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2022年6月10日更新

[沖縄]琉球の島は一体の龍|琉球風水からひもとく Lily's スペースジャーニー③

王朝時代の風水師は、琉球の島を一体の龍ととらえ、島全体の自然環境を神聖なる一つの生き物と見ました。人の体は全身に血液が巡り循環することで生命を維持しています。風水も、自然を一つの生命体として見ます。

空間プロデュース力を磨く風水の旅

琉球の島は一体の龍

「三府龍脉碑記」(1750年)を残した蔡温は、首里から名護への遷都と、丘を切り開いて水路を造る意見に、否定する立場を取りました。名護市に残る碑には、その考えが記されています。

上空からバードビューで見る当時の水路計画は、まるで沖縄本島という「体」から、本部半島という「腕」を切り離すようです。

『球陽』の風水鑑定報告書(1713年)でも、首里城の風水は建造物という「点」ではなく、琉球という「島全体」から見ています。北部と南部の地を見て回り調査した上で、城を築くのに最もふさわしい場所が首里であると書かれています。

1709年に首里城が火災で燃え落ちた時、蔡温は中国に風水留学中でした。1710年6月に帰国した蔡温は、北部へ騎馬旅行へ。同年10月に首里城の再建工事が起工します。蔡温が帰国後、首里城再建工事の起工前に、風水師としてやるべきことは何だったのか。「琉球の島全体の風水を自分の目と肌感覚で確かめることでは」と現代の風水師なら想像します。蔡温が見たであろう風景を見てみませんか。同じ場所で同じ風景を見て、同じ感情を味わった時、時を越えて何かがつながるのではないでしょうか。
 

沖縄

沖縄本島最北端にある琉球開びゃく七御嶽の一つ、安須森御嶽(あすむいうたき)から見た風景。
沖縄本島最北端にある琉球開びゃく七御嶽の一つ、安須森御嶽(あすむいうたき)から見た風景。山の勢いが遠方へ元気に走り去るような風景を見た時、「蔡温はここに来たのではないか」と感じた。記録はないので確認のしようはない。しかし、「沖縄の龍」そのものを見たように思った。自然を一つの有機体とみなし、その生命を最大限に生かすための手法が琉球風水。住宅を見る時も、家全体を一つの生命体ととらえ、生き生きと生命力あふれる環境を作ることを目指している。※安須森御嶽に登れるのは、神人と大石林山のツアーのみ


碑文に残る蔡温の思想


名護市にある三府龍脉碑(さんぷりゅうみゃくひ)とひんぷんガジュマル。戦争で破壊された石碑の一部は、名護博物館で保存されている。現在の石碑は戦後に再建されたもので、戦前は現在の位置よりも東にあったとのこと。琉球に流れる龍脈を守ることは、雄大な自然を守ることに同じ。後世にまで伝えようとする蔡温の思いが伝わってくる。(名護市写真提供)


全体から部分へ


風水鑑定には、大きくわけて二つの鑑定法がある。龍脈を見る「形勢(けいせい)」と、方位を見る「理気(りき)」。「形勢」の文字は、入れ子構造を表現している。ロシアのマトリョーシカ人形のように、同じ要素が幾重にも重なる多重構造が特徴。「形」とは近くに見える山の形であり、「勢」は遠くに見える雄大な山の峰々の起伏をあらわす。風水を見る順は、勢を見て形を見る。つまり、全体から部分、大から小へと形勢を観察する。住宅も、住宅の周辺環境→住宅の間取り→各部屋の家具レイアウトへと、大から小へ段階的に視点を移す。そして、全体と部分を行き来しながら設計していくのが形勢派風水。


年 表

1708年 蔡温 風水留学で福建へ出航
1709年 3回目の首里城焼失
1710年6月 蔡温帰国➡沖縄本島北部に
       騎馬旅行へ
1710年10月 首里城の再建工事起工
1712年 首里城正殿などの主要施設ほぼ完成
1713年 『球陽』首里城の風水鑑定報告書
1715年 竣工

※参考資料『蔡温』公益社団法人沖縄県緑化推進委員会編 琉球書房、『沖縄の風水』窪徳忠編 平河出版社




執筆者 とうどう・りり(Lily)/建築士と連携し、新築住宅の間取りからインテリアまでトータルで風水設計を行う。王朝時代の伝統風水術を現代住宅に適用するため、風水空間プロデュースの手法を体系化した。ロンジェ®琉球風水アカデミー学長。
執筆者
とうどう・りり(Lily)/建築士と連携し、新築住宅の間取りからインテリアまでトータルで風水設計を行う。王朝時代の伝統風水術を現代住宅に適用するため、風水空間プロデュースの手法を体系化した。ロンジェ®琉球風水アカデミー学長。


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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1901号・2022年6月10日紙面から掲載

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