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2016年9月23日更新

鉄骨造編② 魅力とメリット|構造のはなし[6]

住宅の耐久性はもちろん、間取りやデザイン、コストやリフォームのしやすさにも関わる構造体について、専門家が分かりやすく解説。今回は、鉄骨造にはどのようなメリットがあるのかを紹介する。新里さんは、「鉄骨造では、①耐震性②基礎工事の容易さ③安定した品質④デザイン性の四つが大きなメリットと言えます」と話す。

地震倒壊に強く施工水準一定

鉄骨造は工事費用と特性の面で、木造と鉄筋コンクリート造の中間の位置付けと言えます。部材には鉄材や鋼材が用いられており、近年ではほとんどの鉄骨建造物に鋼材が用いられているため、鋼構造と呼ばれることも多くなってきました。鉄骨造のメリットは、①耐震性②基礎工事の容易さ③安定した品質④デザイン性の四つが挙げられます。

四つの利点を生かして建てる鉄骨造の住宅。内部空間の自由度が高く、快適で安らげる空間づくりができる(写真はすべてシンケンハウス提供)​
 

しなって揺れを逃がす​
まずは耐震性。近年、沖縄県でも震度4または震度5の地震が観測されています=下グラフ参照。現在の建築基準法では、どのような構造の建物でもしっかりと耐震基準に合致しなければいけません。ですから、どの構造体でも震度7までの地震には耐えられます。鉄骨構造は地震が起こった際、揺れに対して構造体もしなりながら揺れ、力を逃がします。木材やコンクリートはある力(降伏点)以上の負荷がかかると折れますが、鋼材は折れずに曲がります。素材が粘り、強く耐えて折れないため、建物が完全に倒壊する危険は低いでしょう。震災時に大きな被害の一因となったのが、建物の倒壊による圧死です。完全に倒壊しないという鉄骨造の粘り強さは、大きなメリットといえるでしょう。
鉄骨造の構造体。地震などで揺れる際、構造体がしなって力を逃がすことで完全な倒壊に至らず、被害を縮小する​

基礎への重量負荷低い
鉄骨造は、総重量が鉄筋コンクリート造の建造物よりもずいぶん軽くなることもメリットの一つです。地上の躯体の重量が軽ければ基礎部分の耐荷重も小さくなるため、コンパクトな基礎でも十分支えられます。軟弱地盤への建築で杭(パイル)工事が必要な場合でも、パイルを深く打ち込む必要がないので工事に掛かるコストを抑えられます。
軟弱地盤での杭打工事。鉄骨造だと、杭(パイル)を打ち込む深さや杭の口径が小さくて済むため、コストが抑えられる

品質安定、跳ね出しも
建物を現場で施工する場合、そこにいる職人の技術の差が出来に大きく影響を及ぼします。しかし鉄骨造では、工場で大量生産された材料を使うため、躯体は精度や品質が安定しています。そのため職人の技術による差が小さくなり、一定以上の水準の仕上がりを保つことができます。また、鉄骨造には、鉄製や鋼製の部材が用いられています。近年ではほとんどの建造物で、材料としての強度が優れている鋼材が用いられています。それが、建物倒壊のリスク軽減につながっています。重量鉄骨のもう一つのメリットは、跳ね出し(柱なく建物の一部を伸ばす)が簡単に出来ることです=下写真。ベランダや庇、部屋の一部など、最大1・8メートルくらいまで伸ばせます。跳ね出しは、建物の外観に凹凸を付ける上でデザイン的によく使われる手法。デザインも楽しめる建築ができると言えるでしょう。

次回は鉄骨造で気を付けたいことです。




執 筆 者
しんざと・しょうた/1979年、うるま市出身。2004年、鉄骨造を専門に手掛ける新里総業㈱(現、シンケンハウス㈱)に入社。アフターサービス部門、営業を経て11年に代表取締役に就任した。

 

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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1603号・2016年9月23日紙面から掲載

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