美少女陶芸シリーズ｜アートを持ち帰ろう（28）

少女のはかなさ陶磁器で永遠に

９月に那覇市で展示会に参加

アートコレクターズという美術系の月刊誌で、年に１度恒例になっている「完売作家」という特集がある。前年の展覧会（デパート、画廊、アートフェア）で８割以上の作品（絵画・立体・工芸）が売約となった作家を掲載するのだが、人気アートの傾向や注目の作家を知る以上にコレクターへのインタビューが興味深い。目利きとしての解説はもちろんだが、とにかく自分のコレクションを語る熱量が半端ない。いったい彼らを夢中にさせているのは何なのか。

展覧会へ行くと、確かな技術でオリジナリティーあふれる作品を制作する“勢いのある作家”に出会うことがある。初めて戸村の作品を目にした時、記憶の中の少女マンガがよみがえった。それも器という斬新な形で。なるほど、そうきたか！　その時私は、陶芸家・戸村勇気の美少女陶芸シリーズは間違いなくオタクファンを獲得すると確信した。

ポップカルチャー 陶芸に

「陶磁器は一度焼成（しょうせい）すると変質が少なく、とても長い時間この世界に存在することのできる表現。なので少女のはかなさや一瞬のきらめきを永遠にできる。また古代の陶磁器に描かれたさまざまな図柄から、当時の人々の文化をうかがい知れるように、私が現代の表現を移し込んだ陶器が、未来の考古学者を悩ませたり驚かせたりすることを想像して楽しんでいます」と戸村は楽しそうに話す。

彼は２０歳のころに自分らしい表現を模索する中で、慣れ親しんだマンガやポップカルチャーを陶芸の中で表現することを思いついたそうだ。それ以後、美少女陶芸シリーズとして１６年間制作を続けている。今後、戸村がこの美少女たちをどんなふうに変化させ時代と共にアップデートしていくのか目が離せない。
 

花器「華やぐ娘たち’１８
２８０ｍｍ × ２８０ｍｍ
１１万円

 

美少女マグ
１１０ｍｍ × ８０ｍｍ
１万３２００円


美少女ゴブレット
７０ｍｍ × １５０ｍｍ
２万２０００円


大皿「泡沫のきみ」
２４０ｍｍ × ８０ｍｍ
５万５０００円

作家近況
陶芸家・戸村勇気
（陶芸工房　アトリエクッチャネ制作チーフ）
◆８月２２日～２７日　グループ展「手の掌（てのて）」
　　　　　　　　　東京都表参道駅前　桃林堂ギャラリー
◆９月１日～４日　アートフェスティバル　デパートリウボウ６階
◆１０月１３日～２５日　グループ展（タイトル未定）
　　　　　　　　　東京都新宿眼科画廊ギャラリー
問い合わせ・作品情報はインスタグラム（ｔｏｍｂｏｙ＿ｃｅｒａｍｉｘ）まで
 

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もとむら・ひろみ
那覇市出身。清泉女子大学卒業。沖縄県立芸術大学造形芸術研究科修了。ラジオ沖縄「ＧＯ！　ＧＯ！　ダウンタウン国際通り発」「Ｗｅ　ｌｏｖｅ　ｙｕｍｉｎｇ２」でパーソナリティーを務める

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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1960号・2023年7月28日紙面から掲載