建物の真ん中に誰でも使える土間のキッチン！　交流や自給を楽しむ赤瓦屋根の共同住宅｜住んでみたい！こだわり賃貸②

新年度に向けて賃貸物件が活発に動く時期。今回は、県内にある“こだわり賃貸”を紹介する。ほかのアパートとはひと味違うデザイン、間取り、共有スペースを有する３物件をピックアップ。設計者やオーナーに「なぜ、そこにこだわったのか」意図や思いを聞いた。

こだわり賃貸②　コミュニティ・アパート山城のあまはじや（糸満市）

共有スペース真ん中に

１階中央の共有スペースは、キッチンやカウンターテーブル、トイレ付き。和室はお茶が趣味の加代子さんの希望で炉も設けた

地域に開いてコミュニティーづくり

糸満市にある「コミュニティ・アパート山城のあまはじや（以下あまはじや）」は、庭や菜園、多目的な工房など、入居者が使えるスペースが充実した共同住宅。特徴的なのが、木造２階建ての真ん中を貫く、吹き抜けの共有スペースだ。守谷光弘さん（５６）が加代子さんと暮らすオーナー世帯に加え、賃貸が１階に１世帯、２階に２世帯。すべてこの共有スペースを通って出入りする造りになっている。「『ただいまー』『お帰り！』と自然と声を掛け合える環境があれば、触れ合いや助け合いも生まれる」と守谷さん。土間仕立てなのも「地域の誰もが出入りしやすいように」とのこだわりだ。

賃貸スペースは３世帯ともキッチン、バス、トイレ、ランドリースペースがある１ＬＤＫ。天井が高くログハウスのような２階の２世帯は小屋裏収納、１階は和室とウオークインクローゼット（ＷＩＣ）が付いている。「ＷＩＣは水回りと直線でつながるから介護スペースにも。私たちを含め住人の誰かが車イスになっても、ここに移れば住み続けられる」と、長い目で計画した。

２階南側賃貸。窓は断熱効果の高い樹脂サッシと複層ガラス仕立てに

外観。赤瓦屋根や琉球石灰岩の石積み、植栽が道行く人の目を楽しませる。屋根には１７．５５kWの太陽光パネルを搭載し、年間の１次消費エネルギー量が実質ゼロ以下になるZEHとなっている

交流・自給を楽しむ

原点は「隣近所で子どもを預かったり家族ぐるみで集まっていた」という子どものころに経験したご近所づきあい。そうした関係性が薄れ、個食や孤独死が増える中、「自分にできることを」と考えたのが共同住宅につながった。

１５年前に来沖後、移り住んだ糸満のウミンチュ文化にほれ込み、市内に土地を購入。設計・施工は木造軸組みで「１００年住み継げる家」を提案する琉球住樂の伊良皆盛栄さんに頼んだ。

目指したのは持続可能なコミュニティーづくり。その先駆けとなった東京都足立区の「花園荘」や神奈川県相模原市の「里山長屋」を手本に、共有スペースを中心に据えるなど守谷さんの思いを反映。伊良皆さんは「加代子さんら実家の建具も再利用。オーナー世帯や共有スペースの引き戸としてサイズや取っ手を調整、空間になじませた」。太陽光発電に蓄電池、雨水タンクも備え、昨秋完成させた。

守谷さんは「プライバシーは守りつつも、菜園で育てた野菜を分け合ったり、工房で廃材からテーブルを作ったり。共有スペースを上手に使いながら地域の一員として楽しめる方と暮らせたら」と話した。