靴の洗濯をしていた。毎回、ブラシで洗うのはなかなかの重労働。洗濯機で洗うことも試みたが、途中で洗濯機が止まったり、脱水の時にガタついたりでなかなか難しかった。
 
(左)プラスチックカゴで試作したが洗濯槽にぶつかるので断念。(右)改良を重ね、洗濯ネットで商品化した
(左)プラスチックカゴで試作したが洗濯槽にぶつかるので断念。(右)改良を重ね、洗濯ネットで商品化した
 
自宅の庭で「靴専用洗濯ネット」をアピールする真渕商会の真境名勝さん
自宅の庭で「靴専用洗濯ネット」をアピールする真渕商会の真境名勝さん


浮力で回転する洗濯ネット

「できない」が真境名さんの“モノづくり魂”をかき立てた。最初に試作したのは2019年3月頃、2個のプラスチックカゴをつなげて、靴を入れるアイデア。カゴの中にウレタンの浮力材を貼るとうまく洗濯機で回転したが、洗濯槽にぶつかって破損の危険があった。そこで洗濯ネットのメッシュ素材に変更。チャックで閉じられるようにし、ウレタンの浮力材はネットの間に付けることにした。

試作品の段階から、真境名さんは知財総合支援窓口で特許の取得について相談。窓口では、特許だけでなく特徴のあるデザインを意匠権で保護することなどもアドバイスをし、実用新案権と意匠権を取得した経緯がある。


クラウドファンディングで開発費

試行錯誤を重ね完成した靴専用洗濯ネットは、洗濯槽内で浮くため、遠心力できれいに回転し(※縦型洗濯機専用)運動靴を傷つけず、洗濯機もいたわりながら洗濯できる。真境名さんは耐久性を確認するため、延べ約200回洗濯を繰り返した。「週1回洗濯しても4年間は使い続けられる」と自信を見せる。ネットの製造工場(県外)も自ら探し出し、当初の資金はクラウドファンディングで約100万円を集め、22年6月に発売した。同製品は20年になるほど展(婦人家発明協会)審査員特別賞、22年に沖縄県発明くふう展の県発明協会会長賞を受賞した。

購入者からは大きなサイズがほしいとか、安全靴やナースシューズも洗いたいとか、ドラム式洗濯機にも対応してほしいなどの要望があり、さらに商品の改良を重ねたいと真境名さんは考えている。「まずはホームセンター、スポーツ用品店など取扱店を増やして販売を軌道に乗せ、商品の改良を続けたい」と語った。

本商品に関する問い合わせは、090・1519・6592。OUTDOOR SHOP NEOS(浦添市)のほか、真境名さんのホームページ(https://shoesnet.base.shop/)で通信販売している。







[執筆者]
宮川準(みやかわじゅん)
1967年、東京都出身。大学卒業後、都内で就職。2012年、沖縄に移住し沖縄県発明協会に入職、以来INPIT沖縄県知財総合支援窓口を担当。


 
 information 

第52回沖縄県発明くふう展作品募集

「このアイデアに関し、特許は取得できるか」「他社が類似商品を販売している」「契約を交わそうとしているが内容は適切か」といったことについて、専門的な見地からアドバイスをいたします。

これは便利、これは役立つ、などあなたの発明を発表してみませんか。参加して作品を世界に発信しましょう。

■応募対象:特許・実用新案・意匠
■応募資格:沖縄県内に在住または居所を有する者で、発明者、考案者及び創作者、または出願人
■応募受付期間:2023年9月29日(金)まで
■賞の種類:知事賞(最優秀賞、優秀賞)、発明協会会長賞、弁理士会会長賞
■展示期間:10月27日(金)~29日(日)
沖縄県立武道館・アリーナ棟(沖縄の産業まつり会場内)

【問い合わせ】
(一社)県発明協会
電話=098・859・2810 
jiii47@okinawa-jiii.jp

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1966号・2023年9月8日紙面から掲載

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