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2023年1月27日更新
自在に棚を取り付け! 賃貸でも住み手がカスタマイズできる、メゾネットとは|住んでみたい! こだわり賃貸①
新年度に向けて賃貸物件が活発に動く時期。今回は、県内にある“こだわり賃貸”を紹介する。ほかのアパートとはひと味違うデザイン、間取り、共有スペースを有する3物件をピックアップ。設計者やオーナーに「なぜ、そこにこだわったのか」意図や思いを聞いた。
こだわり賃貸① アートヴィラ(沖縄市)
柔軟な造りで仕事・遊び充実
アートヴィラは1階にLDKと水回り、2階に個室がある。設計した當山さんは一室を借りて事務所として利用
Pコン穴使い自在に棚 シアターにも
沖縄市泡瀬にある賃貸アパート「アートヴィラ」はメゾネット(2階建て)タイプの1LDK、約16坪。1階の半分は約5㍍の吹き抜けになっており、アパートではなかなか珍しい開放感がある。周辺のファミリー向け物件とはあえて違う路線にした。
「限られた面積の中で、オーナーの要望する6世帯以上の部屋を確保しつつ、開放的で遊び心のある住まいを追求したら、こういう形になった」と話すのは、設計者である建築空間アボットの當山茂さん。
同物件は1階3世帯、2階にも3世帯の全6世帯。住人の伊徳大志さんは「ほかのアパートと違う面白い造りが良くて、ここに決めた」と話す。2階を寝室&クローゼットとしており、「上が散らかっていても下にいれば見えないのがいい」と笑う。
階で公私を分けられるため、在宅勤務にもぴったりだ。當山さんは一室を事務所として借りており、1階を打ち合わせスペース、2階を作業部屋として使用。「ファミリー層を狙わない代わりに、住居としても仕事場としても使える空間にした」
築年数は約8年で、コロナ禍は予想していなかったが、「柔軟な造りのおかげで、時代の変化にも対応できていると思う」。
3枚引きの掃き出し窓が玄関。2階部の高窓と共に、たっぷり光を取り込む
當山さんは玄関前に白いシェードを設置。スクリーン代わりにしてホームシアターを楽しんでいる
住み手がカスタマイズ
柱や梁を出さないスッキリした構造に打ち放しの壁、白で統一した建具・造り付け家具など、デザイン面でも差別化を図った。「打ち放しにして仕上げを省いたことで、コストダウンにもつながっている」
同物件の打ち放し壁には、もう一つの利点がある。コンクリートを流し込む際にできる丸い穴(Pコン穴)を利用して、自在に棚などを設置できることだ。穴の中には突起が出ているため普通はコンクリートで埋めてしまうが、同物件ではあえて簡易的に閉じている。この突起に、専用の金具(ホームセンターなどで購入できる)を設置することで、棚や引っかけ収納などが作れる=右写真。
當山さんはこの穴を使ってスクリーンを設置。ホームシアターを楽しんでいる。「コロナ禍で映画館にも行けないときも、孫たちがアニメ映画を見に来たり、友達とライブ映像を楽しんだりと大活躍だった」
住み手がカスタマイズできる造りで、多様化するニーズに応える。
當山さんの事務所2階・個室。デスクワークスペースとしている。個室だが引き戸を全開にすれば「1階の様子が伺える」
2階の個室前にはデスクや収納など、多様に使える造り付けの家具が設置されている。當山さんはここにプロジェクターを設置し、1階でホームシアターを楽しむ
打ち放しの壁にある丸い「Pコン」穴はコンクリートで埋めず簡易的なフタをしている。フタを取り、穴の中の突起に金具を設置すれば棚や収納が作れる
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取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1934号・2023年1月27日紙面から掲載
この記事のキュレーター
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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。